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2.エロ本の開示を阻止せよ
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時は少し遡り、昨日の真人様による特別授業が終わった時の事である。
「昔の僕の剣の師匠並みに厳しい指導だった……」
「ガチで骨がイッたと思う……」
すっかりテンションが下がりきった2人の情けない言葉を聞き流しながら、私はパンパンと自分の服を手で払い、身なりを整えていた。
「次はまた1週間後か」
フィリップ王子は寂しそうに呟くと、ハアッと肩を落とした。
すると、真人様は何かを思い出した様に顔を上げた。
「あ、そうだ。フィリップに誕生日プレゼント持ってきたんだった。この国じゃ16で成人って聞いたから、お前にぜひ渡したいと思ってな」
真人様は先程の手提げ袋を無造作にゴソゴソと探り始めた。
「本当か!? 真人からもらえるなら何でも嬉しいぞ!」
フィリップ王子は本当に嬉しそうに前のめり気味になりながら、何が出てくるのか楽しみにしている。
まるでただの少年のように、純粋な笑顔を向ける相手は真人様のみ。そんな相手からのプレゼントとなれば、たとえどんな物であっても、何よりも嬉しいはずだ。
「俺も張り切ったんだぜ?親友の成人祝いだからな。ちょっとした裏ルートから取り寄せたんだ。あ、ユナちゃんゴメン。ちょっとだけコイツと二人だけにしてくれるか?」
うん。今、聞き捨てならぬワードが飛び出しとてつもなく嫌な予感がする。けれど……
「分かりました。失礼致します」
二人にお辞儀をし、私は扉の外へ出た。あえて扉を開けっ放しにすると、すぐさま二人から見えない位置に移動し、魔法で聴力の強化を施し二人の会話を盗み聞く。
「ほらよ!」
「これは本か?……な……な……!? ハハハハハハレンチだぞ真人‼」
聴力強化の必要が無いほど大きな声が部屋から突き抜けてきた。
その言葉で私は何をプレゼントされたのかを察した。
「おいおい、何恥ずかしがってんだよ? お前が巨乳好きなのはとっくに知ってるんだぜ?」
「うぐ……!」
私は二人に気付かれないようにこっそりと扉に隠れながらその様子を伺った。
フィリップ王子のその表情は明らかに動揺している。図星を指されて真っ赤になりながら反論している様だ。
「こんなもの受け取れるハズが無いだろ!? しかも裏ルートってことは、検閲されていないものだろ!?」
「だってよぉ、この国でのこういう類の検閲厳しいんだよなぁ。だから国外の物を仕入れてきたって訳だ。まあ、いらんっていうなら、これは返してもらうけどな」
真人様はフィリップ王子が手にしている本をグイッと引っ張る。
「あ……ああ、僕はこんなもの……こんなものおおお‼」
しかし、その本はまだフィリップ王子の手の中にある。
「何故だ! 何故手が離れないのだ!?」
そんなフィリップ王子に真人様はニヤニヤと下品な笑いを浮かべている。
「フィリップ、自分に正直になれ? お前はその本を手放したくないんだよ」
「く、くそ!離れない!手放せない!」
今すぐ私が出ていってその手から剥ぎ取りたいが、そこは必死に我慢する。
「まあまあ、大人しく受け取っとけよ」
「し、しかし……こんな本持ってると誰かに知られたら――」
「大丈夫だ。そこに関しては、とっておきの隠し場所があるから。これをな……」
そう言うと、2人はコソコソと話しながら本棚の前で怪しい動きをしているが、バッチリその様子は見させてもらっているし、会話も漏らすことなく聞いている。
「フィリップ、本を隠すなら、本の中……だぜ」
真人様はそう言うと、本棚から1冊の本を取り出した。
そしてその表紙の紙をペラリと取り外し、持ってきたエロ本の表紙にその紙を同じようにセットした。
パタリと閉じられた本は、外見では普通の本である。
「こうやって何かの本の外側の表紙だけ取り外してセットすれば、本棚に納めても分かんないだろ?」
「すごい……すごいぞ真人! 君は天才か!?」
「はっはっは! こういう事なら任せてくれ!」
なるほどなるほど、二度と任せてなるものか。
本当にこの男は余計な事しか教えないなぁ……!
「念の為に、あまり人目につかなくて、読み返す事が無い本にしといたほうがいいぜ?」
「ふむ、そうだな。じゃあ、この本にしようかな」
フィリップ王子は本棚の下段にあり、やたら華やかに飾られた表紙の本を取り出した。
「え、こりゃまた立派な本だが、いいのか?」
「ああ、この本の中身なら全部頭の中に入っているし、今更読み返すことも無いからな」
「うっ。今さらっと嫌味な発言したよな? まあいいんじゃね? しかもこのシリーズ全部で10冊あるんだな。あと9冊分隠し場所が確保出来たな!」
「な!?そ……い、いいのだろうか?」
いやいや、全然良くない。
「いいじゃねーか!男はエロ本の10冊くらい持っていて当然だぜ! これ全部コンプリートしようぜ!」
もちろん、コンプリートなんて絶対に阻止させて頂く。
あの如何わしい本を今すぐ力ずくで没収することも可能ではあるが、真人様の言うように彼ももう成人だ。
性に多感な時期でもあるし、多少はそういう楽しみもあっても良いのかもしれない。
しかし検閲を受けてない代物を王子の部屋に置いとく訳にはいかないので、今日だけは目を瞑るが、明日にはきちんと回収しておこう。
――そう思っていたのだけど、この時の自分の判断を呪いたい。
何がなんでもこの時あの本を即刻処分しておくべきだった!
まさかこの本の存在が、この国を揺るがす大騒動へと発展すると、一体誰が思っただろうか。
この時に王子がエロ本の隠し場所として選んだ本。それは――。
『アレイシス国の歴史と栄光の軌跡 第一章』
それは今、同盟国の首脳陣が集まる場で皆の注目の的となっている。
「昔の僕の剣の師匠並みに厳しい指導だった……」
「ガチで骨がイッたと思う……」
すっかりテンションが下がりきった2人の情けない言葉を聞き流しながら、私はパンパンと自分の服を手で払い、身なりを整えていた。
「次はまた1週間後か」
フィリップ王子は寂しそうに呟くと、ハアッと肩を落とした。
すると、真人様は何かを思い出した様に顔を上げた。
「あ、そうだ。フィリップに誕生日プレゼント持ってきたんだった。この国じゃ16で成人って聞いたから、お前にぜひ渡したいと思ってな」
真人様は先程の手提げ袋を無造作にゴソゴソと探り始めた。
「本当か!? 真人からもらえるなら何でも嬉しいぞ!」
フィリップ王子は本当に嬉しそうに前のめり気味になりながら、何が出てくるのか楽しみにしている。
まるでただの少年のように、純粋な笑顔を向ける相手は真人様のみ。そんな相手からのプレゼントとなれば、たとえどんな物であっても、何よりも嬉しいはずだ。
「俺も張り切ったんだぜ?親友の成人祝いだからな。ちょっとした裏ルートから取り寄せたんだ。あ、ユナちゃんゴメン。ちょっとだけコイツと二人だけにしてくれるか?」
うん。今、聞き捨てならぬワードが飛び出しとてつもなく嫌な予感がする。けれど……
「分かりました。失礼致します」
二人にお辞儀をし、私は扉の外へ出た。あえて扉を開けっ放しにすると、すぐさま二人から見えない位置に移動し、魔法で聴力の強化を施し二人の会話を盗み聞く。
「ほらよ!」
「これは本か?……な……な……!? ハハハハハハレンチだぞ真人‼」
聴力強化の必要が無いほど大きな声が部屋から突き抜けてきた。
その言葉で私は何をプレゼントされたのかを察した。
「おいおい、何恥ずかしがってんだよ? お前が巨乳好きなのはとっくに知ってるんだぜ?」
「うぐ……!」
私は二人に気付かれないようにこっそりと扉に隠れながらその様子を伺った。
