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黒と白の二人の世界
新築
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「彩乃たちは今日はどうだった」
「今日は市場とかに行った、行きました」
ジジの口調が崩れてきた。うんうん、彩乃は仲良くなるのが速くていいね。
「ため口でいいよ。市場はあまり行ったことないね」
確か異世界生活初日に日用品を買った時くらいだ。
「今日は予定していたものと食材を買ったよ。この前来たときはなかった魚があったわ」
港の市場が使えないため魚はギルドがある街まで運び込まれているのだ。俺もそのことは今日の午前中、ジルベスターからの依頼を受けているときに知った。
「ああ、港では売ることが出来ないからって領主が言ってたね。ジジは料理できる?」
「…すみません。やったことないです」
ジジはつい此間まで孤児院にいたのだ。料理経験がないのは仕方ない。
「謝ることではないよ」
「そういえば、役割分担とかした方が良いかしら?掃除とか誰もやらなくなったら困るし」
「掃除なら私出来るよ」
役割分担か、どうなんだろう。シェアハウスで役割分担するとどういう感じになるのか知らない。考えられるのは自分の役割を十分に果たせなく他のメンバーに怒られる姿。
「そういうのはローテーション式でいいじゃないかな?ジジも料理が出来た方が将来役に立つだろうし責任の押し付け合いみたいになりそうだから」
「この三人なら助け合いながら行けそうね」
ふふ、と小さく笑った。彩乃は俺が思っている以上に楽しみにしているらしい。
結局、役割は決めることはなかった。基本みんなで協力して家事をする。俺も高校生レベルをカーストしてるので基本的な家事は問題ないはずだ。
夕食を食べ終えるとジジと別れ宿に向かおうとする。
「レイ、肝心な家だけどいつ建てよっか?」
「できれば人に見られないように建てたいよね」
「今夜とか?」
夜中に外を出歩く人はこの世界にそうはいない。みな、日が昇ったら起き日が沈んだら仕事を終え家で過ごす。古典的な生活スタイルだ。
「そうだね。今夜建てに行こう」
ついにこの時がやってきた。俺たちは今、領主に買ってもらった土地に来ている。外は真っ暗で誰もいない。ポイント決済で家を買い白黒に渦巻く光が出現する。
白黒の光に魔力が流れていき土が浮かび上がると家の形をとっていく。
「家って魔法で作るのか!魔力がごっそり取られる」
「レイ大丈夫なの?服着替える?」
「いや、大丈夫」
確かに今は黒い服を着ている。
白い服にすれば魔力回復をしながら家を建てられるが家一軒を建てるほどの魔力くらいはあるはずた。
黒い端末が魔力消費を効率化してくれるため消費魔力は最小限になっているはずだ。レベルが上がったことでその精度も上がっているかもしれない。
「どのくらいで出来るのかな?家の形にはなってるけど」
現在、俺の魔力は家全体に魔力線を引いている。家全体の補強にするためだろう。魔法と言ってもポイントで買った家を俺の魔力で建てているだけで黒い端末が詳しいことは処理している。ハードウェアで処理したほうが魔力効率もいいし手元が狂うこともないので便利だが闇雲に魔力を取られるだけというのはつまらないものだ。
五分くらいすると上空にあった白黒の光はすぅと消えていく。
「終わったの?」
「……終わったね。中見て行く?」
少し考えたあとは彩乃は首を左右に振る。
「中はジジと三人で一緒にみましょう」
「うんそれがいいかも。内装見学は明日にしようか。それにしても…」
なんというか、この世界の家ではないな。現代社会の日本で見られるような一軒家だ。外装までは指定していなかったのが家だけみればいい感じだと思う。
ただ、周囲の家と合わないと言うだけで。
「そういえば、領主が家を建てて港の方も落ち着いてきたら家に来たいらしい」
「来たいって私たちの家に?今建てた家に?」
「そうみたい。土地を買ってもらってるし気になるのかなって。それでアンデリカの誕生日前後に招待するのはどうかな?ちょうど二週間後が誕生日だって」
アンデリカの誕生日プレゼントを用意したいが何が好きなのかわからない。
「二週間後…なにかプレゼントを用意した方が良さそうね。泊まるのかしら?」
「どうだろう?気に入ってくれたらもしかしたら泊まるかもしれないけど領主だからね」
