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第3話
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振り返ると、そこには青い髪を肩まで伸ばした、こぎれいな男の子がいた。着ている服は、アランの道場の正式な稽古着だ。いかつい男たちが着用すると、肩の辺りが筋肉で盛り上がってかなり迫力があるが、彼のなで肩だと、まるで女性ものの着物のように見える。
私は、心配そうにこちらを見つめているその男の子に、困ったような笑みを向けた。
「そういうことになったわ。ごめんなさいね、シエル。あなたとは仲良くさせてもらってたのに、別れの言葉も言わずに出てきちゃって」
このシエルは17歳で、アランの道場の勇名を聞き、よその国からわざわざやって来て、弟子になった子だ。一見すると女の子と見間違うほどの優しげな風貌だが、その剣の腕は凄まじい……なんてことはなく、見た目通りにあまり強くない。
そのため、強さと雄々しさを絶対の価値とするアランの道場内ではかなり浮いた存在だった。そのせいか、私とはやけにウマが合い、割と良い関係だったのである。
シエルは実力こそ未熟だが、誰よりも早く道場に来て朝稽古に励む姿は、とても好印象だった。今日もきっと、朝の稽古をするために来て、アランから離婚のことを聞かされたのだろう。
「こんな一方的な離縁、酷すぎます。アラン師範代は女性を軽く見ているところがあり、前から気になっていましたが、それにしてもこれはあんまりです」
「そこまで一方的でもないわよ。私も、この日が来るのを待ってたっぽいところもあるし。でも、私のために怒ってくれるその気持ちは嬉しいわ。ありがとね」
「でも、奥様……」
「待った待った。その『奥様』っていうの、やめてよ。私も晴れて誰の奥様でもなくなったわけだし、これでもまだ18歳なんだから。人が聞いたら変な目で見られるわ。普通にソフィアって呼んでよ。あ、敬語もいらないわよ」
「『奥様』という呼び方は改めますが、敬語は使わないわけにはいきませんよ」
「どうして? 私はもうアランの道場と縁を切った身だし、年だって、あなたとたったの一歳しか違わないのに」
そう言って小首をかしげる私の姿がおかしかったのか、シエルは微笑して言う。
「年齢や道場のことなんて、関係ありません。奥……いえ、ソフィア様は僕が知る限り、地上最強の剣士ですから。敬意を払うのは当然のことです」
「ち、地上最強って、いくらなんでも持ち上げすぎじゃない」
「僕はオーバーな表現だとは思っていませんよ。だってあなたは、鬼神のごとき強さのアラン師範代よりも強いんですから」
シエルは大きな瞳を爛々と輝かせる。
その無垢な姿は、実年齢よりも幼く見えた。
私は、心配そうにこちらを見つめているその男の子に、困ったような笑みを向けた。
「そういうことになったわ。ごめんなさいね、シエル。あなたとは仲良くさせてもらってたのに、別れの言葉も言わずに出てきちゃって」
このシエルは17歳で、アランの道場の勇名を聞き、よその国からわざわざやって来て、弟子になった子だ。一見すると女の子と見間違うほどの優しげな風貌だが、その剣の腕は凄まじい……なんてことはなく、見た目通りにあまり強くない。
そのため、強さと雄々しさを絶対の価値とするアランの道場内ではかなり浮いた存在だった。そのせいか、私とはやけにウマが合い、割と良い関係だったのである。
シエルは実力こそ未熟だが、誰よりも早く道場に来て朝稽古に励む姿は、とても好印象だった。今日もきっと、朝の稽古をするために来て、アランから離婚のことを聞かされたのだろう。
「こんな一方的な離縁、酷すぎます。アラン師範代は女性を軽く見ているところがあり、前から気になっていましたが、それにしてもこれはあんまりです」
「そこまで一方的でもないわよ。私も、この日が来るのを待ってたっぽいところもあるし。でも、私のために怒ってくれるその気持ちは嬉しいわ。ありがとね」
「でも、奥様……」
「待った待った。その『奥様』っていうの、やめてよ。私も晴れて誰の奥様でもなくなったわけだし、これでもまだ18歳なんだから。人が聞いたら変な目で見られるわ。普通にソフィアって呼んでよ。あ、敬語もいらないわよ」
「『奥様』という呼び方は改めますが、敬語は使わないわけにはいきませんよ」
「どうして? 私はもうアランの道場と縁を切った身だし、年だって、あなたとたったの一歳しか違わないのに」
そう言って小首をかしげる私の姿がおかしかったのか、シエルは微笑して言う。
「年齢や道場のことなんて、関係ありません。奥……いえ、ソフィア様は僕が知る限り、地上最強の剣士ですから。敬意を払うのは当然のことです」
「ち、地上最強って、いくらなんでも持ち上げすぎじゃない」
「僕はオーバーな表現だとは思っていませんよ。だってあなたは、鬼神のごとき強さのアラン師範代よりも強いんですから」
シエルは大きな瞳を爛々と輝かせる。
その無垢な姿は、実年齢よりも幼く見えた。
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