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第27話

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 首をかしげている俺を見て、ルイーズは小さくため息を漏らした。

「そっか。人間の目じゃ、よく分からないか。だから、首無しの凄腕さんもやられちゃったのね。ヘッドスラッシャーは、擬態が得意なの。ダンジョンではダンジョンの色に、森では森の色に、自由に体色を変えられるのよ。……もっとも、エルフの目はごまかせないけどね」

 そしてルイーズは、天井を指し示していた人差し指から、閃熱の光線を放った。

「ギヒャッ!!」

 甲高く、それでいて濁った、嫌な悲鳴。
 天井がはがれ、どさりと地面に落ちる。

 いや、はがれたのは天井ではなかった。
 天井と同じ色をした、蜘蛛と人間を融合させたような生物。

 これが、ヘッドスラッシャーなのだろう。

 ヘッドスラッシャーは、しばらく手足をモゾモゾと動かしていたが、やがて動かなくなる。その、動かなくなったヘッドスラッシャーの頭部に、ルイーズはもう一度閃熱の光線を撃ち込んだ。今度はもう、悲鳴を上げることはなかった。

「完全に死んだわ。さあ、先を急ぎましょう」

 うーむ……
 頼もしい……

 ルイーズが強いことは、ここに来るまでの旅路で充分知っていたが、単純な強さだけじゃなくて、油断しない洞察力というか、判断力というか、そういう部分の凄さを、今まさに見せつけられている感じだ。

 俺はルイーズの後に続きながら、純粋なる賛辞の言葉を贈る。

「お前、本当に凄いんだな。さすが、たった一人で危険な旅を続けてきただけあるよな。スーパーエルフだ」

「そのスーパーエルフっていうの、馬鹿っぽいからやめてちょうだい。……まあ、これでも私、エルフの里じゃエリートだったからね。この程度のこと、できて当たり前よ」

「ふうん」

 短くそう言うと、会話が切れた。
 それから俺たちは、無言で歩き続ける。
 しばらく進むと、ルイーズがチラッとこっちを見て、言った。

「あんた、あんまり私のこと、聞いてこないのね」

「えっ?」

「私たちも出会ってからそこそこ経ったわけだし、普通、色々気になってくるもんじゃない? 『エルフの里ってどういうところなんだ』とか、『大事な秘宝が盗まれたのに、どうしてたった一人しか捜索者を出さないのか』とか、『里ではどんな生活をしていたのか』とかさ。……あんた、私に興味ないわけ?」

「いや、そういうわけじゃないけど……」

「じゃあ、どういうわけ?」

「お前、初めて会ったとき、めっちゃくちゃに自分のことを語りまくってたけど、今言ったことについては、全然触れなかっただろ? だから、あんまり話したくないのかなーって思って……」
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