黒聖女の成り上がり~髪が黒いだけで国から追放されたので、隣の国で聖女やります~【完結】

小平ニコ

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第62話

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「どんな理由?」

「……後ろから見ていたが、お前とジェローム、随分と会話が弾み、楽しそうだったじゃないか」

「? それが何か、問題でも?」

「ジェロームがあれほど柔らかい表情を浮かべ、楽しげに話すのをひさしぶりに見た。俺が正当な王位継承者になってから、あいつは一度としてあんな顔を俺に向けたことはない。それどころか、常に臣下としての硬い態度を崩さず、心の内を晒すことすらない。それが、不愉快でたまらんのだ」

 エリウッドはムスッと腕を組みながらも、どこか寂しそうな視線を、ジェロームの去った先に向けていた。私も同じように腕を組み、少し思案してから言葉を発する。

「……えっと、つまり、自分に対して堅苦しい態度ばかりとるジェロームが、私と楽しそうにしてたから、ヤキモチをやいてるんですか?」

「たわけ。ヤキモチなどやいておらぬわ。ただ、ちょっと面白くない。それだけのことだ」

「ちょっと面白くないって……ついさっき、不愉快でたまらんって言ってたじゃないですか」

「ええい、うるさい。不愉快といえば、お前の態度も不愉快だ。マリヤ、お前、俺には敬語を使って『様』づけで話すのに、ジェロームのことは早々に呼び捨てにして、随分と気安い話し方をするじゃないか。この違いはなんだ?」

「なんだと言われましても……ジェロームの方が話しやすいから……ですかね。ほら、エリウッド様、根はいい人だと思うんですけど、ちょっと偉そうで、高圧的なところ、ありますし」

「ハッキリ言ってくれる。嫌な女だ」

「あれ? 『上辺だけ敬意に溢れた、持って回ったような言い方をされる』方が嫌なんじゃありませんでしたっけ?」

「ふん、ああ言えばこう言う。まったく、気に入らんな」

 エリウッドは不愉快そうに鼻を鳴らしてそう言ったが、『気に入らん』と言う割に、怒気はちっとも伝わってこない。どうやら、本当に持って回った言い方をされるより、ハッキリ言う相手の方が好きらしい。その証拠に、先程まではへの字に曲がっていたエリウッドの端正な唇が、いつの間にか微笑を浮かべていた。

 私は、悪戯っぽく問いかける。

「どうです、王子様。ご機嫌、直りました?」

「多少はな。その『王子様』というのをやめてくれたら、もう少し上機嫌になれそうだが」

「前向きに検討します。……ところで、私の破壊の力について、詳しいこと、わかりました?」
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