婚約者に愛されたいので、彼の幼馴染と体を交換しました【完結】

小平ニコ

文字の大きさ
2 / 6

第2話

しおりを挟む
 ……このまま倒れた頭を何度も踏みつけて、殺してしまいたかったが、それでは今後の計画が台無しだ。私は何とか殺意を抑え、ウィネットのそばにしゃがみ込むと、呪文を唱えた。

 それは、禁断の森に住む魔女と契約して手に入れた、『入れ替わり』の呪文だった。

 呪文を唱えた者と、使用対象の心を、文字通り、『入れ替え』てしまうのである。法律で使用が禁止されている『禁呪』だが、そんなこと、知ったことではなかった。

 ……やった。
 成功だわ。

 私の心は、ウィネットの体の中に入ることができた。動きがないので確認はできないが、気を失ったままのウィネットの心は、私の体に入ったらしい。

 今のうちだ。
 騒がれる前に、すべてを終わらせてやる。

 私は続けて、『封印の秘術』という呪文を唱えた。

 これも、禁断の森に住む魔女と契約して手に入れた『禁呪』だ。

 ……よし。
『封印の秘術』も、大成功だわ。

 ウィネットの心が入った私の体は、煙のように霧散して、跡形もなく消え去った。心と体が、この世界の物質とは別の状態に変換され、異なる次元に封印されたのだ。

 その封印が解けるのは、呪文を唱えた者の魂が、無に帰るとき――つまり、私の心が死んだときだけ。

 これで、私が生きている限り、ウィネットの封印が解けることはない。
 これからは、私がウィネットとなって、ランデリック様と愛を紡いでいくのよ。

 元の名前にも、元の体にも、元の身分にも、元の生活にも、未練はなかった。
 だって私は、すべてを失ってもいいと思えるほど、ランデリック様に恋い焦がれているのだから。





 ウィネットの体に慣れるため、その日は夕方まで、下宿で過ごした。

 そろそろ日が沈むという時間になって、誰かがドアをノックする。

 誰だろう?
 そう思い、ドアを開けると、そこにはランデリック様が立っていた。

 ランデリック様は、私には一度も向けたことのない、真剣で、厳しい顔をしていた。そして、私の了承も得ずに部屋の中に入り込むと、椅子に腰かけ、深い溜息を吐く。

 私は、なんて声をかけていいか分からず、黙っていた。
 やがて、ランデリック様は語り始める。

「ウィネット、きみのアドバイス通り、昨日、アレクシスに婚約の解消を告げてきたよ。役所に対する正式な手続きは、今日、全部終わらせた。まったく、疲れたよ、本当に……」

 火のような怒りが、私の心を焼いた。
 やっぱり、ウィネットがランデリック様をたぶらかしたのね。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お前を愛することはないと言われたので、姑をハニトラに引っ掛けて婚家を内側から崩壊させます

碧井 汐桜香
ファンタジー
「お前を愛することはない」 そんな夫と 「そうよ! あなたなんか息子にふさわしくない!」 そんな義母のいる伯爵家に嫁いだケリナ。 嫁を大切にしない?ならば、内部から崩壊させて見せましょう

月読みの巫女~追放されたので、女神様と女子会しながら隣国で冒険者ライフを楽しむことにします~

しえろ あい
ファンタジー
 リュンヌ王国の「月読みの巫女」アリアは、建国以来続くしきたりに縛られ、神殿と王家から冷遇される日々を送っていた。治癒や浄化といった「聖女らしい加護」を持たない彼女は、王太子ギルバートからも「無能」と蔑まれ、ついには身勝手な理由で婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。  しかし、それこそがアリアの狙いだった。彼女が女神から授かった真の加護は、姿を変え、身体を強化し、無限の荷物を運べる「最強の冒険者セット」だったのである。 「やっと自由になれるわ!」 アリアは意気揚々と隣国へ向かい、正体を隠してBランク冒険者「リア」として第二の人生をスタートさせるのだった。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

それは立派な『不正行為』だ!

恋愛
宮廷治癒師を目指すオリビア・ガーディナー。宮廷騎士団を目指す幼馴染ノエル・スコフィールドと試験前に少々ナーバスな気分になっていたところに、男たちに囲まれたエミリー・ハイドがやってくる。多人数をあっという間に治す治癒能力を持っている彼女を男たちは褒めたたえるが、オリビアは複雑な気分で……。 ※小説家になろう、pixiv、カクヨムにも同じものを投稿しています。

【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!

月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、 花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。 姻族全員大騒ぎとなった

「地味な婚約者を捨てて令嬢と結婚します」と言った騎士様が、3ヶ月で離婚されて路頭に迷っている

歩人
ファンタジー
薬師のナターリアは婚約者の騎士ルドガーに「地味なお前より伯爵令嬢が ふさわしい」と捨てられた。泣きはしなかった。ただ、明日から届ける薬が 一人分減るな、と思っただけ。 ルドガーは華やかな伯爵令嬢イレーネと結婚し、騎士団で出世する——はずだった。 しかしイレーネの実家は見栄だけの火の車。持参金は消え、借金取りが押し寄せ、 イレーネ本人にも「稼ぎが少ない」と三行半を突きつけられた。 3ヶ月で全てを失ったルドガーが街角で見たのは、王宮薬師に抜擢された ナターリアが、騎士団長と笑い合う姿だった。 「なあ、ナターリア……俺が間違っていた」 「ええ、知ってます。でも、もう関係のない話ですね」

本当に、貴女は彼と王妃の座が欲しいのですか?

もにゃむ
ファンタジー
侯爵令嬢のオリビアは、生まれた瞬間から第一王子である王太子の婚約者だった。 政略ではあったが、二人の間には信頼と親愛があり、お互いを大切にしている、とオリビアは信じていた。 王子妃教育を終えたオリビアは、王城に移り住んで王妃教育を受け始めた。 王妃教育で用意された大量の教材の中のある一冊の教本を読んだオリビアは、婚約者である第一王子との関係に疑問を抱き始める。 オリビアの心が揺れ始めたとき、異世界から聖女が召喚された。

嘘はあなたから教わりました

菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...