二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第29話

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「はぁ、なるほど。まあ、理屈的には、そうなるわよね」

「ですから私は、エルフの里を出て、世界的に名の知れた格闘者をターゲットにし、次々に戦いを挑みました。つわものと戦い続ければ、いつかきっと、父の仇に出会えると思ったからです。これまで、数えきれないほどの強敵を血の海に沈めてきましたが、その中には、父の仇はいませんでした……」

 血の海って……
 この子、いちいち言うことが物騒ね……

 でも、今の話で、エリスがやたらと覚悟が決まっていて、実戦慣れしている理由がよく分かったわ。……殺された、お父さんの敵討ちかぁ。天然っぽい子だけど、色々苦労してるのね。

 私はエリスを慰めるように、彼女の肩に手を置いて、言う。

「あなたも大変ね。いつか、お父さんの仇を討てるといいわね」

 ……あれ、ちょっと待って。
 なんで、エリスのお父さんの敵討ちの話になったんだっけ?

 ああ、そうそう。

 この子が、『聖女ディーナに戦いを挑みに来た』って言うから、その理由を尋ねたんだったわ。……今までの話の流れから察するに、エリスは私を、義父殺しの容疑者の一人だと思っていて、戦いを挑もうとしているということか。

 と、とんでもない誤解だわ。

 私、エルフの里になんか行ったことないし、そもそも、これまでの人生の中で、エルフ族と出会ったことも、ほとんどないんだから。

 さて、どうしよう。

 このままでは、そう遠くないうちに、エリスは私が聖女ディーナだと気がつき、戦いを挑んでくるだろう。……こちらとしては、正々堂々の果し合いなら逃げるつもりはないが、明らかな誤解が原因で戦うってのは、どうもねえ。

 ちゃんと説明すれば、私はまったくの無関係で、『お父さんの仇』なんかじゃないって、わかってもらえるかしら?

 ……なんとなくだけど、それは無理な気がする。

 これまでエリスに狙われた格闘者たちも、戦う前に『自分は犯人じゃない』と述べたことだろう。しかしエリスは、問答無用で『数えきれないほどの強敵を血の海に沈めてきた』のだ。人の話を聞かない上に、思い込みの強そうな性格なので、一度心に火がついたら、もうどうにも止まらないに違いない。

 ……こうなったら、正体がバレてない今のうちに、逃げちゃおうかな。

 そうね。よく考えたら、ずっとこの町に留まり続ける理由もないし、今日の分のバイト代を貰ったら、そのまま宿も引き払って、夜のうちに、旅に出よう。

 私がこの町からいなくなれば、結果的にエリスも町を去るだろうし、あの用心棒の兄弟から報復されることもなくなる。よしよし、これで、万事丸く収まるわ。
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