ゾンビのいない世界で俺に与えられたスキルは『ゾンビ殺し』だった。役立たずとして追放される俺。でもあと少しで世界はゾンビだらけになるんだけどね

小平ニコ

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第12話

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「この世界では、意思が言葉として発せられると、相手に伝わる際、元の意思に戻るの。だから、使用する言語が違っても、意思疎通が可能なのよ。文字の読み書きはそうもいかないけどね」

「ふうん、よくわかんないけどわかったよ。ああ、それにしても参ったな。飯を食おうと思ったら、今来た道を引き返してから、改めて町を目指さなきゃいけないのか。ただでさえ足が棒なのに、地獄の行軍だな」

「そんなにお腹すいてるのなら、あれ食べれば? 仕留めてからちょっと時間たっちゃったけど、まだほんのり温かいと思うわよ」

 そう言ってルイーズが指さした『あれ』とは、黒焦げになったブラックボアの死骸だった。……疲労と空腹のせいで、かなり精神的に参ってるのに、この笑えない冗談は正直きつい。

 温厚な俺もさすがにムッとして、ちょっと乱暴に言い返す。

「いや、あんなの食べられるわけねーだろ……常識的に考えて……」

「そんなことないって。焦げてるのは外側だけで、内側はむしろいい感じに蒸し焼きになって美味しいわよ、見てなさい」

 ルイーズは両手の指を、クラシックコンサートの指揮者ように動かした。すると、いきなり突風が発生し、それはうねりを上げるかまいたちとなってブラックボアの死骸を切り裂いた。

 これも魔法ってやつか。

 ……さっきは、助けてもらった安堵感で感激するだけだったけど、冷静に考えると恐ろしいな。この威力なら、人間の体くらい、苦もなく八つ裂きにできるだろう。

 ルイーズの外見は、俺と大して変わらない年齢に見える。それなのに、たった一人で危険な旅を続けられるくらいだから、相当強いんだろうな。

 そんなことを思っているうちに、ルイーズはブラックボアの切り身から、綺麗に焼けている肉片を切り出した。なるほど。彼女の言う通り、真っ黒に焦げているのは体の外側だけで、内側の肉は普通に食べられそうである。

 ……と言っても、普通なら、こんな得体の知れない大蛇の肉なんて食べたくないが、空腹はすでに限界だし、わざわざ切り出してもらった手前、『やっぱりいらないです』とは言いづらい。

 俺は覚悟を決めて、ブラックボアの肉をいただくことにした。一切味付けのされていない蛇肉にかじりつくと、自分が原始人か何かに戻ったような気分になるが、意外にも美味であり、俺は夢中になって肉を貪った。

 ルイーズの切り出した肉片は、パッと見た感じ1kgはあったので、すべて食べ終わる頃には、すっかりお腹いっぱいになる。満足げな吐息を漏らす俺に、ルイーズは微笑して問いかけた。

「どう? 言った通り、美味しかったでしょ?」
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