フィリップ王子のその表情は明らかに動揺している。図星を指されて真っ赤になりながら反論している様だ。
「こんなもの受け取れるハズが無いだろ!? しかも裏ルートってことは、検閲されていないものだろ!?」
「だってよぉ、この国でのこういう類の検閲厳しいんだよなぁ。だから国外の物を仕入れてきたって訳だ。まあ、いらんっていうなら、これは返してもらうけどな」
真人様はフィリップ王子が手にしている本をグイッと引っ張る。
「あ……ああ、僕はこんなもの……こんなものおおお‼」
しかし、その本はまだフィリップ王子の手の中にある。
「何故だ! 何故手が離れないのだ!?」
そんなフィリップ王子に真人様はニヤニヤと下品な笑いを浮かべている。
「フィリップ、自分に正直になれ? お前はその本を手放したくないんだよ」
「く、くそ!離れない!手放せない!」
今すぐ私が出ていってその手から剥ぎ取りたいが、そこは必死に我慢する。
「まあまあ、大人しく受け取っとけよ」
「し、しかし……こんな本持ってると誰かに知られたら――」
「大丈夫だ。そこに関しては、とっておきの隠し場所があるから。これをな……」
そう言うと、2人はコソコソと話しながら本棚の前で怪しい動きをしているが、バッチリその様子は見させてもらっているし、会話も漏らすことなく聞いている。
「フィリップ、本を隠すなら、本の中……だぜ」
真人様はそう言うと、本棚から1冊の本を取り出した。
そしてその表紙の紙をペラリと取り外し、持ってきたエロ本の表紙にその紙を同じようにセットした。
パタリと閉じられた本は、外見では普通の本である。
「こうやって何かの本の外側の表紙だけ取り外してセットすれば、本棚に納めても分かんないだろ?」
「すごい……すごいぞ真人! 君は天才か!?」
「はっはっは! こういう事なら任せてくれ!」
なるほどなるほど、二度と任せてなるものか。
本当にこの男は余計な事しか教えないなぁ……!
「念の為に、あまり人目につかなくて、読み返す事が無い本にしといたほうがいいぜ?」
「ふむ、そうだな。じゃあ、この本にしようかな」
フィリップ王子は本棚の下段にあり、やたら華やかに飾られた表紙の本を取り出した。
「え、こりゃまた立派な本だが、いいのか?」
「ああ、この本の中身なら全部頭の中に入っているし、今更読み返すことも無いからな」
「うっ。今さらっと嫌味な発言したよな? まあいいんじゃね? しかもこのシリーズ全部で10冊あるんだな。あと9冊分隠し場所が確保出来たな!」
「な!?そ……い、いいのだろうか?」
いやいや、全然良くない。
「いいじゃねーか!男はエロ本の10冊くらい持っていて当然だぜ! これ全部コンプリートしようぜ!」
もちろん、コンプリートなんて絶対に阻止させて頂く。
あの如何わしい本を今すぐ力ずくで没収することも可能ではあるが、真人様の言うように彼ももう成人だ。
性に多感な時期でもあるし、多少はそういう楽しみもあっても良いのかもしれない。
しかし検閲を受けてない代物を王子の部屋に置いとく訳にはいかないので、今日だけは目を瞑るが、明日にはきちんと回収しておこう。
――そう思っていたのだけど、この時の自分の判断を呪いたい。
何がなんでもこの時あの本を即刻処分しておくべきだった!
まさかこの本の存在が、この国を揺るがす大騒動へと発展すると、一体誰が思っただろうか。
この時に王子がエロ本の隠し場所として選んだ本。それは――。
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