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2.エロ本の開示を阻止せよ
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「何を10回だと?なにを」
「国王陛下ぁ‼」
流石にアレイシス国王の名誉を守る為に、私は声を上げた。
発言を遮った事への不敬で国王に睨まれるが、私も負けじと睨み返す。
「真人様のペースに飲み込まれてはいけません‼」
「なんだと!? 私がいつコイツのペースに飲み込まれたというのだ!?」
「認めたくないのは分かります! ですが残念ながら、それはもう、ものすごく綺麗に飲み込まれていました! 今一度、冷静になって下さい! 王妃陛下はもう大丈夫です!」
「!?」
ソフィア王妃は一通り笑って落ち着きを取り戻し、ニコニコと楽しそうに座っている。
それを見てアレイシス国王も少しホッとしたのか、血管が切れそうだった表情も少し和らいだ。
「あと真人様!」
「へ!?」
私は床に変わらず押さえつけられたままの真人様にも声をかけた。
この事を伝えるならもう今しかない。
「私達はこの本の中に何かが隠されている事は分かってますが、その内容まではまだ知りません」
「……は?そうなの?」
真人様はフィリップ王子に視線を送ると、フィリップ王子は今にも死にそうな顔で、コクリと頷いた。
「え、じゃあ俺さっき王様と何の話してたんだ?」
それはこちらが聞きたい。
私はコホンと咳をして声を整えると、真人様に先程の会話について説明した。
「国王陛下は、あなたがこの国に対して不満を抱き、そこの男と共謀してフィリップ王子殿下を連れて国外逃亡をはかろうとしている、という話をしてました」
「はぁ!? 国外逃亡!? そんなの考えるわけねぇじゃん!」
真人様の様子に、先程までドヤ顔を決めていたダリウスト国王の表情は一転してキョトンとしている。
「あれ? もしかして俺、めちゃくちゃ余計なこと話してたんじゃないか?」
めちゃくちゃ余計なことしか話してなかった。
自覚してくれて嬉しい。
アレイシス国王はそんな真人様を呆れた様子で見ると、大きくため息をついた。そして真人様を押さえつけている衛兵に目配せをし、その手を離させた。
「お主と話をしていても埒があかん。もうさっさとその本を――」
「ちょっとまったぁ‼」
本を開こうとするアレイシス国王に真人様は慌てて声を上げた。
床から起き上がり、座った状態ではあるが、鎖の拘束は解かれていない。
再び苛立ちながらアレイシス国王は真人様を睨みつける。
「なんだお主。まだ何かあるのか?」
「ああ、それを開けちゃあいけないぜ」
睨み合いを続ける2人の様子に不謹慎ながらも、私は若干胸を躍らせていた。
真人様は一体どうやってこのピンチを切り抜けるのか……。
先程の様な絶妙にすれ違うトークはもう出来ないだろう。
ここからが、真人様の真の戦いである。
「フィリップといいお主といい……一体この中に何を隠しておるのだ?」
「開けたら……ば、爆発するかもしれないだろお!!?」
ちょっ。
嘘が下手くそすぎて吹きそうになった。
話のレベルが低すぎて希望が見えない!
「何を見え透いた嘘を……だとしたら、昨日そこの男がこの本を開いた時に爆発していたはずであろう。いい加減な事を申すな。すぐにその本を開け‼」
「王様‼ その本を開けたら後悔するぜ‼」
「お主の話はもう聞けん! 発言も許さん‼」
国王の制止も無視して、真人様は話を続けようと口を開く。衛兵も必死にその口を塞ごうとするが、真人様はそれを器用に躱し、その口を捕らえることが出来ない。
「俺はあんたに教えた事と全く同じことをフィリップにも教えたんだよ! あんたなら分かるはずだ。この本に、一体何が隠されているか‼」
…………ん?
「……? 何を言っておるのだ?お主に教わった事で、何か役に立った事があったか?」
「ああ。それを教えた時、あんたは大層喜んでいたよ。よぉく思い出すんだな。あんたの本棚にもあるはずだぜ? 開けちゃいけない本がな! フィリップとそっちの趣味も同じとは、さすが親子だよなぁ!」
真人様の言葉にアレイシス国王は動じることなく、小馬鹿にする様に鼻で笑った。
「ふっ。何を言っておる。私の本棚に一体何がハアアアアッッ‼‼?」
アレイシス国王の発言途中に謎の叫び声が発せられた瞬間、その口が有り得ないくらい開き、目は飛び出そうなくらい見開いている。
見たことの無い表情の国王に私も含めて皆引いている。
しかしこの感じ……前にも似たようなことがあった気がする。
「ようやくこの中身が何か、気付いたようだな。」
真人様は勝ち誇った様にアレイシス国王を見つめた。
先程から変わらず固まったまま動けなくなっている国王に、フィリップ王子は恐る恐る話しかけた。
「……ち……父上……?まさか……」
フィリップ王子の声に、ギギギッと国王の首が不自然に動き、フィリップ王子の方向へ顔を向けた。
「フィリッ……・お前……?まさか……」
2人は大量の冷や汗をかきながら目を合わせ、その瞳はフルフルと震わせている。
……国王。お前もか……。
お前も本棚にエロ本隠してるんかい!
