37 / 41
[本編完結]2年後 男性陣の交流➕何処かで誰が
しおりを挟む
女性陣が久しぶりの交流を持っている頃、ファルシオン達も久しぶりの再会を果たしていた。
馴染みの店のドアベルがカランコロンと鳴り、ファルシオンが入って来た。
「おう、遅かったな」
サンキライが片手を上げ、ファルシオンに声を掛けた。
「悪いな」
半年ぶりに王都に戻ってきたとは思えないほど、2人の会話はいつも通りだった。
「依頼は終わったのか?」
ガウラも相変わらずの愛想無しで、ファルシオンは店主にコーヒーを目で頼み、2人が座る席についた。
「粗方は終わった」
ファルシオンが防音魔法を掛け、ゆっくりと2人を見る。
「で、かなり酷かったのか?」
「崩壊が始まる一歩手前の場所も幾つかあった」
ファルシオンの言葉にガウラの顔が蒼くなる。
それも当然だろう。何事も無いように見え、この世界が崩壊し掛けていたのだから。
「アリッサがほぼ修復したから、問題は無いが、な」
何かを言いかけてファルシオンがフッと冷たい笑みを浮かべた。
「アリッサの魔力はやはり桁違いか」
「当然だ。世界が認め7回も鍛錬をしてきた者が平凡な訳ない」
「そうだな。得難い人材だ」
サンキライ達はファルシオンの冷たい笑みには触れず、アリッサの能力を褒めた。
「と、言う事で俺達はやっと平凡な新婚生活ができるって事だ」
「平凡ね。まっ、ギルドの依頼は山になってるがね」
ギルドの幹部になったサンキライがニヤニヤ笑う。
「魔法省も手ぐすね引いて待ってるぞ」
魔法省ではなく魔法使いの塔に所属するようになったガウラが呆れ顔でサンキライを見た。
「俺に休暇はないのかよ」
ファルシオンの不平に、サンキライとガウラがケラケラ笑う。
「ねーな」
「万年人不足に文句言え」
「ったく。まぁ崩壊の元凶も無くなった事だし、気長に受けるよ」
ファルシオンの呟きにガウラは一瞬目を見開いたが、すぐにカップに視線を落とした。
「アリッサか?」
「ああ、余りの身勝手さに、お前なんか好きな所に行け、ってね」
あの冬のパーティ後、デージーは修道院預かりになっていたがエリンジウムルートに戻せとか、私はヒロインなのだからハッピーエンドにしろ、と修道院のもの達に迷惑ばかり掛けていたので、切れたアリッサが時間迷宮に放り込んだのだ。
「何処にも行けないだろうに」
「同情するのか?」
「まさか。もう、俺達には関係の無い話だ」
サンキライも頷き、3人は別の話題に花を咲かせ、のんびりとした時間を過ごした。
「ねぇ此処、何処?どうやったら出られるの」
誰かが、何処でも無い場所で泣きながら歩いているが、もう誰も思い出しもしない。
ただ、何処でも無い場所に、ジャラジャラと鎖が打つかる音だけが響いていた。
本編完結
モルセラが話していたアリッサ達の奮闘記を載せて完全完結にしたいと思ってます。
馴染みの店のドアベルがカランコロンと鳴り、ファルシオンが入って来た。
「おう、遅かったな」
サンキライが片手を上げ、ファルシオンに声を掛けた。
「悪いな」
半年ぶりに王都に戻ってきたとは思えないほど、2人の会話はいつも通りだった。
「依頼は終わったのか?」
ガウラも相変わらずの愛想無しで、ファルシオンは店主にコーヒーを目で頼み、2人が座る席についた。
「粗方は終わった」
ファルシオンが防音魔法を掛け、ゆっくりと2人を見る。
「で、かなり酷かったのか?」
「崩壊が始まる一歩手前の場所も幾つかあった」
ファルシオンの言葉にガウラの顔が蒼くなる。
それも当然だろう。何事も無いように見え、この世界が崩壊し掛けていたのだから。
「アリッサがほぼ修復したから、問題は無いが、な」
何かを言いかけてファルシオンがフッと冷たい笑みを浮かべた。
「アリッサの魔力はやはり桁違いか」
「当然だ。世界が認め7回も鍛錬をしてきた者が平凡な訳ない」
「そうだな。得難い人材だ」
サンキライ達はファルシオンの冷たい笑みには触れず、アリッサの能力を褒めた。
「と、言う事で俺達はやっと平凡な新婚生活ができるって事だ」
「平凡ね。まっ、ギルドの依頼は山になってるがね」
ギルドの幹部になったサンキライがニヤニヤ笑う。
「魔法省も手ぐすね引いて待ってるぞ」
魔法省ではなく魔法使いの塔に所属するようになったガウラが呆れ顔でサンキライを見た。
「俺に休暇はないのかよ」
ファルシオンの不平に、サンキライとガウラがケラケラ笑う。
「ねーな」
「万年人不足に文句言え」
「ったく。まぁ崩壊の元凶も無くなった事だし、気長に受けるよ」
ファルシオンの呟きにガウラは一瞬目を見開いたが、すぐにカップに視線を落とした。
「アリッサか?」
「ああ、余りの身勝手さに、お前なんか好きな所に行け、ってね」
あの冬のパーティ後、デージーは修道院預かりになっていたがエリンジウムルートに戻せとか、私はヒロインなのだからハッピーエンドにしろ、と修道院のもの達に迷惑ばかり掛けていたので、切れたアリッサが時間迷宮に放り込んだのだ。
「何処にも行けないだろうに」
「同情するのか?」
「まさか。もう、俺達には関係の無い話だ」
サンキライも頷き、3人は別の話題に花を咲かせ、のんびりとした時間を過ごした。
「ねぇ此処、何処?どうやったら出られるの」
