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第26話

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「ほら、盗賊なんかに感情移入してないで、どんどん進むわよ。この地下一階は小部屋があちこちにあるけど、通路自体は一本道だからすぐ地下二階に降りられるわ」

 ルイーズの言葉通り、少しも迷わずに俺たちは地下二階に降りる。

 ……ふと思ったが、ダンジョンの外はモンスターでいっぱいなのに、中には一匹もモンスターがいないな。そもそもここ、『アンデッドだらけの洞窟』って話じゃなかったっけ? まあ、モンスターがいないに越したことはないけどさ。

 地下二階は、地下一階よりもはるかに複雑な迷路だった。しかし、ルイーズは前回一人で探索した際の道筋を完璧に記憶しているようで、一度も歩みを止めずに進み続ける。うーん、本当に頼りになる女だ。俺、今のところ、本当にただルイーズの後ろにくっついてるだけだな。

 その時、若干油断しつつある俺の意識を引き締めるものが目に入った。

 ……死体だ。

 ダンジョンの入り口付近で見た、完全な白骨死体とは違う。
 頭部だけが無くなった、生々しい、グロテスクな死体だ。

 腐臭が鼻を突き、胃の底からすっぱいものがこみ上げてきたが、俺は目をそらさなかった。もしもこの死体が、アンデッドの一種だった場合、いきなり襲い掛かってくるかもしれないからだ。その時は、今まで守られていた分、俺がルイーズの前に立って『ゾンビが切れる剣』で戦うつもりだった。

 しかし、死体が動く気配は全くない。
 どうやら、ただの死体(こういう言い方はなんか変だけど……)のようだ。

 ルイーズは横目で死体を観察し、足を止めることなく言う。

「どうやら、先客みたいね。亡くなってから4日から5日ってところかしら。外の強力モンスターの大軍を退けてここまで来たんだから、かなりの凄腕ね。きっと、このダンジョンに隠されている盗賊の宝を捜しに来た冒険者よ」

「その凄腕が、どうして首無し死体になっちゃったんだ?」

「この地下二階にはね、ヘッドスラッシャーがいっぱいいるのよ」

「ヘッドスラッシャー?」

「ええ。洞窟の天井や、高い木の枝にへばりついて、ひたすら獲物が来るのを待ち、自分のすぐ下を獲物が通ろうものなら、一瞬で首を切り落とすタチの悪いモンスターよ」

「何それ……こわ……」

「あっ、噂をすればなんとやら。あそこにいたわ」

「えっ、どこどこ?」

「右端の天井よ。ほら、見て。あそこだけ、ちょっと色が変でしょ?」

 そう言ってルイーズが指さした天井を、よく見る。……正直言って、俺には何が変なのかよくわからない。周りに比べて、少々くすんでいる気もするが、特に維持管理もされていないダンジョンの天井が、皆均一の美しい塗装状態になっている方がよっぽど変だ。
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