268 / 389
第二部 獣人武闘祭
第268話
しおりを挟む
タマラは、鼻で笑った。
「そーゆーの、なんていうか知ってる? 親バカっていうんだよ」
「タ、タマちゃん!」
ノエルが窘めるが、タマラの勢いは止まらない。
「ま、安心しなよ。最初は滅茶苦茶に壊しちゃおうかと思ってたけどさ。こうして美味しいケーキも奢ってもらったことだし、やさし~く可愛がって、怪我させないように倒してあげるから」
口の端から垂れる甘々コーヒー汁をひと舐めして、タマラは獰猛な笑みを浮かべた。
「タマちゃん! そういうことばっかり言ってると、ディーナさんに、嫌われちゃうよ!」
ノエルが珍しく、強い調子で言う。
それで、タマラの表情が一変した。
不安そうで、寂しそうな、子供の顔だ。
それを見て、ノエルは『しまった』と言うような表情になった。
「えっ、そうなの? ディーナ、あたしのこと、嫌いになった?」
「い、いや、そんなことは……」
確かに、傲慢で不遜な態度だったが、それで即嫌いになると言うほどのこともない。私は両手を振って大丈夫とアピールするが、タマラはテーブルをよじ登って、私の胸に飛び込んできた。
「ちょ、ちょっと、タマちゃん……」
「ごめんなさい、ごめんなさい、謝るから、嫌いにならないで。あたしのこと、嫌わないで……」
タマラは、半泣きだった。
私は、どうしていいか分からなくて、ノエルを見る。
ノエルは自らも身を乗り出すようにして、タマラを抱きしめた。
「大丈夫。大丈夫だよ、タマちゃん。ディーナさん、許してくれるって」
「本当? 本当に、許してくれる? ディーナ、もう怒ってない?」
すがるような瞳でそう問われ、私はタマラを落ち着かせるために、なるべく優しい手つきで彼女の頭を撫でながら、言った。
「え、ええ。そもそも、最初から別に怒ってないわ」
「なーんだ。ビックリしちゃった。ビックリしたら、またお腹すいたから、ケーキのおかわり頼んでもいい?」
「えっ、あっ、うん……いいけど……」
「わーい、やったー♪」
そう言ってはしゃぐと、タマラは再びケーキを注文する。
な……なんなの、この子。
感情の起伏が激しすぎる。
無邪気にはしゃぎながら新しいケーキを頬張るタマラの横で、ノエルがごめんなさいというように、私に頭を下げた。
「そーゆーの、なんていうか知ってる? 親バカっていうんだよ」
「タ、タマちゃん!」
ノエルが窘めるが、タマラの勢いは止まらない。
「ま、安心しなよ。最初は滅茶苦茶に壊しちゃおうかと思ってたけどさ。こうして美味しいケーキも奢ってもらったことだし、やさし~く可愛がって、怪我させないように倒してあげるから」
口の端から垂れる甘々コーヒー汁をひと舐めして、タマラは獰猛な笑みを浮かべた。
「タマちゃん! そういうことばっかり言ってると、ディーナさんに、嫌われちゃうよ!」
ノエルが珍しく、強い調子で言う。
それで、タマラの表情が一変した。
不安そうで、寂しそうな、子供の顔だ。
それを見て、ノエルは『しまった』と言うような表情になった。
「えっ、そうなの? ディーナ、あたしのこと、嫌いになった?」
「い、いや、そんなことは……」
確かに、傲慢で不遜な態度だったが、それで即嫌いになると言うほどのこともない。私は両手を振って大丈夫とアピールするが、タマラはテーブルをよじ登って、私の胸に飛び込んできた。
「ちょ、ちょっと、タマちゃん……」
「ごめんなさい、ごめんなさい、謝るから、嫌いにならないで。あたしのこと、嫌わないで……」
タマラは、半泣きだった。
私は、どうしていいか分からなくて、ノエルを見る。
ノエルは自らも身を乗り出すようにして、タマラを抱きしめた。
「大丈夫。大丈夫だよ、タマちゃん。ディーナさん、許してくれるって」
「本当? 本当に、許してくれる? ディーナ、もう怒ってない?」
すがるような瞳でそう問われ、私はタマラを落ち着かせるために、なるべく優しい手つきで彼女の頭を撫でながら、言った。
「え、ええ。そもそも、最初から別に怒ってないわ」
「なーんだ。ビックリしちゃった。ビックリしたら、またお腹すいたから、ケーキのおかわり頼んでもいい?」
「えっ、あっ、うん……いいけど……」
「わーい、やったー♪」
そう言ってはしゃぐと、タマラは再びケーキを注文する。
な……なんなの、この子。
感情の起伏が激しすぎる。
無邪気にはしゃぎながら新しいケーキを頬張るタマラの横で、ノエルがごめんなさいというように、私に頭を下げた。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる