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第6話【完結】
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……いや、そうでもないか。
きっと、お父様が、嘘をついたのだ。
お父様は、状況判断力に優れた、賢い方だ。
私の性格もよく分かっているし、ここ最近の思い詰めていた私なら、『禁呪』を使ってよからぬことをしていてもおかしくないと思ったのだろう。だから、詳しく調べられる前に、先制攻撃的に激昂して、屋敷に立ち入ることを許さなかったに違いない。
お父様は、私を見捨てたのだ。
私が、『入れ替わり』の呪文を使うことで、名前も、身分も、すべてを捨てたように。
長身の兵士は、憎々しげに私を見て、呪詛を吐く。
「ちくしょう、もう少し詳しく調べてから、問い合わせるべきだった。この女、ビビッて、真剣な調子で話してたから、つい『本当かもしれない』って思っちまったよ。くそっ、さすがは革命団の女幹部だぜ。うろたえたふりをしながら、俺たちをからかって、小馬鹿にしてたってわけか。まったく、恐れ入ったよ。この状況で、なんて度胸だ」
違う。
違う。
違う!
私は、全部正直に話した!
私は、嘘なんてついてない!
なんでこうなるのよ!
私はただ、ランデリック様と幸せになりたかっただけなのに!
私は、叫んだ。
「ち、ちがっ、違うわ! 本当よ! 私、嘘なんてついてない! 全部、本当のことなのよ! そ、そうだわ! ランデリック様のお屋敷に、無理やりにでも押し入って調べれば、何か、革命団員としての証拠が……っ」
「はいはい、そうですか。もういいよ、そういうお芝居は。……あんたは、強い意志を持った本物の革命戦士だ。簡単に口を割るとは思っちゃいねぇ。今、本部に頼んで、専門の拷問官を呼んだ。覚悟してろよ、あいつらの拷問は、半端じゃねぇぞ」
専門の拷問官――
なんて、おぞましい言葉だろう。
恐怖と焦りで、手足から血の気が引いていく。
私は、叫んだ。
喉が千切れるかと思うほど、叫んだ。
「違う! 違うのよ! 私はウィネットじゃない! アレクシスなのよおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
……結局、軍人たちは、革命団について、価値のある情報を引き出すことはできなかった。専門の拷問官ですらも、『こんなに口の堅い女は初めてだ。まるで、なんにも知らないみたいに、有効な情報を喋らない』と感心していたという。
そのため、革命団員たちは、軍から攻撃されることもなく、着々と準備を進め、一年後、王政に対して一斉に反逆を開始した。その中には、アレクシスの婚約者であったランデリックと、『封印の秘術』が解け、この世界に舞い戻った『本物のウィネット』もいた。
革命団に賛同する民衆も戦いに参加し、内乱は半年以上も続いたが、次第に王政派は勢いを失い、戦いが始まってから実に八ヶ月――ついに革命団は勝利し、内乱は終結する。
そして、貴族も平民も関係なく、皆が幸せに暮らせる平和な理想国家が誕生するのだが、それはまた、別のお話……
終わり
きっと、お父様が、嘘をついたのだ。
お父様は、状況判断力に優れた、賢い方だ。
私の性格もよく分かっているし、ここ最近の思い詰めていた私なら、『禁呪』を使ってよからぬことをしていてもおかしくないと思ったのだろう。だから、詳しく調べられる前に、先制攻撃的に激昂して、屋敷に立ち入ることを許さなかったに違いない。
お父様は、私を見捨てたのだ。
私が、『入れ替わり』の呪文を使うことで、名前も、身分も、すべてを捨てたように。
長身の兵士は、憎々しげに私を見て、呪詛を吐く。
「ちくしょう、もう少し詳しく調べてから、問い合わせるべきだった。この女、ビビッて、真剣な調子で話してたから、つい『本当かもしれない』って思っちまったよ。くそっ、さすがは革命団の女幹部だぜ。うろたえたふりをしながら、俺たちをからかって、小馬鹿にしてたってわけか。まったく、恐れ入ったよ。この状況で、なんて度胸だ」
違う。
違う。
違う!
私は、全部正直に話した!
私は、嘘なんてついてない!
なんでこうなるのよ!
私はただ、ランデリック様と幸せになりたかっただけなのに!
私は、叫んだ。
「ち、ちがっ、違うわ! 本当よ! 私、嘘なんてついてない! 全部、本当のことなのよ! そ、そうだわ! ランデリック様のお屋敷に、無理やりにでも押し入って調べれば、何か、革命団員としての証拠が……っ」
「はいはい、そうですか。もういいよ、そういうお芝居は。……あんたは、強い意志を持った本物の革命戦士だ。簡単に口を割るとは思っちゃいねぇ。今、本部に頼んで、専門の拷問官を呼んだ。覚悟してろよ、あいつらの拷問は、半端じゃねぇぞ」
専門の拷問官――
なんて、おぞましい言葉だろう。
恐怖と焦りで、手足から血の気が引いていく。
私は、叫んだ。
喉が千切れるかと思うほど、叫んだ。
「違う! 違うのよ! 私はウィネットじゃない! アレクシスなのよおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
……結局、軍人たちは、革命団について、価値のある情報を引き出すことはできなかった。専門の拷問官ですらも、『こんなに口の堅い女は初めてだ。まるで、なんにも知らないみたいに、有効な情報を喋らない』と感心していたという。
そのため、革命団員たちは、軍から攻撃されることもなく、着々と準備を進め、一年後、王政に対して一斉に反逆を開始した。その中には、アレクシスの婚約者であったランデリックと、『封印の秘術』が解け、この世界に舞い戻った『本物のウィネット』もいた。
革命団に賛同する民衆も戦いに参加し、内乱は半年以上も続いたが、次第に王政派は勢いを失い、戦いが始まってから実に八ヶ月――ついに革命団は勝利し、内乱は終結する。
そして、貴族も平民も関係なく、皆が幸せに暮らせる平和な理想国家が誕生するのだが、それはまた、別のお話……
終わり
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このままでもいいけど、結婚したか(どんな生活かは兎も角)は知りたかったかな(感想欄でもいいけど)
感想ありがとうございます!
当初の設定では、ウィネットとランデリックには、恋愛感情はない感じです。ただ、未来のことはわかりませんので、そこらへんは、ご想像にお任せします!(なんでもかんでも『これはこうなるのです』って書いちゃうと、想像する楽しみがなくなってしまうので……)