追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ

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第16話

 そんなことを思っているうちに、夜はどんどん更けていく。

「ふぁ~あ……ねむ……」

 自然と、口からあくびが出た。
 それも当然といえば当然である。

 私はこれまで、日の出と共に起き、日が沈むのとほぼ同時に寝るという、非常に規則正しい生活をしてきた。思えば、こんなに夜遅くまで起きているのは、人生で初めてのことかもしれない。

 旅の高揚感のおかげで、今まではあまり眠気を感じていなかったが、さすがにこれ以上起きているのはしんどくなってきた。もう、どこでもいいから適当な宿に入って、寝ちゃおうかな……

 そう思った私は、とりあえず目についた宿に、フラフラと入ろうとした。

 だが、入れなかった。

 誰かが私の手を、グイっと引いたからだ。

 ちょっと、いったい誰よ。
 いきなり人の手を引っ張る無礼者は。

 眠気のせいもあり、私は少々憮然とした顔で振り返る。

 なんとそこには、先程私からお財布を盗んだ、スリの少年が立っていた。
 少年は、帽子のツバに手をやり、少しだけ厳しい顔で、口を開く。

「そこは駄目だ。タチの悪いボッタクリ宿だよ。やめときな」

 私は首を傾げ、問う。

「ボッタクリ宿ですって? この、正面の看板には、良心的なお値段が書いてあるみたいだけど……」

 少年は指を振りながら「ちっちっち」と舌を鳴らし、言葉を続ける。

「良心的なのは看板だけさ。あんたみたいに何も知らない観光客をカモにして、頼んでもいないサービスを勝手にやって、最後に莫大な料金を請求してくるんだよ。しかも、サービス自体はまともだから、詐欺で訴えることもできない。悪知恵の回る野郎が経営してる宿さ」

「へええ~、本当に、タチ悪いわね。引き留めてくれて助かったわ。……さて、ここで質問です。スリのあなたが、どうして私を助けてくれるのかしら?」

 少年は、帽子を目深にかぶり、顔の半分を隠すようにしながら、言う。

「その前に、俺の質問に、二~三、答えてくれ」

「えぇ~、質問に質問を返すのは、ルール違反じゃない?」

 不満げにそう言う私だったが、まあ別に、少々の質問に答えてあげることくらい大した手間じゃないと思ったので、それ以上文句は言わずに黙っていると、少年は質問を始めた。

「あんた、この町の人間じゃないよな? 旅の魔法使いか?」

 私は、頷いた。

「そうよ」

「さっき俺を浮かせたの、魔法だろ? なんて名前の魔法なんだ?」

「名前なんてないわよ、必殺技じゃあるまいし。あれは、自己浮遊魔法の応用よ。本来なら自分を浮かせる魔法を、他人に使っただけ。大したことじゃないわ」

「ほんとかよ。俺、優秀な魔法使いを何人か知ってるけどさ。自分が浮くならともかく、他人を自由自在に浮かせる魔法なんて、見たことないぞ」

「まあ、そうかもね。自分が浮くのと、他人を浮かすのじゃ、100倍くらい難易度が違うから」
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