夫より強い妻は邪魔だそうです【第一部完】

小平ニコ

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第40話

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「早合点するな。まだそう決めたわけじゃない。どいてな」

 シエルを押しのけるようにしてカールの前に立ち、しゃがみ込んで視線を合わせるヘザー。その厳しい視線にも、目を背けないカール。あるいはショックが強すぎて、今はまだ、何も見えていないような状態なのかもしれないが。

 ヘザーは軽く息を吐き、真剣な声で問う。

「坊や。今から大事な質問をする。坊やの今後に関わる、本当に大事な質問だ。嘘をつかず、正直に答えるんだよ。それで、こっちの対応も違ってくる」

 カールは何も答えない。微動だにしない。
 しかし数秒して、こくんと小さく頷いた。

「よし。じゃあ単刀直入に聞くよ。坊やは、親父が山賊の首領だって知ってたのかい?」

 意外にも、優しい声色だった。
 カールはまたしても数秒間黙り、静かに答え始める。

「……知りませんでした」

「本当に?」

「はい。父は仕事の内容を、決して僕に話しませんでしたから」

「ずっと一緒に暮らしていて、わからないもんかねぇ」

「父と暮らし始めたのは、実は最近なんです」

「へえ」

「僕は少し前まで、母と二人で暮らしていました。その母が病気で死に、途方に暮れているときに訪ねてきたのが父です。そして僕は引き取られ、この村に引っ越してきました」

「なるほどね。それなら、父親の正体を知らなくても不自然じゃないな。そこでくたばってる山賊どもの正体も、知らなかったのかい?」

「はい。道ですれ違うことくらいはありましたが、この人たちがうちを訪ねてくることは、一度もありませんでしたので。父と話しているところも、見たことがありません」

「そうか。何も知らなかったのなら、この坊やに罪があるとは言えないな」

 ヘザーの厳しい瞳が、少し緩む。近くでハラハラしながら見守っていたシエルの緊張は、ハッキリと緩む。しかし私は、なんだか嫌な予感がした。

 その後、しばらく沈黙が続く。
 すると、黙っていたカールが、おずおずと口を開いた。

「あの……」

「なんだい、坊や」

「確かに僕は、父が山賊の首領だとは知りませんでした。ただ……」

 私は、カールを制する。

「カール! 言っちゃ駄目!」

 突然の大声にビクリとなり、こっちを見るカール。
 ヘザーもこっちを見て、再び厳しい目に戻って問うてくる。

「何を言っちゃ駄目なんだい?」

 その問いは私に向けたものだったが、視線はカールに戻される。
 疑念をそのまま表したような瞳に、カールは静かに回答した。

「……父が、何か真っ当ではないことをしてお金を得ているのは、気づいていました。どれだけ秘密にしていても、それくらいはわかります」

 あぁ……。言ってしまった。
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