追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ

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第44話

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 リーゼルは、コーヒーカップを自らの口元に運ぶ。そして、中身がとうの昔に空っぽになっていたことに気づき、少々気恥ずかしそうに微笑んだ。それから彼女は真顔になり、私の問いに答えた。

「フェルヴァ・アストラスは、年の離れた俺の妹だ。そして、俺がやたらと『至高なる魔女の会』に詳しいのは、俺自身も『至高なる魔女の会』の一員だったからだ。……俺は、『魔法使い優生思想』に賛同して入会したわけじゃないけどね」

 リーゼルが『至高なる魔女の会』の一員だったことについて、私は、そんなに驚かなかった。彼女があまりにも組織の内情に詳しいので、心のどこかで、そうではないかと思っていたからだ。

 それよりも引っかかったのは、リーゼルがフェルヴァ・アストラスを『俺の妹』と言ったことだ。先程、立体映像で見たフェルヴァの顔は、明らかにリーゼルよりも年上だった。いや、そりゃまあ、世の中には実年齢より大人びた子もいっぱいいるけど、あれはやはり、どう見てもリーゼルより年上だ。

 私は首を傾げ、問う。

「……『妹』じゃなくて、『姉』の間違いじゃないの?」

 リーゼルは、非常に小さな動きで、首を左右に振る。

「いや、妹であってるよ。俺、ガキに見えるだろ? でも、こう見えて、今年で19歳なんだよ」

 えっ?

 えぇっ?

 ええぇぇ~!?

 年上!?

 この子、私より年上だったの!?

 いや。

 いや。

 いやいやいやいやいや。

 たとえ童顔だとしても、こんな19歳いないでしょ!?

 ……いえ、そうでもないのかしら?

 この広い世界には、背の低い人も、幼い顔立ちの人も、いくらでもいるんだし、12~13歳くらいに見える19歳の人がいても、別に変ではない気もしてきた。

 い、いや……でも……19……う、うーん……19歳かぁ……いや、まあ、言われてみれば、子供にしては色気もあるし……いや、でも、うーん……

 色々と思うところはあるが、実年齢より幼く見える人の年齢について、しつこく尋ねるのはあまりにも失礼である。私はなんとなく釈然としない気持ちをグイッと飲み込んで、とりあえずは納得しておくことにした。

 私は気持ちを切り替えるように、「コホン」と咳払いをして、言う。

「えっと、それじゃ、話を戻しましょうか。つまりあなたは、妹さんがリーダーを務めてる組織と敵対してるってことね。……ってことは、その、妹さんとは決別したって考えていいのかしら?」

「ま、そうなるな」

「……つらくないの?」

「つらいよ」

 リーゼルは、抑揚のない声で、さらりと呟いた。

 薄着の人に対し、『そんな格好で寒くないの?』って尋ねたら、『寒いよ』って返ってきたような、大して感情のこもっていない声だった。

 でも、彼女の瞳は、とても寂しそうだった。
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