二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第45話

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 だがエリスは、まったく臆した様子もなく、平然と言う。

「お師匠様、この人たちはどうやら、私たちを待ち伏せしていたようですね」

 私は、頷いた。

 この町は、大きな外壁で町全体が囲まれており、出入り口は一つだけだ。恐らくチンピラさんたちは、『誰か』の指示で、町の出入り口を見張っていたのだろう。

 ま、『誰か』なんてもったいぶった言い方をしなくても、チンピラたちに指示したのは、あの用心棒の兄弟に決まっているけどね。昨晩問題を起こしたエリスが、今朝のうちに町から逃げ出すに違いないと予想し、手下に命じて町の出入り口を固めていたのね。なかなか賢いわ。

 で、そのチンピラたちだが、『二人ともやっちまった方がいい』などと、威勢の良いことを言っていた割に、いつまでも私たちを遠巻きに見ているだけで、何かしてくる様子がない。それどころか、一部の人間には、ちょっとした怯えの色もある。

 ……ああ、なるほど。チンピラたちは、知っているのだ。私の隣にいるエリスが、彼らにとって恐るべき存在である、あの用心棒の兄弟を苦も無く倒してしまった(一人は完全なる不意打ちで倒したわけだが)事実を。だから、やたらと恫喝してくることもないし、うかつに近寄ってもこないのね。

 う~ん、この、何とも言えない消極的な雰囲気。こちらとしては、当然無用な争いは避けたいのだが、この人たちも、できることなら、私たちと戦いたくないのかしら?

 私は少しだけ、彼らと話をしてみることにした。

「ねえ、あなたたち。あの用心棒の兄弟に命令されて、このエルフのお姉さんが町から出るのを阻止するつもりなんでしょ?」

 その問いに、チンピラたちの中でもリーダー格と思しき男が、答える。

「そうだ。あんたらに恨みはねぇが、このままあんたらを町から出しちまったら、俺らは兄貴にとんでもねぇ目に遭わされる。わりぃけど、ちょっとばかし痛い思いをしてもらうよ」

「あら、『ちょっとばかし痛い思い』をする程度でいいの? 兄貴さんには、エルフの女の子を再起不能にするように言われてるんじゃない? それこそ、徹底的に痛めつけて、二度と自分の足で立てなくなるくらいに」

「……そうだが、俺たちだって、できればそこまで惨いことはしたくない。兄貴をなだめるために、適当にエルフをボコって、それで終わりにしてぇんだよ。……もうすぐ兄貴もここに来るが、俺たちにやられてボロボロになったエルフを見れば、兄貴の気持ちも落ち着き、それで手打ちってことになるかもしれねぇだろ?」

「…………」

「だから、頼むよ。抵抗せずに、俺たちにボコられてくれ。もちろん、それなりに加減はする。……あんた、エルフの姉ちゃんのツレみたいだが、巻き添えを食いたくねぇなら、離れてた方がいいぜ」

 ふーむ……

『できればそこまで惨いことはしたくない』『それなりに加減はする』か。

 どうやらこのチンピラたち、少なくとも、喜んで女の子を壊したがるような極悪人でも、狂人でもないらしい。まあ、女の子をボコること自体に抵抗がないあたりは、見た目通りのチンピラではあるが。
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