二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第94話

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 そんなこんなで、私たちは道中、あちこちの冒険者ギルドに立ち寄って依頼をこなしながら、二ヶ月ほど旅を続けた。……そしてとうとう、人間たちの治める領域から遠く離れたところにあるエリスの故郷――『エルフの里』に到達したのである。

 エルフの里は、迷路のように広大な森林の奥深くにあり、エルフの手引きがない限り、普通の人間はまず立ち入ることができない。そのため、エルフの里がどんなところなのかは、人間の社会において、ほとんど明らかになっていない。

 だから私は、エルフの里に足を踏み入れ、心底驚いた。

 エルフたちの暮らす街並みが、私たち人間の町より、はるかに高度な技術で作られたものだったからだ。木造の家は一軒もなく、どの家も、不思議な光沢のあるコンクリートのような材質で作られ、非常に近代的である。

 それよりなにより驚いたのは、道路を行き交う不思議な乗り物だ。

 家と同じく、コンクリートのようなもので綺麗に舗装された大きな道路の上に、見慣れない馬車みたいな乗り物がいくつも走っている。……いや、『馬車みたいな』という表現は適切ではない。だって、馬はどこにも存在せず、人を乗せた荷台のような部分だけが、コロコロと勝手に車輪を転がして走っているのだから。

 私は困惑し、エリスの袖を引っ張りながら問いかける。

「エ、エリス……あれ何……? 荷台が勝手に転がってるんだけど……?」

 そんな私に対し、エリスはこともなげに言う。

「お師匠様、あれは荷台ではありません。自動車です」

「じどうしゃ……? なにそれ……?」

「簡単に言うと、馬のない馬車です。操縦者の魔力を動力にして、車輪が回転するようにできています」

「あっ、ふーん……へえ~……魔力で動いてるわけね……でも、方向転換はどうするの? 引っ張ってくれる馬がいないんじゃ、曲がったりできないじゃない」

「大丈夫ですよ。ほら、お師匠様、あの自動車を見てください。操縦席に座っている人が、左右に一本ずつ、レバーを握っていますよね。あれを引くことで、車輪の向きが変わり、任意の方向に曲がることができるんです」

 エリスはそう言って、右に左に、レバーを引くようなジェスチャーをした。
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