この村の悪霊を封印してたのは、実は私でした。その私がいけにえに選ばれたので、村はもうおしまいです【完結】

小平ニコ

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第17話

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 その優しさに唾を吐くような台詞を、私は言った。

「そんなことをして、クォール様に何の得があるんですか?」

 クォール様は、少しも気を悪くした様子もなく、微笑する。

「損得を考えていたら、守護精霊はやっていられないよ。それに……」

「それに?」

「なんとなく、きみには笑顔でいてほしいんだ」

「どうして?」

「今、言っただろう? なんとなくさ」

 私には、クォール様の真意がわからなかった。しかし、クォール様が、本心から私の憎しみを消し去りたいと思っていることは伝わってきた。自虐と怒りで情緒不安定になっている私だったが、誰かが自分を気にかけてくれているということは、素直に嬉しかった。





 それから三日間。私たちはごく普通に過ごした。

 本当に『ごく普通』で、クォール様は私の憎しみを解き放つために、何か特別なことをしたりはしなかった。二人そろって普通に起き、二人で普通の会話をし、二人で普通に山を散策して、二人で普通に眠る。本当に、普通な日々だった。

 正直、私の心を改めさせるため、説法か何かをされると思っていたので意外だった。しかし、そんな普通の日々の中で自然と怒りが薄まっていくのを感じていた。

 もしかしたら、憎しみを忘れるのにもっとも良い方法は、特別な説法などではなく、心穏やかに過ごす『ごく普通の日々』なのかもしれない。クォール様はそれをよく理解しているから、余計なことをせず、ただ静かに私に付き添ってくれているのだろう。

 実際、このまま一年、二年とこういう日々が続けば、私の憎しみも消え去るかもしれない。でも、もう間もなくクォール様は死んでしまう。そう思うと、クォール様の力の源である信仰心をなくしてしまった村人たちへの憎しみが、さらに燃え上がるようだった。

 そんな私の強い憎悪を感じ取ったのか、クォール様はいつもの微笑で言う。

「カレン、また怒っているのかい? 僕と一緒にいるのも、そろそろ飽きてきたかな?」

 私は、首を左右に振る。

「クォール様と一緒に過ごす日々は、とても穏やかで、幸せです。でも、村人たちの信仰が消えたせいで、もうすぐクォール様がいなくなってしまうと思うと辛くて、それで余計に村人たちへの怒りがわいてくるんです」

「そうか、困ったね。村人のせいではなく、こういう運命なんだと言っても、きっときみは納得してくれないだろうね」

「あの、私は、私だけは、クォール様を心から信じています。その信仰は、クォール様の力にはならないのでしょうか」

「もちろんなっているよ。死が間近に迫っているのに、こうして元気に過ごせているのはきみのおかげなんだ。きみと出会っていなかったら、僕はもう立つこともできないはずだ」
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