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第2話
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ただ、一応は長い間、一緒に旅をした仲間だ。
私は去り際に、少しだけ気になったことを、ラジアスに尋ねた。
「ねえ、ラジアス。攻撃面では、あなたとトレイボン、二人がいれば充分だろうけど、回復役はどうするの? 私がいなくなったら、傷を治療するのは……」
そんな私の問いを、ラジアスは鼻で笑って遮った。
「心配無用だ。回復役については、ちゃんと考えてある。……実は、もう新しい人材と話をつけてあってな。次に立ち寄る町で、有能なヒーラーと合流する予定なんだよ」
ヒーラー……
確か、最近話題になっている、新しいタイプの回復職だ。戦闘能力はほとんどないが、僧侶……いや、聖女以上の回復魔法が使えると聞いたことがある。
なるほどね。
さすがはラジアスだわ。
後々の計画もなしに、勢いだけで私を追い出したりはしないか。
私はホッとして、口を開く。
「そう。後任が決まってるなら安心だわ。ラジアスも、トレイボンも、これからも頑張ってね、陰ながら応援してるわ」
純粋なエールを込めてそう言ったのだが、ラジアスは不愉快そうに眉を顰める。そして、後ろに控えていたトレイボンが、小さく舌打ちをした。
ラジアスは、私を指さし、少しだけ声を荒げる。
「『頑張ってね』だと? なんだ、その上から目線の態度は。丁寧に、『頑張ってください』って言うべきだろ? 俺も、トレイボンも、お前のそういうところに、ずっとイラついてたんだ」
「う、上から目線って……そんな……お別れする仲間に対して、応援の気持ちを言っただけじゃない……」
「ちっ。これで最後だから、ハッキリ言っておくぞ。俺は、大国の国王陛下直々に剣の腕を認められた勇者だし、トレイボンだって、周辺国で知らぬものがいないほどの大魔導師だ。田舎のしょぼい国で聖女様だなんだと祭り上げられていい気になっていたお前とは、格が違うんだよ」
あまりといえばあまりな物言いに、私は口を尖らせる。
「別にいい気になんかなってないんですけど」
「いや、いい気になってるね。最近は、俺やトレイボンを差し置いて、お前ばかりが注目されている。この前の新聞、見たか? 俺じゃなくて、お前が一面のトップだった。『回復魔法と武術――両方を完璧にこなす、偉大なる聖女様』だとさ。ふざけやがって、リーダーは俺だぞ!」
「し、知らないわよ、そんなこと。私がそう書いてって頼んだわけじゃないし……。だいたい私、別に注目されようと思って頑張ってるわけじゃないわ」
「ふん、でも、悪い気分じゃないだろう? 俺にはわかるぞ。民衆たちの視線が自分に集まるのは、快感だろう? なあ、偉大なる聖女様。……だが、聖女なんて、もう時代遅れだ。これからはヒーラーの時代だよ。ふふ、サポート役に過ぎないヒーラーなら、勇者以上に目立つことはないだろうしな」
ああ、もうっ。
勇者のくせに、なんて狭量で、嫉妬深い男だろう。
もう、付き合っていられない。
喧嘩別れみたいになるのは残念だが、これ以上話しても、さらに険悪なムードになるだけだろう。私は会話を打ち切るように、ラジアスに背を向け、声を張り上げた。
「馬鹿馬鹿しい、これ以上、話すことはないわ! それじゃ、さようなら! これからも頑張ってください! 陰ながら応援しています! じゃあね!」
言葉の勢いのままに、私は駆けだした。
一度だって、振り向いたりはしなかった。
……こうして私は、勇者パーティーから、正式に脱退したのでした。
私は去り際に、少しだけ気になったことを、ラジアスに尋ねた。
「ねえ、ラジアス。攻撃面では、あなたとトレイボン、二人がいれば充分だろうけど、回復役はどうするの? 私がいなくなったら、傷を治療するのは……」
そんな私の問いを、ラジアスは鼻で笑って遮った。
「心配無用だ。回復役については、ちゃんと考えてある。……実は、もう新しい人材と話をつけてあってな。次に立ち寄る町で、有能なヒーラーと合流する予定なんだよ」
ヒーラー……
確か、最近話題になっている、新しいタイプの回復職だ。戦闘能力はほとんどないが、僧侶……いや、聖女以上の回復魔法が使えると聞いたことがある。
なるほどね。
さすがはラジアスだわ。
後々の計画もなしに、勢いだけで私を追い出したりはしないか。
私はホッとして、口を開く。
「そう。後任が決まってるなら安心だわ。ラジアスも、トレイボンも、これからも頑張ってね、陰ながら応援してるわ」
純粋なエールを込めてそう言ったのだが、ラジアスは不愉快そうに眉を顰める。そして、後ろに控えていたトレイボンが、小さく舌打ちをした。
ラジアスは、私を指さし、少しだけ声を荒げる。
「『頑張ってね』だと? なんだ、その上から目線の態度は。丁寧に、『頑張ってください』って言うべきだろ? 俺も、トレイボンも、お前のそういうところに、ずっとイラついてたんだ」
「う、上から目線って……そんな……お別れする仲間に対して、応援の気持ちを言っただけじゃない……」
「ちっ。これで最後だから、ハッキリ言っておくぞ。俺は、大国の国王陛下直々に剣の腕を認められた勇者だし、トレイボンだって、周辺国で知らぬものがいないほどの大魔導師だ。田舎のしょぼい国で聖女様だなんだと祭り上げられていい気になっていたお前とは、格が違うんだよ」
あまりといえばあまりな物言いに、私は口を尖らせる。
「別にいい気になんかなってないんですけど」
「いや、いい気になってるね。最近は、俺やトレイボンを差し置いて、お前ばかりが注目されている。この前の新聞、見たか? 俺じゃなくて、お前が一面のトップだった。『回復魔法と武術――両方を完璧にこなす、偉大なる聖女様』だとさ。ふざけやがって、リーダーは俺だぞ!」
「し、知らないわよ、そんなこと。私がそう書いてって頼んだわけじゃないし……。だいたい私、別に注目されようと思って頑張ってるわけじゃないわ」
「ふん、でも、悪い気分じゃないだろう? 俺にはわかるぞ。民衆たちの視線が自分に集まるのは、快感だろう? なあ、偉大なる聖女様。……だが、聖女なんて、もう時代遅れだ。これからはヒーラーの時代だよ。ふふ、サポート役に過ぎないヒーラーなら、勇者以上に目立つことはないだろうしな」
ああ、もうっ。
勇者のくせに、なんて狭量で、嫉妬深い男だろう。
もう、付き合っていられない。
喧嘩別れみたいになるのは残念だが、これ以上話しても、さらに険悪なムードになるだけだろう。私は会話を打ち切るように、ラジアスに背を向け、声を張り上げた。
「馬鹿馬鹿しい、これ以上、話すことはないわ! それじゃ、さようなら! これからも頑張ってください! 陰ながら応援しています! じゃあね!」
言葉の勢いのままに、私は駆けだした。
一度だって、振り向いたりはしなかった。
……こうして私は、勇者パーティーから、正式に脱退したのでした。
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