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ギリギリ邪魔はしなかった様だ
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突然の出来事に皆、驚いて呆気に取られていたが
「シルバー。如何して此処に?」
『此処は私の狩場よ』
折れた剣を鞘にしまい、アリッサはスタスタとドラゴンのもとに歩み寄った。
「邪魔をしてすみません」
『良いのよ、貴女なら』
銀色に輝く鱗が美しいドラゴンの出現に護衛官達は警戒したが、アリッサと親しげに話す姿に剣をしまい、ホッと息を吐いた。
「あぁ、違う方でしたか」
ミモザがしょんぼりしながら呟いた声を拾ったのか、シルバーと呼ばれたドラゴンが首を傾げ、アリッサを見る。
「ノースマルド公爵令嬢は……。私が説明するよりご本人から聞いてください」
アリッサはミモザをシルバーの前に案内をした。
「初めてお目にかかります。ミモザ・ノースマルドです」
ミモザは魔獣であるドラゴンに対して最上級のカーテシーで挨拶をした。
『違う方と言ってた様だが』
シルバーの問い掛けに、ミモザは簡潔に事情を説明すると、シルバーが機嫌良く笑った。
『驚いたこと。兄が昔助けた子が貴女とは、面白い偶然ね』
「兄?シルバー様のお兄様があの時の」
ミモザの若草色の瞳が涙で潤む。
『ええ。兄が面白い魔力を持った子供を助けた、と言っていたから。確かに貴女の魔力は稀有な力ね』
ミモザがキョトンとシルバーを見詰めると、ファルシオンが話に入って来た。
「俺が探している力か?」
『可能性は高いわ』
その言葉だけでファルシオンは納得し、ミモザに微笑む。
「ノースマルド公爵令嬢、シルバーの狩を邪魔してはいけないので、我々はそろそろ此処を離れましょう」
「あ、申し訳ありません。シルバー様、どうか兄上様に感謝をお伝えください。あの日から、ずっと助けて頂いたお礼を伝えたかったのです」
『伝えよう。心根の優しい娘になった、と』
シルバーからアリッサとファルシオンに話がある、と言われた為ミモザは折れたアリッサの剣先を拾い、エリンジウム達のもとに向かった。
「剣とはこんなに重いものなのですね」
アリッサの折れた剣の刃先を持ちながら、ミモザがほぅと息を吐く。
「剣とは守りたい人を守る為に持つものだ。ミモザ嬢、貴女の様な細い手には向かない」
ミモザから剣の刃先を受け取ろうとしたエリンジウムの手がミモザの指に触れた。
「エリンジウム殿下も、どれほど努力されていらっしゃるのか」
剣だこが出来た硬い手のひらを見ながら微笑んだ。
ミモザの言葉にエリンジウムの方が泣きそうになった。
王太子である為、完璧は当たり前。出来ない事がある方が悪い、とまで言われた事もあった。
そして周りのものは結果ばかり重視してエリンジウムの努力を見ていなかった。
「しかし、何故アリッサ嬢はあのドラゴンと親しいのでしょう?」
エリンジウムの揺れる気持ちに気が付かないマロウの疑問にサンキライがカラッと笑いながら答えた。
「ドラゴンが自分の子供や配下のワイバーンを助けた者を邪険にする訳ないだろ」
「えっ」
アリッサが有能過ぎて、エリンジウム達は言葉が出てこなかった。
『さて、そろそろ帰るわ』
「お気をつけて」
別れを告げたシルバーのもとにミモザが走り寄り手を振った。
「お会いできて光栄です」
ミモザに頷いて見せ、シルバーが羽を広げふわりと舞い上がった。
音もせず舞い降りた時と同じ様にあっさりと飛び去るシルバーの足元を見てアリッサは思わずあー、と声を上げていた。
「アリッサ様?」
「いえ、此処は本当に彼女の狩場なんだなぁと思っただけです」
ミモザがアリッサの視線の先に目を向けアリッサと同じくあー、と声を上げた。