誰かが、何処でも無い場所で泣きながら歩いているが、もう誰も思い出しもしない。
ただ、何処でも無い場所に、ジャラジャラと鎖が打つかる音だけが響いていた。
本編完結
モルセラが話していたアリッサ達の奮闘記を載せて完全完結にしたいと思ってます。
269
あなたにおすすめの小説
辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。
コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。
だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。
それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。
ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。
これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。
【完結】大好きな婚約者の運命の“赤い糸”の相手は、どうやら私ではないみたいです
Rohdea
恋愛
子爵令嬢のフランシスカには、10歳の時から婚約している大好きな婚約者のマーカスがいる。
マーカスは公爵家の令息で、子爵令嬢の自分とは何もかも釣り合っていなかったけれど、
とある理由により結ばれた婚約だった。
それでもマーカスは優しい人で婚約者として仲良く過ごして来た。
だけど、最近のフランシスカは不安を抱えていた。
その原因はマーカスが会長を務める生徒会に新たに加わった、元平民の男爵令嬢。
彼女の存在がフランシスカの胸をざわつかせていた。
そんなある日、酷いめまいを起こし倒れたフランシスカ。
目覚めた時、自分の前世とこの世界の事を思い出す。
──ここは乙女ゲームの世界で、大好きな婚約者は攻略対象者だった……
そして、それとは別にフランシスカは何故かこの時から、ゲームの設定にもあった、
運命で結ばれる男女の中で繋がっているという“赤い糸”が見えるようになっていた。
しかし、フランシスカとマーカスの赤い糸は……
婚約者を妹に奪われた私は、呪われた忌子王子様の元へ
秋月乃衣
恋愛
幼くして母を亡くしたティアリーゼの元に、父公爵が新しい家族を連れて来た。
自分とは二つしか歳の変わらない異母妹、マリータの存在を知り父には別の家庭があったのだと悟る。
忙しい公爵の代わりに屋敷を任された継母ミランダに疎まれ、ティアリーゼは日々疎外感を感じるようになっていった。
ある日ティアリーゼの婚約者である王子と、マリータが思い合っているのではと言った噂が広まってしまう。そして国から王子の婚約者を妹に変更すると告げられ……。
※他サイト様でも掲載しております。
なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました
ねむ太朗
恋愛
伯爵令嬢のリリアーナは、小さい頃から、妹のエルーシアにネックレスや髪飾りなどのお気に入りの物を奪われてきた。
とうとう、婚約者のルシアンまでも妹に奪われてしまい……
虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても
千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。
醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました
つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。
けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。
会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……
【完結】醜い豚公爵様と結婚することになりましたが愛してくれるので幸せです
なか
恋愛
自分の事だけが大好きで
極度のナルシストの婚約者のレオナード様に告げた
「婚約破棄してください」と
その結果お父様には伯爵家を勘当され
更には他貴族達にも私のあらぬ噂をレオナード様に広めまれた
だけど、唯一
私に手を差し伸べてくれたのは
醜い豚公爵と陰で馬鹿にされていたウィリアム様だけだ
彼の元へと嫁ぐ事になり馬鹿にされたが
みんなは知らないだけ
彼の魅力にね
【完結】祈りの果て、君を想う
とっくり
恋愛
華やかな美貌を持つ妹・ミレイア。
静かに咲く野花のような癒しを湛える姉・リリエル。
騎士の青年・ラズは、二人の姉妹の間で揺れる心に気づかぬまま、運命の選択を迫られていく。
そして、修道院に身を置いたリリエルの前に現れたのは、
ひょうひょうとした元軍人の旅人──実は王族の血を引く男・ユリアン。
愛するとは、選ばれることか。選ぶことか。
沈黙と祈りの果てに、誰の想いが届くのか。
運命ではなく、想いで人を愛するとき。
その愛は、誰のもとに届くのか──
※短編から長編に変更いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる