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美しさは罪ですね
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「エリンジウム様、どうなさいました?」
惚けた様に、うっとりした顔で生徒会室に入って来た王太子であるエリンジウムに側近候補のマロウが声を掛けた。
「……美しい光景を見た。銀髪の魔法使いが並木道の木に新入生の為に魔法を掛けている、まるで妖精が舞い降りた様な美しい光景を」
エリンジウムはまだ夢見心地なのか、冷たく冴え渡る美貌が微笑みのせいか優しげに見える。
身分だけで無く、豪奢な金髪に鋭い薄い蒼の瞳をしているせいか近寄りがたい存在だが、微笑む姿は年相応の顔に見える。
「銀髪の魔法使い?ああ、それでしたら今年度から魔法学の教師になった、ファルシオン大魔法使いの弟子のアリッサ嬢ですね」
紫の髪と目をした、宰相の息子であるマロウが、さらりとアリッサの名前を口にする。
「魔法使いの弟子?ならばそのアリッサ嬢は平民なのか」
魔法使いの塔に所属するもの達はかなりの割合で平民出である。
そのせいか、何故か気落ちした様な声のエリンジウムの後ろに立つ赤い髪の青年が静かに声を掛けた。
「いえ、アリッサ嬢はリスリム伯爵家の令嬢で、たしか次女なので魔法使いの塔に入り、ファルシオン大魔法使いの弟子になったと聞いております」
「本当か、モルセラ」
騎士団長令息で、エリンジウムの護衛も兼ねているモルセラがあっさりとアリッサの身分を明かした。
「伯爵家の令嬢……」
エリンジウムの目がキラリ、と光った。
何か毎回同じものはないのか?とファルシオンに聞かれ、お茶の支度をしながらアリッサは大した事ではないが気になることを口にした。
「頭に花を……。イカれてるのか、そいつ」
ファルシオンの辛辣な言葉にアリッサは何と言おうか悩んだ。
「毎回入学式の前に会い、ピンクの髪にピンクのデージーの花をいくつも指しているので、なんとなく覚えていたんです」
毎回必ず入学式の前に学園内で迷子になる生徒が居て、その生徒がいつも髪にデージーを挿しているのをやんわりと胸に挿した方がいいと言っていたのを思い出したのだ。
「そいつの名前知ってるか?」
「いえ、学年が違いましたので名前は知りませんが、ピンクの髪をしていたのですぐに分かるはずです」
珍しい色なので覚えている。
「ふーん。なら、今回はそいつに会わないようにしてみろ」
「会わないようにするも、私、学生では無いので入学式は関係ないですよ」
アリッサは学園に仕事で通ってはいるが学生として通っていないのだから、入学式なんて関係無い筈だ。
「ま、気休めだが、当日は講堂に近寄るなよ」
アリッサが淹れたお茶を機嫌良く飲むファルシオンの言葉に、アリッサは素直に頷いた。
惚けた様に、うっとりした顔で生徒会室に入って来た王太子であるエリンジウムに側近候補のマロウが声を掛けた。
「……美しい光景を見た。銀髪の魔法使いが並木道の木に新入生の為に魔法を掛けている、まるで妖精が舞い降りた様な美しい光景を」
エリンジウムはまだ夢見心地なのか、冷たく冴え渡る美貌が微笑みのせいか優しげに見える。
身分だけで無く、豪奢な金髪に鋭い薄い蒼の瞳をしているせいか近寄りがたい存在だが、微笑む姿は年相応の顔に見える。
「銀髪の魔法使い?ああ、それでしたら今年度から魔法学の教師になった、ファルシオン大魔法使いの弟子のアリッサ嬢ですね」
紫の髪と目をした、宰相の息子であるマロウが、さらりとアリッサの名前を口にする。
「魔法使いの弟子?ならばそのアリッサ嬢は平民なのか」
魔法使いの塔に所属するもの達はかなりの割合で平民出である。
そのせいか、何故か気落ちした様な声のエリンジウムの後ろに立つ赤い髪の青年が静かに声を掛けた。
「いえ、アリッサ嬢はリスリム伯爵家の令嬢で、たしか次女なので魔法使いの塔に入り、ファルシオン大魔法使いの弟子になったと聞いております」
「本当か、モルセラ」
騎士団長令息で、エリンジウムの護衛も兼ねているモルセラがあっさりとアリッサの身分を明かした。
「伯爵家の令嬢……」
エリンジウムの目がキラリ、と光った。
何か毎回同じものはないのか?とファルシオンに聞かれ、お茶の支度をしながらアリッサは大した事ではないが気になることを口にした。
「頭に花を……。イカれてるのか、そいつ」
ファルシオンの辛辣な言葉にアリッサは何と言おうか悩んだ。
「毎回入学式の前に会い、ピンクの髪にピンクのデージーの花をいくつも指しているので、なんとなく覚えていたんです」
毎回必ず入学式の前に学園内で迷子になる生徒が居て、その生徒がいつも髪にデージーを挿しているのをやんわりと胸に挿した方がいいと言っていたのを思い出したのだ。
「そいつの名前知ってるか?」
「いえ、学年が違いましたので名前は知りませんが、ピンクの髪をしていたのですぐに分かるはずです」
珍しい色なので覚えている。
「ふーん。なら、今回はそいつに会わないようにしてみろ」
「会わないようにするも、私、学生では無いので入学式は関係ないですよ」
アリッサは学園に仕事で通ってはいるが学生として通っていないのだから、入学式なんて関係無い筈だ。
「ま、気休めだが、当日は講堂に近寄るなよ」
アリッサが淹れたお茶を機嫌良く飲むファルシオンの言葉に、アリッサは素直に頷いた。
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