[完結]18禁乙女ゲームのモブに転生したら逆ハーのフラグを折ってくれと頼まれた。了解ですが、溺愛は望んでません。

紅月

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シンシア王女とパトリック王子。

シンシア王女と話が出来たのは、彼女の魔力が安定する様になった、一週間後だった。

仮面のない、シンシア王女の素顔はイザベルよりも大人びた美貌の令嬢で、漆黒の髪にアクアマリンのような澄んだ水色の瞳をしていた。

まずは挨拶を、と頭を下げようとしたシルヴィーの手を、パトリックと共にサロンに入ってきたシンシア王女が握り締める。

「ロードライト伯爵令嬢様。貴女になんてお礼を言えば良いのか判らないほどです」

王宮で説明を聞く為の簡単なお茶会、と言われていたのにシルヴィーにシンシア王女は感謝の言葉だけでなく、見たこともない大きな魔石を渡そうとした。

「シンシア王女殿下……」

困惑するシルヴィーにウィリアムがよそ行きの笑顔で受け取れ、と言ってきた。

「シンシア王女から話を聞いたが、ロードライト伯爵令嬢、貴女の功績は一国の未来を守り、2国の友好を強くするものだ」

意味がわからない言葉にシルヴィーはさらに困惑した。

「ロードライト伯爵令嬢様、今までの事を隠さず話しますわ」

シンシア王女がシルヴィーの目を真っ直ぐ見つめ話し始めた。


長い間、バロス王国では原因不明の病のせいで多くの民が苦しんでいた。
解決策がない状況にバロス王は焦っていた所をラスティック王に付け込まれた様だ。

「父、バロス王はアレキサンド王国が病を流行らせ、薬を秘匿している、と囁かれ、怒り狂ってこの国に牙を向けたのです」

何があったのかは知らないが、誰かが傷付いたり命を落としたのだろう。
シルヴィーは無言でシンシア王女の話に耳を傾けていた。

「嘘に踊らされた父の計画は当然、頓挫しこの国に睨まれてしまいましたが、一縷の望みを持って私が此方に来ました」

なんとしてでも民を救う方法を見つけたかった、とシンシア王女は泣きそうな目でシルヴィーを見詰める。

「隠してはおりましたが、私も民と同じ病を患っていましたので、私の病を治せる薬やその力を持つものを見つければ民も助かる、と必死になって探しておりました」

まさか魔力の循環不全が原因だとは思わなかったようで、シンシアは此方では医療士や薬ばかり探していた。

「あの舞踏会には本当は出ないつもりでしたが、パトリック殿下が気晴らしも必要だ、と誘ってくださって……」

おそらくシンシア王女の身辺を探っていたラリマー宰相が彼女の本当の願いを知り、アレキサンド王国に被せられた濡れ衣を取るため、さり気なくパトリック殿下との時間を用意したのだろう。

だが国と国の在り方は善意だけでは成り立たない。おそらくこの後、バロスは多大なる贖罪を押し付けられることになる。
それでもバロス王は、民と王女の命を救う事を決めたのだろう。

「シンシア王女殿下が回復なされて本当に安堵しました」

シルヴィーは静かな微笑みを浮かべ、ゆったりとカーテシーをした。


パトリック視点

兄上は自分など足元にも及ばない程有能で、冷酷だ。

兄上はシンシア王女の真の願いを知り、シルヴィー嬢と引き合わせた。

シルヴィー嬢の魔力ならシンシア王女の願いを叶えることが出来るかもしれない、と。

その事には感謝しかないが、国の至宝と迄言われているシルヴィー嬢を動かした事で、バロス王はアレキサンド王国に多大なる借りが出来た。

兄上の視線の先には、ラスティック王国への報復がある。
バロス王国の事は、その報復の為の布石に過ぎない。

国と愛する人の未来を守る為、兄上は微笑みを浮かべながら策を巡らせ、ラスティック王の喉元に剣を突き付けようとしている。
僕にも出来るのだろうか?

国や愛するもの達のために微笑みながら智略を駆使し、剣を相手の喉元に突き付けることが。

「出来るかどうかじゃ無い。やらなければ何も守れない」

兄上の目がそう言っている気がする。
僕も王族として、いや1人の男として決断する時だ。

「シンシア、良かったね。これからは僕が貴女を支えて行きたいが、貴女は僕の手を取ってくれますか?」

シンシアに手を差し出して微笑んで見せる。

「パトリック殿下」

シンシアが頬を赤く染め、澄んだ水色の瞳で僕を見詰める。
これから君はきっと大変な立場に立つだろう。その時、僕が君を支えて行きたい。兄上には甘い、と言われるかもしれないけど、この気持ちは嘘じゃない。

「喜んで……」

僕の手に小さな手を重ねてくれるシンシアは本当に綺麗だ。
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