長居はできないと思う。家を案内して料理を振舞うくらいで十分だろう。
「客室用の寝具はあるけどそれ以外はなにも準備できないわ」
「俺の机を作ってもらってるから取りに行くときに客室用のテーブルと椅子も買っておくよ」
一週間あれば出来ると言っていたので間に合うはずだ。客室に置くものを書いたメモで確認しておく必要があるかもしれない。
どんな家なのになったのか、先立つ気持ちを抑えて宿に戻るとすぐに寝る。
翌日、ジジを連れて昨夜建てた家に向かった。なんとか自分の家が建てられた喜びを伝えたくてジジとたくさん話す。
念願の我が家がついに完成したのだ。まだまだ問題は残っているが安定した生活に一歩近づいたといえる。嬉しい。
「今日からその家に住むってこと?」
ジジは家具は買ったが家の事を全然知らない。家の内装にジジの意見はまったく反映されていないのだ。
「ジジは宿いつまで取ってる?まだ買わないといけないものもあるから今日から住む必要はないよ」
「いつでも大丈夫だよ」
昨日彩乃と帰る途中、話していたら調理器具がないことを知った。食材や食器は買ったのに調理できないのは馬鹿げている。これは早急に対策が必要だ。
「?なんか人が集まってない?」
「あそこは…」
あそこが俺たちの家だ。
「おい、なんだよこれは」
「こんな家昨日まであったかしら」
「いえ、なかったわよ。それに家なんてそう簡単に建てられるものでもないわ」
「だが、こうして出来てるんだぞ」
「ここはもともと誰の土地でもなかったでしょ?一体誰の家だっていうんだい」
「お前、ちょっと中見て来いよ」
「はあ、なんで俺に行かせようとすんだ!自分で行ってこい」
まぁ、五分くらいで建てた家だし知らないよな。うん、正直にいえば、想像はしてたよ。
「レイ、どうする?」
「このままにしておいて荒らされるのは困るよね」
「そ、そうね。ジジも行くわよ」
神妙な表情で頷いてジジを連れて歩き出す。俺もそれに続いた。
「おはようございます」
「ん、ああ、おはよう。見てくれ、知らないうちにこんな家が出来てたんだが嬢ちゃんたち何か知ってるかい」
最初から自分たちの家です、とは言えない雰囲気になりつつある。
「えっと…レイ」
ここはかっこいいところを見せねばなるまい。
「驚かせて悪いな。ここは俺たちの家だ。俺はレイ、彼女は彩乃でその隣がジジ」
「お前さんたちの家?嘘は言っちゃいけねえぞ。ここの土地はいくらすると思ってんだ。それに昨日までなかった家をいつ作った?」
「そうだぜ。ここは売地だったはずだ。土地の契約書は持ってるのか?」
「そうね、家を買うにはちょっと若すぎるんじゃないかしら」
言いたい放題だな。ご近所付き合い、後先が不安です。
「これが証拠だ」
アイテム袋から領主の名で著名されている土地の契約書を取り出し皆に見せる。
「おいこれ、領主様の名前じゃないか!?」
「本当だ。領主様の名前が書かれてるぞ」
「どういうことだ?」
どういうことでしょう?タネも仕掛けもありません。
「領主から下賜された土地に家を建てたわけだが…何か問題でも?」
「もしかしてあんたが冒険者のレイ君?黒い服の男に白い服の女の子冒険者って言ったら、ここ最近ギルドで噂になってる子だろ」
「ああ、あのゴブリンキングの」
「だが、そっちの小さいのは見たことがないな」
結局皆俺たちのことを知っているらしい。ジジのことを知らないのは無理もないが紹介した方がいいのか?そのうち知ることになるしいいか。
「ここは俺たちの土地で俺たちの家だ。もう文句はないだろ?」
「あ、ああ。騒いで悪かったな」
「でも、あんたたちここに三人で住むのかい?」
「そうだけど?」
何か問題が?まあ、年頃だしな。俺に限ってはないと思うが絶対なんて存在しない。
野次馬を追い返すと俺たちは中に入るための魔力登録をする。魔力は鍵の役割にもなっているらしい。魔力線が張り巡らされた家だからできる芸当だろうか。
「そうだジジ。この家は土足厳禁だからこれからはここで靴を脱ぐようにして」
「うん」
周りをキョロキョロ見ていたジジだが、声を掛ければちゃんと返事をしてくれる。
この世界は家の中でも靴を履いているらしいが日本人の感覚からすると靴のままというのは違和感があり彩乃と決めてスリッパを用意することに決めた。
「ジジ、これに履き替えて。レイはこっちね」
彩乃のポイントで買ったスリッパをアイテム袋から取り出すと渡してくれる。礼を言ってそれに履き替える。
「玄関になにか置きたいね。このままじゃ寂しい」
「確かにそうね。この廊下は長いものね」
玄関の横にはベランダがある。そのため玄関とリビングには距離があるのだ。
また、外の汚れをリビングの方に持ち込まない対策や生活臭を玄関に運ばない工夫にもなっているので玄関の位置は少し不便だが変えなかった。
廊下の横は棚になっていて何か収納することもできる。収納するものはないが、あると便利。それが棚というヤツなのだ。
「ジジ、ここが階段で上の部屋の一番奥がジジの部屋になってるわ。今日からはそこで寝てね。それからこっちがお風呂、使い方はまた説明するね。それからそれから――」
ジジに説明しながら部屋を回っていく。リビングダイニングには大きな窓ガラスがあり明るかった。夜は光が漏れないようにシャッターかカーテンを付けた方が良いかもしれない。
「一応、壁も付いてるけど外から見えないように対策は必要だね」
「そうね、でもこんなに大きいとカーテンもないんじゃないかしら」
リビング用の大きいカーテンは売っていないか。サイズを測って作ってもらうことにしよう。
「買った家具を置いていくよ。ジジは彩乃と一緒に食器とかを仕舞ってくれる?」
「うん、わかった」
それぞれ役割分担をして家具を取り付けていく。俺はダイニングになっている場所にテーブルと椅子を置いていき客室にもベッドを置いていく。
「こっちは終わったわ。二階に行きましょうか」
「そうだね。二階の部屋は鍵付きだからもう一度魔力登録をしてもらうよ」
自室は各自自分の魔力を登録する鍵付きの部屋となっている。セキュリティ対策だ。各々魔力登録を済ませるとドアを開けベッドを出していく。
「ジジはベッドどこに置く?」
「ここら辺がいいかな?」
「わかった。あとはテーブルとタンスの位置も考えておいて、あとから動かすこともできるから取り敢えずでいいよ」
三人分のベッドとタンス、テーブルや椅子を置いていき今日からでもここに住める最低限のものは整いつつある。
「それじゃ、いつから住む?ジジは宿どのくらい予約してるの?」
「特に決まってないよ。料金は一日ごとに払ってるから」
「それじゃ今日からここで寝ればいいんじゃないかしら?私たちもそうしましょうよ」
彩乃が言うなら、と今日からここに住み始めることになった。
新築生活の始まりである。
「今日は市場とかに行った、行きました」
ジジの口調が崩れてきた。うんうん、彩乃は仲良くなるのが速くていいね。
「ため口でいいよ。市場はあまり行ったことないね」
確か異世界生活初日に日用品を買った時くらいだ。
「今日は予定していたものと食材を買ったよ。この前来たときはなかった魚があったわ」
港の市場が使えないため魚はギルドがある街まで運び込まれているのだ。俺もそのことは今日の午前中、ジルベスターからの依頼を受けているときに知った。
「ああ、港では売ることが出来ないからって領主が言ってたね。ジジは料理できる?」
「…すみません。やったことないです」
ジジはつい此間まで孤児院にいたのだ。料理経験がないのは仕方ない。
「謝ることではないよ」
「そういえば、役割分担とかした方が良いかしら?掃除とか誰もやらなくなったら困るし」
「掃除なら私出来るよ」
役割分担か、どうなんだろう。シェアハウスで役割分担するとどういう感じになるのか知らない。考えられるのは自分の役割を十分に果たせなく他のメンバーに怒られる姿。
「そういうのはローテーション式でいいじゃないかな?ジジも料理が出来た方が将来役に立つだろうし責任の押し付け合いみたいになりそうだから」
「この三人なら助け合いながら行けそうね」
ふふ、と小さく笑った。彩乃は俺が思っている以上に楽しみにしているらしい。
結局、役割は決めることはなかった。基本みんなで協力して家事をする。俺も高校生レベルをカーストしてるので基本的な家事は問題ないはずだ。
夕食を食べ終えるとジジと別れ宿に向かおうとする。
「レイ、肝心な家だけどいつ建てよっか?」
「できれば人に見られないように建てたいよね」
「今夜とか?」
夜中に外を出歩く人はこの世界にそうはいない。みな、日が昇ったら起き日が沈んだら仕事を終え家で過ごす。古典的な生活スタイルだ。
「そうだね。今夜建てに行こう」
ついにこの時がやってきた。俺たちは今、領主に買ってもらった土地に来ている。外は真っ暗で誰もいない。ポイント決済で家を買い白黒に渦巻く光が出現する。
白黒の光に魔力が流れていき土が浮かび上がると家の形をとっていく。
「家って魔法で作るのか!魔力がごっそり取られる」
「レイ大丈夫なの?服着替える?」
「いや、大丈夫」
確かに今は黒い服を着ている。
白い服にすれば魔力回復をしながら家を建てられるが家一軒を建てるほどの魔力くらいはあるはずた。
黒い端末が魔力消費を効率化してくれるため消費魔力は最小限になっているはずだ。レベルが上がったことでその精度も上がっているかもしれない。
「どのくらいで出来るのかな?家の形にはなってるけど」
現在、俺の魔力は家全体に魔力線を引いている。家全体の補強にするためだろう。魔法と言ってもポイントで買った家を俺の魔力で建てているだけで黒い端末が詳しいことは処理している。ハードウェアで処理したほうが魔力効率もいいし手元が狂うこともないので便利だが闇雲に魔力を取られるだけというのはつまらないものだ。
五分くらいすると上空にあった白黒の光はすぅと消えていく。
「終わったの?」
「……終わったね。中見て行く?」
少し考えたあとは彩乃は首を左右に振る。
「中はジジと三人で一緒にみましょう」
「うんそれがいいかも。内装見学は明日にしようか。それにしても…」
なんというか、この世界の家ではないな。現代社会の日本で見られるような一軒家だ。外装までは指定していなかったのが家だけみればいい感じだと思う。
ただ、周囲の家と合わないと言うだけで。
「そういえば、領主が家を建てて港の方も落ち着いてきたら家に来たいらしい」
「来たいって私たちの家に?今建てた家に?」
「そうみたい。土地を買ってもらってるし気になるのかなって。それでアンデリカの誕生日前後に招待するのはどうかな?ちょうど二週間後が誕生日だって」
アンデリカの誕生日プレゼントを用意したいが何が好きなのかわからない。
「二週間後…なにかプレゼントを用意した方が良さそうね。泊まるのかしら?」
「どうだろう?気に入ってくれたらもしかしたら泊まるかもしれないけど領主だからね」
長居はできないと思う。家を案内して料理を振舞うくらいで十分だろう。
「客室用の寝具はあるけどそれ以外はなにも準備できないわ」
「俺の机を作ってもらってるから取りに行くときに客室用のテーブルと椅子も買っておくよ」
一週間あれば出来ると言っていたので間に合うはずだ。客室に置くものを書いたメモで確認しておく必要があるかもしれない。
どんな家なのになったのか、先立つ気持ちを抑えて宿に戻るとすぐに寝る。
翌日、ジジを連れて昨夜建てた家に向かった。なんとか自分の家が建てられた喜びを伝えたくてジジとたくさん話す。
念願の我が家がついに完成したのだ。まだまだ問題は残っているが安定した生活に一歩近づいたといえる。嬉しい。
「今日からその家に住むってこと?」
ジジは家具は買ったが家の事を全然知らない。家の内装にジジの意見はまったく反映されていないのだ。
「ジジは宿いつまで取ってる?まだ買わないといけないものもあるから今日から住む必要はないよ」
「いつでも大丈夫だよ」
昨日彩乃と帰る途中、話していたら調理器具がないことを知った。食材や食器は買ったのに調理できないのは馬鹿げている。これは早急に対策が必要だ。
「?なんか人が集まってない?」
「あそこは…」
あそこが俺たちの家だ。
「おい、なんだよこれは」
「こんな家昨日まであったかしら」
「いえ、なかったわよ。それに家なんてそう簡単に建てられるものでもないわ」
「だが、こうして出来てるんだぞ」
「ここはもともと誰の土地でもなかったでしょ?一体誰の家だっていうんだい」
「お前、ちょっと中見て来いよ」
「はあ、なんで俺に行かせようとすんだ!自分で行ってこい」
まぁ、五分くらいで建てた家だし知らないよな。うん、正直にいえば、想像はしてたよ。
「レイ、どうする?」
「このままにしておいて荒らされるのは困るよね」
「そ、そうね。ジジも行くわよ」
神妙な表情で頷いてジジを連れて歩き出す。俺もそれに続いた。
「おはようございます」
「ん、ああ、おはよう。見てくれ、知らないうちにこんな家が出来てたんだが嬢ちゃんたち何か知ってるかい」
最初から自分たちの家です、とは言えない雰囲気になりつつある。
「えっと…レイ」
ここはかっこいいところを見せねばなるまい。
「驚かせて悪いな。ここは俺たちの家だ。俺はレイ、彼女は彩乃でその隣がジジ」
「お前さんたちの家?嘘は言っちゃいけねえぞ。ここの土地はいくらすると思ってんだ。それに昨日までなかった家をいつ作った?」
