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第43話

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「まあ確かに、綺麗なことは、綺麗よね」

 そして俺たちは、しばし無言で天井を見上げ続けた。
 すると、ルイーズが突然、ハッとしたような声をあげる。

「あんたさっき、『光が文字を作ろうとしてるみたい』って言ったわよね」

「えっ?」

「『作ろうとしてるみたい』じゃないわ。これ、文字よ。動き続ける光が、一文字ずつ、ゆっくりと文字を作ってる。あんたに教えた現代の公用語じゃなくて、もの凄く古い時代の文字だけど……」

「マジか。本当に、ダンジョンを作った古代の人が、何かを伝えようとしてるのかな。文字は、ちゃんと意味のある文章になるのか?」

「少し待ってなさい。古い文字だから、私でも解読するのがちょっと大変なの」

 そしてルイーズは目を細め、光の文字を凝視した。
 その、移り変わる光を見つめながら、一語ずつ、解読した文字を読み上げていく。

「世……界……の……」

 彼女が読み上げた文字を、俺はつなげて復唱する。

「世界の?」

「終……わ……り……ま……で……」

「終わりまで?」

「あ……と……」

「あと?」

「1……2……4……日……」

 最後の言葉は復唱せず、すべての文字をまとめて、俺は一つの文章にした。

「世界の終わりまで、あと124日」

 口にしてから、その文章の持つ重みが伝わってきた。つまりこれは、古代人から現代人への、世界の終わりを告げるメッセージだったらしい。

 古代人の言葉を信じるのなら、この世界はあと4ヶ月で滅んでしまうそうだが、まあ、こんな予言、どこにでもあるしな。そう軽口を叩こうと思ったが、ルイーズは光から目を離さず、さらなる情報を読み取っているようだった。

 俺の目から見る限りでは、光はもう文字らしき形を作っておらず、ただぼんやりと明滅しているだけなのだが、ルイーズには何か別のものが見えているのだろうか?

 なんとなく声をかけることができないまま、5分経過する。
 そこでやっと、ルイーズは天井から視線を下ろし、じっと床を眺めていた。

 俺は、おずおずと尋ねる。

「あのさ、レリーフのくぼみが光ったり暗くなったりするのを5分間もずっと見てたけど、何か、俺にはわからないメッセージが発信されてたのか? それとも、ただ綺麗だから眺めてただけ?」

 緊張をほぐすため、最後はちょっと冗談めかしてみたが、ルイーズは笑わなかった。代わりに、静かに首をこちらに向け、淡々と言葉を紡いでいく。

「あれは、古代の術法を応用した力で、見ている者の脳に直接映像を送り込む魔法よ。魔力のないあんたには感じ取れなかったでしょうけど、私、凄い映像を見せられたわ……」
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