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第76話
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「奪い取るだなんて、人聞きの悪いこと言わないでくださいよ。さっきも言ったでしょう。その女は、もともと我々が召喚したのです。最近急激に数を増やしている魔物どもから国を守るためにね。まあ、見た目が気に入らないので、一度は捨てましたが。でも、いらないと思った道具が、やっぱり必要になることってあるでしょう?」
「マリヤを侮辱するな。彼女は道具じゃない」
「そうでしょうか? エリウッド君。あなたも結局のところ、魔人を駆逐するための便利な道具として、その女を上手に使っているだけなんじゃないですか? 『伝承の聖女』などと、大層な称号を与えて祭り上げ、気分を良くさせてね」
オルソン聖王国の王子の嫌味な言葉で、ただでさえ赤かったエリウッドの顔が、さらにもう一段階赤くなる。もはやトマトと言うより、爆発寸前の爆弾だ。
エリウッドは唇をわなわなと震わせ、何か言い返そうとしているが、あまりにも頭に血が上りすぎてまともに言葉が出てこないのか、「うぐぐ……」と唸り声をあげるだけになってしまっている。
その表情が、オルソン聖王国の王子の嗜虐心を刺激したのか、彼は勝ち誇った様子で立ち上がり、テーブルの上のエリウッドを嘲笑ってペラペラと言葉を並べ立てていく。
「くく、くくく、そんなに顔を赤くして怒らないでくださいよ、みっともない。今私が述べたことは、ただの戯言ですよ、ざ・れ・ご・と。それとも、内心痛いところを突かれたので、困ってしまったのですか?」
「なに!? いったい、何のことを言っている!?」
「あなたもやはり、聖女マリヤのことを、便利な道具としてしか見ていないってことですよ。その便利な道具が取り上げられそうになったから怒っている、つまり、そういうことなんでしょう?」
「貴様……」
「心配しなくても、聖女を保護した功績は認め、功労金は払ってあげますし、パーミルでまた聖女が必要になったら、貸してもあげます。これでいいでしょ?」
完全に私をレンタル自由な道具としか思っていない発言に、私はキレた。
だが、私がキレるより早く、理性を失った人がいた。
エリウッドだ。
エリウッドはもう、オルソン聖王国の王子といかなる言葉を交わす気もなくなったらしい。右足を後方に上げ、そして、ちょうどいい位置にあるオルソン聖王国の王子の顔に、トゥキックをぶち込んだ。
「ぇげっ」
小さな叫びと共に、オルソン聖王国の王子は後ろに倒れ込んでしまう。
「マリヤを侮辱するな。彼女は道具じゃない」
「そうでしょうか? エリウッド君。あなたも結局のところ、魔人を駆逐するための便利な道具として、その女を上手に使っているだけなんじゃないですか? 『伝承の聖女』などと、大層な称号を与えて祭り上げ、気分を良くさせてね」
オルソン聖王国の王子の嫌味な言葉で、ただでさえ赤かったエリウッドの顔が、さらにもう一段階赤くなる。もはやトマトと言うより、爆発寸前の爆弾だ。
エリウッドは唇をわなわなと震わせ、何か言い返そうとしているが、あまりにも頭に血が上りすぎてまともに言葉が出てこないのか、「うぐぐ……」と唸り声をあげるだけになってしまっている。
その表情が、オルソン聖王国の王子の嗜虐心を刺激したのか、彼は勝ち誇った様子で立ち上がり、テーブルの上のエリウッドを嘲笑ってペラペラと言葉を並べ立てていく。
「くく、くくく、そんなに顔を赤くして怒らないでくださいよ、みっともない。今私が述べたことは、ただの戯言ですよ、ざ・れ・ご・と。それとも、内心痛いところを突かれたので、困ってしまったのですか?」
「なに!? いったい、何のことを言っている!?」
「あなたもやはり、聖女マリヤのことを、便利な道具としてしか見ていないってことですよ。その便利な道具が取り上げられそうになったから怒っている、つまり、そういうことなんでしょう?」
「貴様……」
「心配しなくても、聖女を保護した功績は認め、功労金は払ってあげますし、パーミルでまた聖女が必要になったら、貸してもあげます。これでいいでしょ?」
完全に私をレンタル自由な道具としか思っていない発言に、私はキレた。
だが、私がキレるより早く、理性を失った人がいた。
エリウッドだ。
エリウッドはもう、オルソン聖王国の王子といかなる言葉を交わす気もなくなったらしい。右足を後方に上げ、そして、ちょうどいい位置にあるオルソン聖王国の王子の顔に、トゥキックをぶち込んだ。
「ぇげっ」
小さな叫びと共に、オルソン聖王国の王子は後ろに倒れ込んでしまう。
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