黒聖女の成り上がり~髪が黒いだけで国から追放されたので、隣の国で聖女やります~【完結】

小平ニコ

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第65話

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 私はジト目で言う。

「みっともない衣装で悪かったですね。新しい服を買おうにも、エリウッド様がくれた金貨じゃ、普通のお店で買い物できないし、メリンダの服を貸してもらおうにもサイズが小さいし、オルソン聖王国から貰ったこの服を着続けるしかなかったんですよ」

「普通の店で買い物できないだと? 何故だ? あの金貨ひとつあれば、小さな店舗なら店ごと買い上げることも可能なはずだが……」

「だから! 店ごと買い上げるような大掛かりなこと、したくないんですよ! 成金じゃないんですから、普通に買い物したいんです!」

「そうなのか。お前の言う『普通』というのが良く分からんが、思い通りにできるようにしよう。これからも、何か入用なものがあったら遠慮なく言え。なんでも用意する」

「伝承の聖女を、最高の状態にしておきたいからですか?」

「いや、これは純粋に、お前のためだ。お前には、不自由な生活をさせたくない。それだけだよ」

 エリウッドはそう言って、美麗な微笑を浮かべた。
 うっ……いきなりそんな優しい態度、ずるい……

 私は照れ隠しをするように、侍女二人がいそいそと動き続ける姿を見ながらエリウッドに問いかける。

「あ、あの、ところで、採寸とかしてないですけど、大丈夫でしょうか?」

「心配無用だ。グラディス姉上から、お前の体型は聞いている」

「いやいやいや、なんでグラディスさんが、私の体型を知ってるんです?」

「姉上は、人の体型を見極める達人だ。一目見ただけで身長体重を当て、二目見れば、服の上からでも寸分の違いなく正確なサイズを計測することができる。それはもはや、特技というレベルを超えて、お前の破壊の力同様に超能力とでも言うべき代物だ。間違いなくサイズは合うから、案ずる必要はない」

「へぇ……それは凄いですね……」

 純粋に感心しつつも、私の体型がエリウッドに筒抜けなことに気が付き、顔が赤くなった。そんな私を見て、エリウッドは笑う。

「何を考えているか知らんが、『お前の体型は聞いている』と言ったのは言葉のあやだ。正確には、グラディス姉上は俺にはお前の体型を教えず、わざわざ採寸表を紙に書き、それを服職人に送付したのだ」

「と、いうことは……」

「ああ。俺は、お前の体型については何も知らんということだ。何故こんな面倒なことをするのか姉上に尋ねたら、『いくら服を作るためとはいえ、自分の体型の正確な寸法を、男に言いふらされて喜ぶ女がいると思うか』と怒られてしまったぞ。そういうものなのか?」
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