二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第86話

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 とはいえ、今の結界は、そこまで広範囲のドームではないし、粉砕するためには、相当な破壊力の一撃が必要である。それこそ、超至近距離からの砲弾射撃に匹敵するレベルの攻撃でなければ、結界にヒビひとつ入れることはできないはずだ。

 まさか、生き残りのゴブリンか何かが、隠していた大砲で私たちを狙ったのかしら? そんなことを思いながら、気を失ったままの長い髪の女性をそっと地面に寝かせると、私は顔を上げ、私たちを攻撃して来た『敵』の正体を見極めようとする。

 そして、驚いた。

 たった今私たちを攻撃したのは、首から上がなくなった、ヒューマンゴブリンの体だったからだ。ヒューマンゴブリンの体は、まだまだ暴れたりないと言うように、両肩をぐるぐると大きく回している。

 信じられない。

 頭を失っても生きていられる生物なんて、この世に存在しない。
 ……少なくとも、私の知る限りは。

 アンデッドモンスターですら、頭を潰されれば、活動を停止するしかない。私は実際に、これまで数多くのアンデッドをこの拳で葬り去っている。それだけに、今の事態は、非常に不可解だ。

 私は困惑の視線をエリスに向け、尋ねる。

「エリス、どういうこと? ゴブリンの中には、頭がなくなっても死なないタイプがいるの?」

 エリスもまた、困惑の視線を私に返し、首を左右に振った。

「そ、そんなの、いるはずがありません。ゾンビやスケルトンでも、頭がなくなったら、動かなくなりますから。こんなの、初めてです……」

「そうよね。じゃあ、こいつはいったい……」

 その時。
 天井から、何かがボタボタと落ちてくる。

 それは、先程私が蹴飛ばした、ヒューマンゴブリンの頭の破片だった。破片は、うじゅるうじゅると、グロテスクに地面を這い、ヒューマンゴブリンの首の上まで戻ると、ゆっくりと融合し、なんと、奴の頭は元に戻ってしまった。

 ヒューマンゴブリンは、復活したばかりの口で、ニチャリとした粘着質の笑みを浮かべながら、言う。

「痛いなあ、酷いことするなあ。いくら私が不死身でも、痛覚はあるんですよ?」

 その異様な姿にやや圧倒されながらも、私はあえて強気に問いかけることにした。……こいつは、得体の知れない相手だ。内心の不安を悟られ、精神的に優位に立たせることは避けたい。

「不死身ねえ。ヒューマンゴブリンって、殺しても死なないわけ?」
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