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第二部 獣人武闘祭
第250話
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「ねえ、あの時、なんで何も言わずにいなくなったの?」
私は、ずっと聞きたかったことを、尋ねた。
「だって、なっちゃんも、ラジアス君も、トレイボン君も、傷だらけの私を見て、凄く申し訳なさそうな顔、するんだもん。なんだか、別れを言うのも辛くって」
「それは、そうだよ。私たちが離れていなければ、アニーは大怪我しなくて済んだかもしれないんだから」
自分で言っていて、胸が締め付けられるようだった。
「でも、仕方ないことだよ。なっちゃんたちだって、遊んでたわけじゃないんだからさ。ね? 重荷に思うのは、やめてよ」
「アニー……」
「それに、今の仕事、すっごく楽しいんだ」
「今の仕事って、プロレスラーのこと?」
「うん。だから、あの時大怪我して、故郷――グランディアに帰ってきて、社長にスカウトされたのも、今にして思うと、運命だったのかなーって思う。強がりじゃないよ? 本当に、そう思ってるんだから」
「そっか……」
気がつくと、空になったアニーのグラスには、再びウィスキーが注がれていた。
私のグラスにも、同じものが。
バーのマスターが、気を利かせてくれたらしい。
私は、無言で他のグラスを磨き続けるマスターに軽く頭を下げると、ウィスキーを飲み込んだ。久方ぶりに飲む強いお酒だが、不思議なことに、とても甘く、温かい味がした。
「ね、なっちゃん」
アニーは、おかわりのウィスキーを少し多めに煽り、こちらを見る。
その頬は、酔いの為か、ほんのり朱に染まっていた。
「何?」
私も、ウィスキーを軽く飲み、聞く。
「私の家、近くなんだけど、来る?」
私は、再びウィスキーを唇に運んだ。
夜。酔った二人。そして、このタイミングでの、この言葉。これはもちろん、単純に『素敵なおうちを見せたいので来てちょうだい』――というわけではない。しばらく色事とは無縁の生活をしていた私だが、女心がまったく分からなくなるほど、野暮になったつもりはない。
アニーの目を見る。
私と同じく、二十代前半のアニーは、もう子供ではない。だが、今でも少女を思わせるようなあどけない瞳が、潤んでいた。自分の体温が、カッと熱くなるのを感じる。私は、ゴクリとつばを飲み込んだ。
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「ねえ、あの時、なんで何も言わずにいなくなったの?」
私は、ずっと聞きたかったことを、尋ねた。
「だって、なっちゃんも、ラジアス君も、トレイボン君も、傷だらけの私を見て、凄く申し訳なさそうな顔、するんだもん。なんだか、別れを言うのも辛くって」
「それは、そうだよ。私たちが離れていなければ、アニーは大怪我しなくて済んだかもしれないんだから」
自分で言っていて、胸が締め付けられるようだった。
「でも、仕方ないことだよ。なっちゃんたちだって、遊んでたわけじゃないんだからさ。ね? 重荷に思うのは、やめてよ」
「アニー……」
「それに、今の仕事、すっごく楽しいんだ」
「今の仕事って、プロレスラーのこと?」
「うん。だから、あの時大怪我して、故郷――グランディアに帰ってきて、社長にスカウトされたのも、今にして思うと、運命だったのかなーって思う。強がりじゃないよ? 本当に、そう思ってるんだから」
「そっか……」
気がつくと、空になったアニーのグラスには、再びウィスキーが注がれていた。
私のグラスにも、同じものが。
バーのマスターが、気を利かせてくれたらしい。
私は、無言で他のグラスを磨き続けるマスターに軽く頭を下げると、ウィスキーを飲み込んだ。久方ぶりに飲む強いお酒だが、不思議なことに、とても甘く、温かい味がした。
「ね、なっちゃん」
アニーは、おかわりのウィスキーを少し多めに煽り、こちらを見る。
その頬は、酔いの為か、ほんのり朱に染まっていた。
「何?」
私も、ウィスキーを軽く飲み、聞く。
「私の家、近くなんだけど、来る?」
私は、再びウィスキーを唇に運んだ。
夜。酔った二人。そして、このタイミングでの、この言葉。これはもちろん、単純に『素敵なおうちを見せたいので来てちょうだい』――というわけではない。しばらく色事とは無縁の生活をしていた私だが、女心がまったく分からなくなるほど、野暮になったつもりはない。
アニーの目を見る。
私と同じく、二十代前半のアニーは、もう子供ではない。だが、今でも少女を思わせるようなあどけない瞳が、潤んでいた。自分の体温が、カッと熱くなるのを感じる。私は、ゴクリとつばを飲み込んだ。
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