真人様は国王にもあんな低レベルのお話してるの?
アレイシス国王は再びギギギッと首を動かし、真っ直ぐ向くと、その場の皆に向かって表情無く声をかけた。
「少し、息子と2人で話をさせてはくれまいか?」
その言葉に、カダム国王は厳しい顔つきになり、アレイシス国王を見据えた。
「アレイシス国王。それは先程あなたが信頼に関わるから出来ないとおっしゃっていた事ではないか」
ごもっともな意見を言われて、アレイシス国王はギリッと悔しそうに唇を噛み締めている。
急に威厳が無くなったアレイシス国王に対し、他の国王達は面白そうな様子で笑みを浮かべ始めている。
「ならばやはり、この本を開示するしかないようですね」
カダム国王が立ち上がり、本の側へ歩み寄ろうとした時――
「ちょっと待てぃ!」
再びアレイシス国王が声を制止の声を上げた。
「なんですか?アレイシス国王。あなたがさっきまで開こうとしていたじゃないですか?」
「開いたら、爆発するかもしれないだろぉ!?」
アレイシス国王が、鬼気迫る形相で叫んでいるのは先程の真人様が言った事と全く同じ事である。
吹き出さなかった私を誰か褒めて欲しい。
恐らくだが、国王があの本の中身を守ろうとしてるのは、この国やフィリップ王子の名誉を守るためではない。
先程の真人様の発言で、この本と同じ物が自分の本棚にあることが知られてしまっている。
つまり、ここでこのエロ本が開示されるということは、自分の本棚にエロ本を隠していることがバレてしまう。ソフィア王妃に!!
真人様は先程言っていた。『フィリップ王子と趣味が一緒』だと。つまり、この親父も巨乳好きって事になる。そしてソフィア王妃もパットで底上げする程に、ご自分の貧乳を気にしてらっしゃる。
なのに……国王が巨乳好き向けのエロ本を所持していたとなれば……なれば……‼
その先はとてもエグくて予想できない‼
「そ、それもさっきあなたが否定していたではないですか」
「昨日は大丈夫でも、今日は大丈夫じゃないかもしれんだろうが!」
もうなりふり構ってられないアレイシス国王だが、その様子を見れば見るほど、皆の視線は一点……目の前の本に集中する。
「屈強なアレイシス大国の王とその王子がそこまで必死に隠そうとする物……一体何が隠されているか、非常に興味がありますなぁ」
「同盟の証として少しだけ教えて下さりはしないのですか?」
カダム国王とナイル国王はニヤニヤと卑しい笑みを浮かべながら話しをしだし、ダリウスト国王もそれに加わる。
「さぞ、我々の想像を超えるような秘密が隠されているんでしょうねぇ」
「皆にも分かるように、その中身をここで読み上げて頂きたいものですね」
うわ……エロ本を読み上げるっていう発想にゾッとする。
しかし皆が考えている事は同じだろう。
――あの(エロ)本の中身を知りたい‼
あくまで彼らが知りたい事は、この国にとって不利な情報なのだが、本の中身を知る私には彼らがこのエロ本の中身を見たくてたまらくて興奮している親父達にしか見えない。
なんだろう……物凄く殴りたい……順番に殴っていきたい。
「しかし、そんな秘密を異世界人がなぜ手に入れることが出来たのだ?結局その男とは関係が無かったということだろう?」
「ああ、そういえば聞いたことがありますよ。異世界人の中には、時々特別な能力を持った者がいると」
その言葉に、私はピクリと反応し、反射的にその言葉の主であるナイル国王を睨んだ。
「まあ、そんな力を持っていた場合はこの世界の驚異となりますからね。やはり異世界人は皆、生かしておくべきではありません。力を隠している可能性もありますから」
……時々こういう輩はいる。
そりゃあ自分が持っていない脅威になる様な力を、他の奴が持っているということは怖い事かもしれない。
もしそれが悪い奴だったら、力を使って世界を支配しようと目論むかもしれない。
だけど、異世界人であるとだけで、殺される理由になるのは納得がいかない。
自分が望んだ訳でもない。突然、故郷や仲間達と強制的に引き離され、帰る事も出来ない。混乱し、孤独と悲しみに暮れているのにも関わらず……。
もしかしたら、そんなふざけた理由で殺された私の仲間もいるのかもしれない。
力を持っているだけで……持っているかもしれないというだけで……殺すだと?
