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1.異世界人 山森真人
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「真人、この食べ物を作ったお店を後で教えてくれないか。レシピを教えて貰って城のシェフに作ってもらおう」
いつの間にか完食したフィリップ王子がナフキンで口を拭いながら真人様に話しかけた。
先程は毒味やら食中毒やらを心配していた訳だが、幼い頃からあらゆる毒に触れざるをえなかった彼には毒の耐性もついているため、多少の毒や食材の傷みくらいで体調を崩すような体ではない。
……が、それでもルールは守ってもらわなければ、フィリップ王子の専属侍女である私の責任となってしまう。
「いや、やめた方がいいぜ。ここのシェフのことだから、どうせ上品な料理にアレンジされちまうだろ?」
確かに、味は美味しいのだが、溢れんばかりにのせられたチーズはお腹に満腹感をもたらす。
そのたっぷりのチーズがこの料理の美味しいところなのだが、栄養や質を重んじる城のシェフならば、王族向けに改良されるのは間違いないだろう。
「そうか……ならば、その店から直接取り寄せるとしよう。えっと……ピザと言ったか?」
その言葉を聞き、真人様はニヤリと悪巧みのある笑みを浮かべた。
「突然だがここで問題だ! フィリップ、今から俺が出す問いに素早く答えてくれ!」
「あ、ああ! 分かった‼」
突然始まった真人様の問題に、フィリップ王子はキリッと真剣な表情になり身構えた。
「じゃあ、まずはピザって10回言ってみ?」
「ピザ? さっき食べたヤツの名前をか? ピザ、ピザ、ピザ――」
「あー違う違う! もっと早くだ! 連続で! もっかい最初から10回! はい!!」
「ピ……ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ!」
「じゃあここは!?」
「ピザ‼ なっ……ピザだと!?」
王子はそう答えた瞬間にハッと我に返る。
真人様が指していた場所は自分の膝である。
「なぜだ!? そこは膝だ‼ 頭では分かっているのに何故ピザと答えてしまったんだ!?」
王子は自分の発言が信じられないと言わんばかりにワナワナと震えながら自問自答している。
それを真人様はにんまりと満足気に目を細めている。
「ふふふふははははは! ひっかかったな! さすがフィリップは期待を裏切らないなぁ」
「真人! な、なぜだ!? 今なぜ僕はピザと言ってしまったんだ!?」
「それは俺にもよく分からん!」
「なんでだよ!? じゃあなんでこんな問題出したんだよ!?」
私も聞きたい。
2人は全く中身のない会話で盛り上がっているが、その様子を見つめる私には今更何の感情も湧いてこない。
この光景はもう見飽きている。
この2人、毎回こんな感じのくだらないやり取りを延々と繰り返している。
「もう1回! もう1回だけやらせてくれ!」
「よっしゃやってみろ!」
「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ!」
「じゃあここは!?」
「ひざ! ……膝じゃないだと!?」
真人様が指さしているのは膝ではなく肘である。
「なぜだ! なぜこんな簡単なことに引っかかってしまうんだ!?」
私も聞きたい。
一国の王太子がこんなくだらない遊びで糸も簡単に引っかかってしまってはこの国の将来に不安しかない。
「ほんとお前は素直だよなぁ。このまま変わらないでくれよな」
それは困る。変わってくれないとこの国が傾きそうだ。
フィリップ王子はテーブルに両手を付き、悔しそうに唇を噛み締めていたが、しばらくすると顔を上げ、私の方をじっと見つめてきた。
その意図を察した私は小さくため息を付くと、大きく息を吸い込み――。
「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ」
「じゃあここは!?」
王子の指さした場所が肘である事を瞬時に確認し、私は素早く答えた。
「関節」
「ふふふふ! ひっかかったな! ここは肘だ……って……なっ!? 関節だと!?」
一瞬喜びに顔を歪ませたフィリップ王子だったが、すぐに驚愕の表情へと変える。
そう、私の答えは間違いではない。
肘は体に数箇所存在する関節の1つである。
「関節って……そんな答えはありなのか!?」
「フィリップよ。この世の中、皆がお前みたいに素直な奴ばかりじゃないんだぜ。残念な事にひねくれた大人が大半を占めているんだ。お前はもっと自分を誇っていいんだぞ」
悔しそうにするフィリップ王子の肩に真人様が手を置き、励ましの言葉をかけている。
しかしその言葉に何か引っかかる。
今のこの男の発言は、私がひねくれた大人の一人であると言っているようなもんだ。
「真人様、本日の授業お疲れ様でした。次回があれば、また宜しくお願い致します」
私は作り笑顔を浮かべながら、真人様の背中を押して部屋の外へと追い出す。
「いやいや! まだ授業は始まってないから!」
「待てユナ! お願いだからまだ真人を帰さないでくれ!」
真人様を部屋から追い出し扉を閉めようとする私を2人は慌てた様子で引き止めている。
