この村の悪霊を封印してたのは、実は私でした。その私がいけにえに選ばれたので、村はもうおしまいです【完結】

小平ニコ

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第15話

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「だから、僕は村の人たちに言うよ。土地が死に、大きな災厄が起こる前に、みんな避難してほしいって。そして、いけにえの儀式のようなことは、もう二度とおこなわないでほしいと」

「避難って……。クォール様は、この土地を滅茶苦茶にした人間たちを、助けてあげるおつもりなんですか?」

「もちろんだよ。この土地に住まうすべての生き物を慈しむのが、守護精霊の使命だからね。それに、彼らの心から信仰がなくなったのは、僕に力がないせいでもあるんだから」

 なんて大きな慈悲の心だろう。
 私たちのような狭量な人間とは、根本的に考え方が違う。

「そうですか」

 また『そうですか』か。クォール様の御心に多少なりとも心を動かされているというのに、私は、こんなことしか言えないのか。自分の頭の悪さが、本当に嫌になる。そんな強い自嘲の思いが顔に出ていたのか、クォール様は慰めるようにこう言った。

「カレン、きみはどうして自分を責めているんだい?」

「それは……」

「よければ聞かせてくれないか、きみ自身のことを」

「私のことなんて、聞いても仕方ないですよ」

 本当に仕方ないと思う。
 ゴミそのものの人生なんだから。

 しかし、クォール様は首を左右に振る。

「もはや土地と共に死を待つだけだった非力な守護精霊に、再び誰かと話せる機会が与えられたのは、素敵な運命だと僕は思ってる。つまり、きみは僕の運命の人だ。だから、きみのことをもっと知りたいんだよ」

 そこまで言われて、断ることはできそうになかった。それから数日間、私たちは祠にこもり、多くは私の話を、そして、時にはクォール様ご自身の話をして、静かに過ごしたのだった。

 その間、私は食事をとらず、水も飲まなかった。……いや、正確には飲みたいと思わなかったというべきか。とにかく、少しもお腹がすかないし、喉も乾かないのだ。

 ただ、一日に一度だけ、クォール様と額を触れ合わせ、温かな力を分けてもらう。それだけで心身ともに充実し、他には何もいらなくなった。

 私は次第に、何かを食べたり飲んだりしていたときのことを思い出せなくなっていった。まるで、もともと何も食べないのが自然な状態であるかのように……

 クォール様は私の話に深く耳を傾けられ、その境遇に大いに同情してくれた。

「人の一生は苦しみが多いものだけど、カレン、きみは特に辛い思いをしたんだね」

「はい……」

「村人たちやきみの家族が、それだけ残酷なことをしたのは、この土地を満足に守ることのできなかった僕のせいでもある。謝ってすむことじゃないと思うが、謝らせてほしい。本当に申し訳なかったね、この通りだ」
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