「そうだぜ。ここは売地だったはずだ。土地の契約書は持ってるのか?」
「そうね、家を買うにはちょっと若すぎるんじゃないかしら」
言いたい放題だな。ご近所付き合い、後先が不安です。
「これが証拠だ」
アイテム袋から領主の名で著名されている土地の契約書を取り出し皆に見せる。
「おいこれ、領主様の名前じゃないか!?」
「本当だ。領主様の名前が書かれてるぞ」
「どういうことだ?」
どういうことでしょう?タネも仕掛けもありません。
「領主から下賜された土地に家を建てたわけだが…何か問題でも?」
「もしかしてあんたが冒険者のレイ君?黒い服の男に白い服の女の子冒険者って言ったら、ここ最近ギルドで噂になってる子だろ」
「ああ、あのゴブリンキングの」
「だが、そっちの小さいのは見たことがないな」
結局皆俺たちのことを知っているらしい。ジジのことを知らないのは無理もないが紹介した方がいいのか?そのうち知ることになるしいいか。
「ここは俺たちの土地で俺たちの家だ。もう文句はないだろ?」
「あ、ああ。騒いで悪かったな」
「でも、あんたたちここに三人で住むのかい?」
「そうだけど?」
何か問題が?まあ、年頃だしな。俺に限ってはないと思うが絶対なんて存在しない。
野次馬を追い返すと俺たちは中に入るための魔力登録をする。魔力は鍵の役割にもなっているらしい。魔力線が張り巡らされた家だからできる芸当だろうか。
「そうだジジ。この家は土足厳禁だからこれからはここで靴を脱ぐようにして」
「うん」
周りをキョロキョロ見ていたジジだが、声を掛ければちゃんと返事をしてくれる。
この世界は家の中でも靴を履いているらしいが日本人の感覚からすると靴のままというのは違和感があり彩乃と決めてスリッパを用意することに決めた。
「ジジ、これに履き替えて。レイはこっちね」
彩乃のポイントで買ったスリッパをアイテム袋から取り出すと渡してくれる。礼を言ってそれに履き替える。
「玄関になにか置きたいね。このままじゃ寂しい」
「確かにそうね。この廊下は長いものね」
玄関の横にはベランダがある。そのため玄関とリビングには距離があるのだ。
また、外の汚れをリビングの方に持ち込まない対策や生活臭を玄関に運ばない工夫にもなっているので玄関の位置は少し不便だが変えなかった。
廊下の横は棚になっていて何か収納することもできる。収納するものはないが、あると便利。それが棚というヤツなのだ。
「ジジ、ここが階段で上の部屋の一番奥がジジの部屋になってるわ。今日からはそこで寝てね。それからこっちがお風呂、使い方はまた説明するね。それからそれから――」
ジジに説明しながら部屋を回っていく。リビングダイニングには大きな窓ガラスがあり明るかった。夜は光が漏れないようにシャッターかカーテンを付けた方が良いかもしれない。
「一応、壁も付いてるけど外から見えないように対策は必要だね」
「そうね、でもこんなに大きいとカーテンもないんじゃないかしら」
リビング用の大きいカーテンは売っていないか。サイズを測って作ってもらうことにしよう。
「買った家具を置いていくよ。ジジは彩乃と一緒に食器とかを仕舞ってくれる?」
「うん、わかった」
それぞれ役割分担をして家具を取り付けていく。俺はダイニングになっている場所にテーブルと椅子を置いていき客室にもベッドを置いていく。
「こっちは終わったわ。二階に行きましょうか」
「そうだね。二階の部屋は鍵付きだからもう一度魔力登録をしてもらうよ」
自室は各自自分の魔力を登録する鍵付きの部屋となっている。セキュリティ対策だ。各々魔力登録を済ませるとドアを開けベッドを出していく。
「ジジはベッドどこに置く?」
「ここら辺がいいかな?」
「わかった。あとはテーブルとタンスの位置も考えておいて、あとから動かすこともできるから取り敢えずでいいよ」
三人分のベッドとタンス、テーブルや椅子を置いていき今日からでもここに住める最低限のものは整いつつある。
「それじゃ、いつから住む?ジジは宿どのくらい予約してるの?」
「特に決まってないよ。料金は一日ごとに払ってるから」
「それじゃ今日からここで寝ればいいんじゃないかしら?私たちもそうしましょうよ」
彩乃が言うなら、と今日からここに住み始めることになった。
新築生活の始まりである。
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