62 / 121
第62話
しおりを挟む
「どんな理由?」
「……後ろから見ていたが、お前とジェローム、随分と会話が弾み、楽しそうだったじゃないか」
「? それが何か、問題でも?」
「ジェロームがあれほど柔らかい表情を浮かべ、楽しげに話すのをひさしぶりに見た。俺が正当な王位継承者になってから、あいつは一度としてあんな顔を俺に向けたことはない。それどころか、常に臣下としての硬い態度を崩さず、心の内を晒すことすらない。それが、不愉快でたまらんのだ」
エリウッドはムスッと腕を組みながらも、どこか寂しそうな視線を、ジェロームの去った先に向けていた。私も同じように腕を組み、少し思案してから言葉を発する。
「……えっと、つまり、自分に対して堅苦しい態度ばかりとるジェロームが、私と楽しそうにしてたから、ヤキモチをやいてるんですか?」
「たわけ。ヤキモチなどやいておらぬわ。ただ、ちょっと面白くない。それだけのことだ」
「ちょっと面白くないって……ついさっき、不愉快でたまらんって言ってたじゃないですか」
「ええい、うるさい。不愉快といえば、お前の態度も不愉快だ。マリヤ、お前、俺には敬語を使って『様』づけで話すのに、ジェロームのことは早々に呼び捨てにして、随分と気安い話し方をするじゃないか。この違いはなんだ?」
「なんだと言われましても……ジェロームの方が話しやすいから……ですかね。ほら、エリウッド様、根はいい人だと思うんですけど、ちょっと偉そうで、高圧的なところ、ありますし」
「ハッキリ言ってくれる。嫌な女だ」
「あれ? 『上辺だけ敬意に溢れた、持って回ったような言い方をされる』方が嫌なんじゃありませんでしたっけ?」
「ふん、ああ言えばこう言う。まったく、気に入らんな」
エリウッドは不愉快そうに鼻を鳴らしてそう言ったが、『気に入らん』と言う割に、怒気はちっとも伝わってこない。どうやら、本当に持って回った言い方をされるより、ハッキリ言う相手の方が好きらしい。その証拠に、先程まではへの字に曲がっていたエリウッドの端正な唇が、いつの間にか微笑を浮かべていた。
私は、悪戯っぽく問いかける。
「どうです、王子様。ご機嫌、直りました?」
「多少はな。その『王子様』というのをやめてくれたら、もう少し上機嫌になれそうだが」
「前向きに検討します。……ところで、私の破壊の力について、詳しいこと、わかりました?」
「……後ろから見ていたが、お前とジェローム、随分と会話が弾み、楽しそうだったじゃないか」
「? それが何か、問題でも?」
「ジェロームがあれほど柔らかい表情を浮かべ、楽しげに話すのをひさしぶりに見た。俺が正当な王位継承者になってから、あいつは一度としてあんな顔を俺に向けたことはない。それどころか、常に臣下としての硬い態度を崩さず、心の内を晒すことすらない。それが、不愉快でたまらんのだ」
エリウッドはムスッと腕を組みながらも、どこか寂しそうな視線を、ジェロームの去った先に向けていた。私も同じように腕を組み、少し思案してから言葉を発する。
「……えっと、つまり、自分に対して堅苦しい態度ばかりとるジェロームが、私と楽しそうにしてたから、ヤキモチをやいてるんですか?」
「たわけ。ヤキモチなどやいておらぬわ。ただ、ちょっと面白くない。それだけのことだ」
「ちょっと面白くないって……ついさっき、不愉快でたまらんって言ってたじゃないですか」
「ええい、うるさい。不愉快といえば、お前の態度も不愉快だ。マリヤ、お前、俺には敬語を使って『様』づけで話すのに、ジェロームのことは早々に呼び捨てにして、随分と気安い話し方をするじゃないか。この違いはなんだ?」
「なんだと言われましても……ジェロームの方が話しやすいから……ですかね。ほら、エリウッド様、根はいい人だと思うんですけど、ちょっと偉そうで、高圧的なところ、ありますし」
「ハッキリ言ってくれる。嫌な女だ」
「あれ? 『上辺だけ敬意に溢れた、持って回ったような言い方をされる』方が嫌なんじゃありませんでしたっけ?」
「ふん、ああ言えばこう言う。まったく、気に入らんな」
エリウッドは不愉快そうに鼻を鳴らしてそう言ったが、『気に入らん』と言う割に、怒気はちっとも伝わってこない。どうやら、本当に持って回った言い方をされるより、ハッキリ言う相手の方が好きらしい。その証拠に、先程まではへの字に曲がっていたエリウッドの端正な唇が、いつの間にか微笑を浮かべていた。
私は、悪戯っぽく問いかける。
「どうです、王子様。ご機嫌、直りました?」
「多少はな。その『王子様』というのをやめてくれたら、もう少し上機嫌になれそうだが」
「前向きに検討します。……ところで、私の破壊の力について、詳しいこと、わかりました?」
21
あなたにおすすめの小説
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!
隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。
※三章からバトル多めです。
婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています
如月ぐるぐる
ファンタジー
公爵令嬢フランチェスカは、誕生日に婚約破棄された。
「王太子様、理由をお聞かせくださいませ」
理由はフランチェスカの先見(さきみ)の力だった。
どうやら王太子は先見の力を『魔の物』と契約したからだと思っている。
何とか信用を取り戻そうとするも、なんと王太子はフランチェスカの処刑を決定する。
両親にその報を受け、その日のうちに国を脱出する事になってしまった。
しかし当てもなく国を出たため、何をするかも決まっていない。
「丁度いいですわね、冒険者になる事としましょう」
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる