二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第49話

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「あんた、俺たちに説教しようってのか?」

「別に、そういうわけじゃないわ。でも、どっちにも非があったのは、確かでしょ?」

「かもな。それで?」

「あのね、あなたたちの仇を取ったってわけじゃないんだけど、実は昨日、私がこの子を、拳でぶちのめしたのよ。意識を失うくらい、強烈にね」

「へえ」

「だから、この子もそれなりに、痛い目を見たってわけ」

「そうなのか。で? 何が言いたい?」

「つまりね、あなたたちも、このエリスも、どっちも痛い目に遭ったんだから、これで、喧嘩両成敗ってことにならない?」

 男は、笑った。
「ひぇひぇひぇ」とも、「けぇけぇけぇ」とも聞こえる、異様な笑いだった。
 ひとしきり笑った後、男はねっとりとこちらを見て、吐き捨てるように言う。

「なると思うかい?」

「ならないの?」

「ならないさ。当然だろう」

 はぁ。
 やっぱり駄目か。

 私は諦めと共に、いまだに倒れたままのチンピラさんたちを見回し、若干の嫌味を込めて言う。

「それにしても、こんなに大勢の手下をけしかけてくるなんて、フェアじゃないわね」

「俺らが、フェアな勝負をするようなタイプに見えるかい? それに、フェアだのなんだの言うなら、不意打ち上等のそっちのお姉さんも、フェアじゃないと思うけどね」

「それを言われると辛いわね」

 そこで、今まで黙っていたエリスが、私の前に出ながら、言う。

「お師匠様、この人たちのお相手は、私がします。先ほども言いましたが、この騒動は、全部私のせいですから」

 ふむ……
 まあ、エリスほどの実力があれば、たとえ二対一でも負けることはないだろう。

 そう思い、私は「分かったわ」と言うと、静観の構えを取る。すると今度は、これまで一言も発さなかったマッチョな弟が、今にもエリスに襲い掛からんばかりの兄に向かって口を開いた。

「なあ、兄貴。やっぱり、もうやめよう。昨日のことは、俺が悪かったんだ」

 それは、意外な言葉だった。
 マッチョな弟は、エリスの方に向き直り、小さく頭を下げ、言葉を続ける。

「……昨日は、すまなかった。俺は酒が入ると、あまり良くない酔い方をするタチでね。昨晩のことは、ハッキリとは覚えていないんだが、あんたをビビらせようとして、脅すような言い方をしたり、肩を掴んだりしたのは覚えてる。殴られるのも無理はない」

 強面で、大きな体に似合わぬ、神妙な態度だった。

 一瞬、こちらの油断を誘うために、わざと大人しくふるまっているのかと疑ったが、どうやらそういうわけでもないらしい。……なるほど、この人は、世の中に結構な割合でいる、『普段はまともだけど、酔っぱらうと粗暴になるタイプ』ってとこなのかしら。
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