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第1話
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「アレクシス、今日限りで、きみとの婚約を解消させてくれ。……すまない。でも、全部きみのためなんだ」
婚約者であるランデリック様に、突然そう言われたとき、私の心を満たしたのは、驚きや悲しみではなく、凄まじい怒りと嫉妬だった。
あの女ね。
あの女に、私との婚約を破棄するように言われたのね。
あの女――ウィネットは、半年ほど前から、ランデリック様のそばをウロチョロするようになった。
聞くところによると、ウィネットは、ランデリック様の幼馴染だそうだが、どうにも納得がいかない。卑しい平民にすぎないウィネットが、貴族の子息であるランデリック様と、いったいどこで繋がりを持てると言うのか。
いや、そんなことは、どうでもいい。
二人がどこで繋がりを持ったかなんて、知りたくもない。
気に入らないのは、ウィネットが現れてから、ランデリック様が少しずつ私と距離を置くようになったことだ。……そして、たったの半年で、婚約まで破棄されてしまった。
許せない。
許せない。
許せない。
許せない。
許さない、あの女。
下賤な平民の分際で、私とランデリック様の間に割り込んだ挙句、この私に屈辱を与えるなんて。……報いを、受けさせてやる。
・
・
・
その日。
私はウィネットの下宿を訪ねた。
ふん。
みすぼらしいところね。
こんな犬小屋みたいな家で、よく寝起きができるものだわ。
ウィネットは、私の来訪に驚いていた。
それはそうでしょうね。
私とウィネットは、二人きりで会ったことなどないし、ほとんど口さえきいたこともないのだから。
……でも、私はあんたのことを知ってるのよ。ランデリック様とあんたが、真剣な顔で、見つめ合って話しているのを、ずっと、ずっと、遠くで見てたんだから。
私は敵意を隠し、ウィネットに微笑みかけた。
それで、ウィネットも少し安心したのか、表情を緩めて、「何か御用でしょうか?」と尋ねてきた。
その、ウィネットの緩い笑顔を、隠し持っていた鈍器で殴りつける。
馬鹿め。
油断したわね。
ウィネットは悲鳴を上げる間もなく、床に倒れ伏した。
それから少し遅れて、憎たらしい女を殴りつけた手ごたえが、じわじわ、じわじわと、私の手のひらいっぱいに伝わってくる。
復讐の愉悦と達成感。
胸が、スゥっとした。
もっとも私の腕力では、鈍器を使っても、ウィネットに大した怪我はさせられず、まだ、彼女から意識を奪っただけである。
婚約者であるランデリック様に、突然そう言われたとき、私の心を満たしたのは、驚きや悲しみではなく、凄まじい怒りと嫉妬だった。
あの女ね。
あの女に、私との婚約を破棄するように言われたのね。
あの女――ウィネットは、半年ほど前から、ランデリック様のそばをウロチョロするようになった。
聞くところによると、ウィネットは、ランデリック様の幼馴染だそうだが、どうにも納得がいかない。卑しい平民にすぎないウィネットが、貴族の子息であるランデリック様と、いったいどこで繋がりを持てると言うのか。
いや、そんなことは、どうでもいい。
二人がどこで繋がりを持ったかなんて、知りたくもない。
気に入らないのは、ウィネットが現れてから、ランデリック様が少しずつ私と距離を置くようになったことだ。……そして、たったの半年で、婚約まで破棄されてしまった。
許せない。
許せない。
許せない。
許せない。
許さない、あの女。
下賤な平民の分際で、私とランデリック様の間に割り込んだ挙句、この私に屈辱を与えるなんて。……報いを、受けさせてやる。
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その日。
私はウィネットの下宿を訪ねた。
ふん。
みすぼらしいところね。
こんな犬小屋みたいな家で、よく寝起きができるものだわ。
ウィネットは、私の来訪に驚いていた。
それはそうでしょうね。
私とウィネットは、二人きりで会ったことなどないし、ほとんど口さえきいたこともないのだから。
……でも、私はあんたのことを知ってるのよ。ランデリック様とあんたが、真剣な顔で、見つめ合って話しているのを、ずっと、ずっと、遠くで見てたんだから。
私は敵意を隠し、ウィネットに微笑みかけた。
それで、ウィネットも少し安心したのか、表情を緩めて、「何か御用でしょうか?」と尋ねてきた。
その、ウィネットの緩い笑顔を、隠し持っていた鈍器で殴りつける。
馬鹿め。
油断したわね。
ウィネットは悲鳴を上げる間もなく、床に倒れ伏した。
それから少し遅れて、憎たらしい女を殴りつけた手ごたえが、じわじわ、じわじわと、私の手のひらいっぱいに伝わってくる。
復讐の愉悦と達成感。
胸が、スゥっとした。
もっとも私の腕力では、鈍器を使っても、ウィネットに大した怪我はさせられず、まだ、彼女から意識を奪っただけである。
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