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第79話
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「そんな……」
「そこでだ。私に良い作戦がある。マリヤ、お前の破壊の力、かなり精密な狙いをつけることが可能だったな?」
私は、頷いた。これまでの魔人・魔物討伐の経験で、部分的な破壊や、針の穴を通すようなコントロール技術を、私は身に着けていた。
グラディスも、満足げに頷く。
「よし、じゃあ、こういうことはできるか?」
私の耳に唇を近づけ、作戦の概要を伝えてくる。
少し考えて私は、「たぶんできると思います」と答えた。
「よーしよしよし。それじゃ早速やってくれ。後のことは私に任せろ」
「は、はい……あの……」
「なんだ?」
「もしも失敗したら……」
「やる前から失敗することを考えていては、成功するものもしなくなるぞ。なあに、心配するな。もし駄目だったら、お前ひとりくらいは私が担いで逃げてやる。二人の大臣は、ジェロームたちに守ってもらおう」
「エリウッド様は?」
「ここに置いて行くとしよう。確かにオルソン聖王国の王子の態度は最悪だったが、我が弟の言動も、相当に浅はかだった。ちょっとは反省してもらわんとな」
そう言って、悪戯っぽい笑みを浮かべるグラディス。
どう見ても、本気ではない。
実際は、命を懸けてエリウッドも守るつもりなのだろう。
この状況でよく冗談が言えるものだわ。
凄い胆力。こういう人を、女傑っていうのね。
彼女の軽口と頼もしい姿に、私の緊張もほぐれた。
よし。
いっちょやってみますか。
私は、今にも向かってきそうなオルソンの衛兵隊に狙いをつけ、破壊の力を発動させる。……いや、正確には、オルソンの衛兵隊そのものではなく、彼らの身に着けている甲冑と武具にのみ狙いを定め、破壊の黒い光を発射したのだ。
私の全身から、20本の黒い光の束が、うねるように射出され、それらは衛兵隊の甲冑と武器『だけ』を消滅させた。後に残ったのは、下着のみを身に着けた屈強な男たち。
よーしよし。
うまくいったわ。
敵『そのもの』を消し去ってしまうのは、せいぜい10体が限界だが、敵が身に着けている『装備だけ』に破壊の力を使うのであれば、かなり出力をセーブできるので、たぶん倍はいけると思ってたけど、やっぱり予想通りだった。
裸になった衛兵たちは、自分たちの身に何が起こったのかまだよく分かっていない様子だが、そこは経験豊富なつわものたち。装備が消えてしまったのが、手品でも幻覚でもないことをすぐに悟り、黒い光を嵐のように射出した私のことを、明らかに恐怖した目で眺め、立ちすくんでいる。
「そこでだ。私に良い作戦がある。マリヤ、お前の破壊の力、かなり精密な狙いをつけることが可能だったな?」
私は、頷いた。これまでの魔人・魔物討伐の経験で、部分的な破壊や、針の穴を通すようなコントロール技術を、私は身に着けていた。
グラディスも、満足げに頷く。
「よし、じゃあ、こういうことはできるか?」
私の耳に唇を近づけ、作戦の概要を伝えてくる。
少し考えて私は、「たぶんできると思います」と答えた。
「よーしよしよし。それじゃ早速やってくれ。後のことは私に任せろ」
「は、はい……あの……」
「なんだ?」
「もしも失敗したら……」
「やる前から失敗することを考えていては、成功するものもしなくなるぞ。なあに、心配するな。もし駄目だったら、お前ひとりくらいは私が担いで逃げてやる。二人の大臣は、ジェロームたちに守ってもらおう」
「エリウッド様は?」
「ここに置いて行くとしよう。確かにオルソン聖王国の王子の態度は最悪だったが、我が弟の言動も、相当に浅はかだった。ちょっとは反省してもらわんとな」
そう言って、悪戯っぽい笑みを浮かべるグラディス。
どう見ても、本気ではない。
実際は、命を懸けてエリウッドも守るつもりなのだろう。
この状況でよく冗談が言えるものだわ。
凄い胆力。こういう人を、女傑っていうのね。
彼女の軽口と頼もしい姿に、私の緊張もほぐれた。
よし。
いっちょやってみますか。
私は、今にも向かってきそうなオルソンの衛兵隊に狙いをつけ、破壊の力を発動させる。……いや、正確には、オルソンの衛兵隊そのものではなく、彼らの身に着けている甲冑と武具にのみ狙いを定め、破壊の黒い光を発射したのだ。
私の全身から、20本の黒い光の束が、うねるように射出され、それらは衛兵隊の甲冑と武器『だけ』を消滅させた。後に残ったのは、下着のみを身に着けた屈強な男たち。
よーしよし。
うまくいったわ。
敵『そのもの』を消し去ってしまうのは、せいぜい10体が限界だが、敵が身に着けている『装備だけ』に破壊の力を使うのであれば、かなり出力をセーブできるので、たぶん倍はいけると思ってたけど、やっぱり予想通りだった。
裸になった衛兵たちは、自分たちの身に何が起こったのかまだよく分かっていない様子だが、そこは経験豊富なつわものたち。装備が消えてしまったのが、手品でも幻覚でもないことをすぐに悟り、黒い光を嵐のように射出した私のことを、明らかに恐怖した目で眺め、立ちすくんでいる。
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