夫より強い妻は邪魔だそうです【第一部完】

小平ニコ

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第56話(ソフィアの過去)

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 居残りの連中なだけあって、そろいもそろって動きがのろい。まるでスローモーションだ。本気で逃げるつもりがあるのか疑いたくなる。

 面白い遊び相手ではないし、やるせない気持ちではあったが、悪党どもは一人だって逃がしはしない。これは正義のおこないだ。最後までやり遂げなければ。私はゴミ掃除をするような気持ちで、一人一人殺していった。

 本拠地にいたのは、戦闘員だけではなかった。山賊たちの妻や子供、年老いた両親もいた。不愉快だった。何の罪もない人を傷つけて、犯して、殺して、奪って、そんな生き方をしてる奴らが、普通の人たちみたいに家族を作り、ぬくぬくと暮らしていると思うと、無性に腹が立った。

 だから全員殺した。少しも同情しなかった。だけど、子供を殺して、老人を殺して、そして私の親くらいの年齢のおばさんを殺すときに、あることを言われた。

 おばさんは、こう言ったのだ。

「どうしてこんな残酷なことができるの? あなた、おかしいわよ」

 どうしてこんな残酷なことができるの――

 それは奇しくも、かつて私が山賊に対して思った言葉だった。
 山賊に受けた仕打ちを苦に自殺した、あの女の人の顔が浮かぶ。

 ここはいやです。

 この世界は、もういやです。

 だから死にます。

 本当なら、この世界に対する希望でいっぱいのはずの若い女の子に、そこまでの絶望を味わわせた山賊の関係者が、『どうしてこんな残酷なことができるの?』だなんてほざくのか。

 怒りのあまり、全身の血が逆流したかのような錯覚に襲われる。頭にきて頭にきて頭にきて、正気を失いそうだった。

 このおばさんは恐らく、山賊の女房だろう。ならば、旦那が何をして金を持ってきて、その金で自分たちが暮らしていることを知らないはずがない。旦那が『哀れな獲物たち』に対し、どれだけおぞましい仕打ちをするか知らないはずがない。

 自分たちが人から奪い、殺すのはいいが、自分たちが奪われ、殺されるのは嫌だというのか。まるで被害者のような目でこっちを見て、非難するのか。

 ふざけてる。ふざけきってる。

 だから私は、殺す前に言い返した。

「今までさんざん人を殺して、奪ってきたくせに。そんなこと言う資格があるの?」

 おばさんは、一瞬だけバツが悪そうな顔になったが、すぐにこう言った。

「そうかもね。でも、私たちが殺されても仕方のない人間だってことと、あなたがおかしいってことは、両立するわ」

「どういう意味?」

「確かに私たち山賊はクズよ。でも、あなたもそれと大差ないってことよ」

「納得いかない。クズの山賊を駆除してる私は、クズじゃない」

「クズじゃなくても、まともじゃない。あなたは異常者よ」

「納得いかない」

「なら証拠を見せてあげる。ほら」
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