婚約者に愛されたいので、彼の幼馴染と体を交換しました【完結】

小平ニコ

文字の大きさ
1 / 6

第1話

しおりを挟む
「アレクシス、今日限りで、きみとの婚約を解消させてくれ。……すまない。でも、全部きみのためなんだ」

 婚約者であるランデリック様に、突然そう言われたとき、私の心を満たしたのは、驚きや悲しみではなく、凄まじい怒りと嫉妬だった。

 あの女ね。
 あの女に、私との婚約を破棄するように言われたのね。

 あの女――ウィネットは、半年ほど前から、ランデリック様のそばをウロチョロするようになった。

 聞くところによると、ウィネットは、ランデリック様の幼馴染だそうだが、どうにも納得がいかない。卑しい平民にすぎないウィネットが、貴族の子息であるランデリック様と、いったいどこで繋がりを持てると言うのか。

 いや、そんなことは、どうでもいい。
 二人がどこで繋がりを持ったかなんて、知りたくもない。

 気に入らないのは、ウィネットが現れてから、ランデリック様が少しずつ私と距離を置くようになったことだ。……そして、たったの半年で、婚約まで破棄されてしまった。

 許せない。

 許せない。

 許せない。

 許せない。

 許さない、あの女。

 下賤な平民の分際で、私とランデリック様の間に割り込んだ挙句、この私に屈辱を与えるなんて。……報いを、受けさせてやる。





 その日。
 私はウィネットの下宿を訪ねた。

 ふん。
 みすぼらしいところね。
 こんな犬小屋みたいな家で、よく寝起きができるものだわ。

 ウィネットは、私の来訪に驚いていた。

 それはそうでしょうね。
 私とウィネットは、二人きりで会ったことなどないし、ほとんど口さえきいたこともないのだから。

 ……でも、私はあんたのことを知ってるのよ。ランデリック様とあんたが、真剣な顔で、見つめ合って話しているのを、ずっと、ずっと、遠くで見てたんだから。

 私は敵意を隠し、ウィネットに微笑みかけた。
 それで、ウィネットも少し安心したのか、表情を緩めて、「何か御用でしょうか?」と尋ねてきた。

 その、ウィネットの緩い笑顔を、隠し持っていた鈍器で殴りつける。

 馬鹿め。
 油断したわね。

 ウィネットは悲鳴を上げる間もなく、床に倒れ伏した。

 それから少し遅れて、憎たらしい女を殴りつけた手ごたえが、じわじわ、じわじわと、私の手のひらいっぱいに伝わってくる。

 復讐の愉悦と達成感。
 胸が、スゥっとした。

 もっとも私の腕力では、鈍器を使っても、ウィネットに大した怪我はさせられず、まだ、彼女から意識を奪っただけである。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます

碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」 そんな夫と 「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」 そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。 嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう

嘘はあなたから教わりました

菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

それは立派な『不正行為』だ!

恋愛
宮廷治癒師を目指すオリビア・ガーディナー。宮廷騎士団を目指す幼馴染ノエル・スコフィールドと試験前に少々ナーバスな気分になっていたところに、男たちに囲まれたエミリー・ハイドがやってくる。多人数をあっという間に治す治癒能力を持っている彼女を男たちは褒めたたえるが、オリビアは複雑な気分で……。 ※小説家になろう、pixiv、カクヨムにも同じものを投稿しています。

本当に、貴女は彼と王妃の座が欲しいのですか?

もにゃむ
ファンタジー
侯爵令嬢のオリビアは、生まれた瞬間から第一王子である王太子の婚約者だった。 政略ではあったが、二人の間には信頼と親愛があり、お互いを大切にしている、とオリビアは信じていた。 王子妃教育を終えたオリビアは、王城に移り住んで王妃教育を受け始めた。 王妃教育で用意された大量の教材の中のある一冊の教本を読んだオリビアは、婚約者である第一王子との関係に疑問を抱き始める。 オリビアの心が揺れ始めたとき、異世界から聖女が召喚された。

「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている

歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が 一人分減るな、と思っただけ。 ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。 しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、 イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。 3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。 「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」 「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お姉さまに挑むなんて、あなた正気でいらっしゃるの?

中崎実
ファンタジー
若き伯爵家当主リオネーラには、異母妹が二人いる。 殊にかわいがっている末妹で気鋭の若手画家・リファと、市中で生きるしっかり者のサーラだ。 入り婿だったのに母を裏切って庶子を作った父や、母の死後に父の正妻に収まった継母とは仲良くする気もないが、妹たちとはうまくやっている。 そんな日々の中、暗愚な父が連れてきた自称「婚約者」が突然、『婚約破棄』を申し出てきたが…… ※第2章の投稿開始後にタイトル変更の予定です ※カクヨムにも同タイトル作品を掲載しています(アルファポリスでの公開は数時間~半日ほど早めです)

処理中です...