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第44話

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「凄い映像って、どんな?」

「文字通り、この世の終わりよ。私は、これから起こる、未来の映像を見てしまったの。……『世界の終わりまで、あと124日』って、インチキの予言じゃないわ。あと4ヶ月で、本当にこの世界は終わる」

「…………」

「参ったわね。奪われた故郷の秘宝を求める旅の果てに、世界の果てを知ってしまうなんて。なかなかシャレのきいた結末だわ」

 ルイーズは、乾いた笑みを浮かべた。
 俺は、一緒に笑っていいものなのか迷い、ゴクリと固唾を飲んだのだった。





 ダンジョンの探索を終えた俺たちは地上に戻った。思った以上に長い時間が経っていたらしく、すでに日は沈み、柔らかな月明かりがダンジョンの入り口を照らしていた。今日はもうウロウロせず、ここでキャンプした方がいいだろう。

 ダンジョンの中に戻れば、盗賊たちが使っていた居住設備が利用可能だが、死体だらけの空間でリラックスできるはずもない。俺たちはダンジョンの入り口近くにテントと結界を張り、簡単な夕食を取った。

 ……あの隠し部屋を出てから、ルイーズはほとんど喋らない。
 だから俺も、なんとなく話しかけづらい。

 しかし、ルイーズの見た『未来の映像』というのが何なのかも気になるし、まずは遠回しに、どうでもいい話題を振ってみることにした。

「なあ。あの大量のお宝、ちょっとくらいは持ってきても良かったんじゃないか?」

 ルイーズは心ここにあらずといった感じで、気だるげに言う。

「呆れた。あんた、あんなのが欲しいの? お宝の山って言っても、浅ましい盗賊たちが世界中から盗んだり奪ったりしてきた、穢れた盗品の山なのよ?」

「いやあ、でも、命がけでダンジョンに潜ったんだし、多少はご褒美があってもバチは当たらないと思うっていうか……」

「……そうね。命を懸けてアンデッドを退けたあんたには、宝に手を付ける資格があるかもね。わかったわ。あんたが欲しいって言うなら、明日またダンジョンに潜りましょうか。それで、持ち出したいだけ持ち出せばいいわ」

 そこでやっと、ルイーズは俺に向き直った。

 良かった。
 ずっとぼんやりしてたけど、これでちゃんとした会話ができそうだ。

「いや、実を言うとさ、宝のことはどうでもいいんだ。別に今、お金が必要なことなんてないし、ルイーズの言う通り、盗品に手を付けるのって、なんか嫌だしね」

「じゃあ、なんで宝のことなんて話題に出したの?」
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