夫より強い妻は邪魔だそうです【第一部完】

小平ニコ

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第66話

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 私が人を始めて殺したのは11歳のとき。襲ってきた二人の海賊が相手だった。大した使い手ではなかったが、初めての殺し合いの緊張感もあり、多少はてこずったのを覚えている。

 もしも私が7歳だったら、武器を持った二人の海賊を相手に戦い、勝つことができただろうか。それは絶対に無理だ。技も未熟だし、いくらなんでも7歳では、体ができていなさすぎる。

「剣や鈍器を使っての殺人ならば、そうでしょうね。……マルグリットが使ったのは魔法です。彼女は若干7歳にして、ありとあらゆる攻撃魔法を使いこなす、一族始まって以来の天才魔導師だったんです」

「そういうこと……」

「ですが、名家の生まれで、天才であるとしても、彼女のやったことが許されていいはずがありません。父はこのまますべてを秘密にし、黙っているわけにはいかないと、この魔法王国トアイトンの国王陛下に拝謁し、マルグリットの罪を告白したんです」

「もしかして、それで死刑になったの?」

「いえ、それが、マルグリットの罪は不問にされてしまったんです」

「ええっ!? なんで!?」

「マルグリットは、この国の魔法文明を根底から変えてしまうほどの可能性を持つ天才でした。それ故、陛下はすべてをなかったことにし、それどころか、殺人を何とも思っていない7歳の少女を、魔法科学省の長官にしてしまったんです」

「そ、そんな馬鹿なことって……」

「本当に、馬鹿なことです……。しかし、彼女が魔法科学省の長官となったことで、魔法という未知の要素の多い技術は、一気に進歩を遂げていきました。この国の建築、インフラ、情報テクノロジー。全てにおいて、マルグリットの考案した新しい魔法技術が活用されているんです」

 私は、この国にやって来てからまざまざと見せつけられた、先進的な技術の数々を思い出していた。何の罪もない猟師の一家を惨殺したマルグリットだが、一方で、自らの天才的な能力を活かし、国を発展させ、多くの人を幸せにした。

 この場合、彼女の犯した罪はどうなるのだろう。法的な意味ではなく、道義的な意味でだ。数名を不幸にしても、その何千倍もの人を幸せにすれば、その罪は許されるのだろうか。

 感情論で語るなら、許されてはいけないような気がするが、今現在、マルグリットの用いた魔法技術で幸せな暮らしをしているトアイトンの国民はどう考えるのだろうか? そう思うと、簡単に結論を出せる問題ではないのかもしれない。

「それで、その、マルグリットはどうして死んじゃったの?」

 シエルは少し黙り、瞳を閉じる。
 そして、再び瞳を開けるのと同時に、私の問いに答えた。

「実は、死んでないんです。死んだことになっているだけで」
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