「それならいつまでも遊んでいないで、さっさと授業を始めてくださいよ」
凄む私に2人は「はい……」と小さく返事をすると、部屋の中へと戻って行った。
いつの間にか完食したフィリップ王子がナフキンで口を拭いながら真人様に話しかけた。
先程は毒味やら食中毒やらを心配していた訳だが、幼い頃からあらゆる毒に触れざるをえなかった彼には毒の耐性もついているため、多少の毒や食材の傷みくらいで体調を崩すような体ではない。
……が、それでもルールは守ってもらわなければ、フィリップ王子の専属侍女である私の責任となってしまう。
「いや、やめた方がいいぜ。ここのシェフのことだから、どうせ上品な料理にアレンジされちまうだろ?」
確かに、味は美味しいのだが、溢れんばかりにのせられたチーズはお腹に満腹感をもたらす。
そのたっぷりのチーズがこの料理の美味しいところなのだが、栄養や質を重んじる城のシェフならば、王族向けに改良されるのは間違いないだろう。
「そうか……ならば、その店から直接取り寄せるとしよう。えっと……ピザと言ったか?」
その言葉を聞き、真人様はニヤリと悪巧みのある笑みを浮かべた。
「突然だがここで問題だ! フィリップ、今から俺が出す問いに素早く答えてくれ!」
「あ、ああ! 分かった‼」
突然始まった真人様の問題に、フィリップ王子はキリッと真剣な表情になり身構えた。
「じゃあ、まずはピザって10回言ってみ?」
「ピザ? さっき食べたヤツの名前をか? ピザ、ピザ、ピザ――」
「あー違う違う! もっと早くだ! 連続で! もっかい最初から10回! はい!!」
「ピ……ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ!」
「じゃあここは!?」
「ピザ‼ なっ……ピザだと!?」
王子はそう答えた瞬間にハッと我に返る。
真人様が指していた場所は自分の膝である。
「なぜだ!? そこは膝だ‼ 頭では分かっているのに何故ピザと答えてしまったんだ!?」
王子は自分の発言が信じられないと言わんばかりにワナワナと震えながら自問自答している。
それを真人様はにんまりと満足気に目を細めている。
「ふふふふははははは! ひっかかったな! さすがフィリップは期待を裏切らないなぁ」
「真人! な、なぜだ!? 今なぜ僕はピザと言ってしまったんだ!?」
「それは俺にもよく分からん!」
「なんでだよ!? じゃあなんでこんな問題出したんだよ!?」
私も聞きたい。
2人は全く中身のない会話で盛り上がっているが、その様子を見つめる私には今更何の感情も湧いてこない。
この光景はもう見飽きている。
この2人、毎回こんな感じのくだらないやり取りを延々と繰り返している。
「もう1回! もう1回だけやらせてくれ!」
「よっしゃやってみろ!」
「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ!」
「じゃあここは!?」
「ひざ! ……膝じゃないだと!?」
真人様が指さしているのは膝ではなく肘である。
「なぜだ! なぜこんな簡単なことに引っかかってしまうんだ!?」
私も聞きたい。
一国の王太子がこんなくだらない遊びで糸も簡単に引っかかってしまってはこの国の将来に不安しかない。
「ほんとお前は素直だよなぁ。このまま変わらないでくれよな」
それは困る。変わってくれないとこの国が傾きそうだ。
フィリップ王子はテーブルに両手を付き、悔しそうに唇を噛み締めていたが、しばらくすると顔を上げ、私の方をじっと見つめてきた。
その意図を察した私は小さくため息を付くと、大きく息を吸い込み――。
「ピザピザピザピザピザピザピザピザピザピザ」
「じゃあここは!?」
王子の指さした場所が肘である事を瞬時に確認し、私は素早く答えた。
「関節」
「ふふふふ! ひっかかったな! ここは肘だ……って……なっ!? 関節だと!?」
一瞬喜びに顔を歪ませたフィリップ王子だったが、すぐに驚愕の表情へと変える。
そう、私の答えは間違いではない。
肘は体に数箇所存在する関節の1つである。
「関節って……そんな答えはありなのか!?」
「フィリップよ。この世の中、皆がお前みたいに素直な奴ばかりじゃないんだぜ。残念な事にひねくれた大人が大半を占めているんだ。お前はもっと自分を誇っていいんだぞ」
悔しそうにするフィリップ王子の肩に真人様が手を置き、励ましの言葉をかけている。
しかしその言葉に何か引っかかる。
今のこの男の発言は、私がひねくれた大人の一人であると言っているようなもんだ。
「真人様、本日の授業お疲れ様でした。次回があれば、また宜しくお願い致します」
私は作り笑顔を浮かべながら、真人様の背中を押して部屋の外へと追い出す。
「いやいや! まだ授業は始まってないから!」
「待てユナ! お願いだからまだ真人を帰さないでくれ!」
真人様を部屋から追い出し扉を閉めようとする私を2人は慌てた様子で引き止めている。
「それならいつまでも遊んでいないで、さっさと授業を始めてくださいよ」
凄む私に2人は「はい……」と小さく返事をすると、部屋の中へと戻って行った。
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