さっきまでギャーギャー騒いでいたボス猿が助けを求める目でアリッサ達を見ているが、どうすることも出来ない。
「シルバー。如何して此処に?」
『此処は私の狩場よ』
折れた剣を鞘にしまい、アリッサはスタスタとドラゴンのもとに歩み寄った。
「邪魔をしてすみません」
『良いのよ、貴女なら』
銀色に輝く鱗が美しいドラゴンの出現に護衛官達は警戒したが、アリッサと親しげに話す姿に剣をしまい、ホッと息を吐いた。
「あぁ、違う方でしたか」
ミモザがしょんぼりしながら呟いた声を拾ったのか、シルバーと呼ばれたドラゴンが首を傾げ、アリッサを見る。
「ノースマルド公爵令嬢は……。私が説明するよりご本人から聞いてください」
アリッサはミモザをシルバーの前に案内をした。
「初めてお目にかかります。ミモザ・ノースマルドです」
ミモザは魔獣であるドラゴンに対して最上級のカーテシーで挨拶をした。
『違う方と言ってた様だが』
シルバーの問い掛けに、ミモザは簡潔に事情を説明すると、シルバーが機嫌良く笑った。
『驚いたこと。兄が昔助けた子が貴女とは、面白い偶然ね』
「兄?シルバー様のお兄様があの時の」
ミモザの若草色の瞳が涙で潤む。
『ええ。兄が面白い魔力を持った子供を助けた、と言っていたから。確かに貴女の魔力は稀有な力ね』
ミモザがキョトンとシルバーを見詰めると、ファルシオンが話に入って来た。
「俺が探している力か?」
『可能性は高いわ』
その言葉だけでファルシオンは納得し、ミモザに微笑む。
「ノースマルド公爵令嬢、シルバーの狩を邪魔してはいけないので、我々はそろそろ此処を離れましょう」
「あ、申し訳ありません。シルバー様、どうか兄上様に感謝をお伝えください。あの日から、ずっと助けて頂いたお礼を伝えたかったのです」
『伝えよう。心根の優しい娘になった、と』
シルバーからアリッサとファルシオンに話がある、と言われた為ミモザは折れたアリッサの剣先を拾い、エリンジウム達のもとに向かった。
「剣とはこんなに重いものなのですね」
アリッサの折れた剣の刃先を持ちながら、ミモザがほぅと息を吐く。
「剣とは守りたい人を守る為に持つものだ。ミモザ嬢、貴女の様な細い手には向かない」
ミモザから剣の刃先を受け取ろうとしたエリンジウムの手がミモザの指に触れた。
「エリンジウム殿下も、どれほど努力されていらっしゃるのか」
剣だこが出来た硬い手のひらを見ながら微笑んだ。
ミモザの言葉にエリンジウムの方が泣きそうになった。
王太子である為、完璧は当たり前。出来ない事がある方が悪い、とまで言われた事もあった。
そして周りのものは結果ばかり重視してエリンジウムの努力を見ていなかった。
「しかし、何故アリッサ嬢はあのドラゴンと親しいのでしょう?」
エリンジウムの揺れる気持ちに気が付かないマロウの疑問にサンキライがカラッと笑いながら答えた。
「ドラゴンが自分の子供や配下のワイバーンを助けた者を邪険にする訳ないだろ」
「えっ」
アリッサが有能過ぎて、エリンジウム達は言葉が出てこなかった。
『さて、そろそろ帰るわ』
「お気をつけて」
別れを告げたシルバーのもとにミモザが走り寄り手を振った。
「お会いできて光栄です」
ミモザに頷いて見せ、シルバーが羽を広げふわりと舞い上がった。
音もせず舞い降りた時と同じ様にあっさりと飛び去るシルバーの足元を見てアリッサは思わずあー、と声を上げていた。
「アリッサ様?」
「いえ、此処は本当に彼女の狩場なんだなぁと思っただけです」
ミモザがアリッサの視線の先に目を向けアリッサと同じくあー、と声を上げた。
さっきまでギャーギャー騒いでいたボス猿が助けを求める目でアリッサ達を見ているが、どうすることも出来ない。
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