私は自分の中に芽生えた殺意により、魔力が高まっていくのを感じた。
そうだ。もう他の国の首脳陣みんな殺してしまえば、この国の名誉も守れる。なんて事ない小国の連中だ。敵討ちに来られても、返り討ちにしてしまえばいい。
異世界人であるという事だけで殺すと言うコイツらなら――
私にとっては異世界人であるコイツらを殺しても文句は言えない。
「もしかしたら、その異世界人は何か特殊な能力を隠しているのかもしれませんね」
「やはり異世界人は危険な存在ですな! すぐ処刑すべきだ!」
私の殺気になど気付かない無能な連中は、まだそんな話をしている。
私は特に隠すことなく、魔力を手元に集中させ始めた。
さあ……どのようにして血祭りにあげようか?
「へえー。俺の特殊能力に興味があるのか……?見たいってんなら、見せてやるよ!」
……え……?
真人様の特殊能力って……あれよね?
真人様のその言葉に、私は体内で高まっていた魔力が急転直下の如く静まり返っていくのを感じた。
「国王陛下ぁ‼」
流石にアレイシス国王の名誉を守る為に、私は声を上げた。
発言を遮った事への不敬で国王に睨まれるが、私も負けじと睨み返す。
「真人様のペースに飲み込まれてはいけません‼」
「なんだと!? 私がいつコイツのペースに飲み込まれたというのだ!?」
「認めたくないのは分かります! ですが残念ながら、それはもう、ものすごく綺麗に飲み込まれていました! 今一度、冷静になって下さい! 王妃陛下はもう大丈夫です!」
「!?」
ソフィア王妃は一通り笑って落ち着きを取り戻し、ニコニコと楽しそうに座っている。
それを見てアレイシス国王も少しホッとしたのか、血管が切れそうだった表情も少し和らいだ。
「あと真人様!」
「へ!?」
私は床に変わらず押さえつけられたままの真人様にも声をかけた。
この事を伝えるならもう今しかない。
「私達はこの本の中に何かが隠されている事は分かってますが、その内容まではまだ知りません」
「……は?そうなの?」
真人様はフィリップ王子に視線を送ると、フィリップ王子は今にも死にそうな顔で、コクリと頷いた。
「え、じゃあ俺さっき王様と何の話してたんだ?」
それはこちらが聞きたい。
私はコホンと咳をして声を整えると、真人様に先程の会話について説明した。
「国王陛下は、あなたがこの国に対して不満を抱き、そこの男と共謀してフィリップ王子殿下を連れて国外逃亡をはかろうとしている、という話をしてました」
「はぁ!? 国外逃亡!? そんなの考えるわけねぇじゃん!」
真人様の様子に、先程までドヤ顔を決めていたダリウスト国王の表情は一転してキョトンとしている。
「あれ? もしかして俺、めちゃくちゃ余計なこと話してたんじゃないか?」
めちゃくちゃ余計なことしか話してなかった。
自覚してくれて嬉しい。
アレイシス国王はそんな真人様を呆れた様子で見ると、大きくため息をついた。そして真人様を押さえつけている衛兵に目配せをし、その手を離させた。
「お主と話をしていても埒があかん。もうさっさとその本を――」
「ちょっとまったぁ‼」
本を開こうとするアレイシス国王に真人様は慌てて声を上げた。
床から起き上がり、座った状態ではあるが、鎖の拘束は解かれていない。
再び苛立ちながらアレイシス国王は真人様を睨みつける。
「なんだお主。まだ何かあるのか?」
「ああ、それを開けちゃあいけないぜ」
睨み合いを続ける2人の様子に不謹慎ながらも、私は若干胸を躍らせていた。
真人様は一体どうやってこのピンチを切り抜けるのか……。
先程の様な絶妙にすれ違うトークはもう出来ないだろう。
ここからが、真人様の真の戦いである。
「フィリップといいお主といい……一体この中に何を隠しておるのだ?」
「開けたら……ば、爆発するかもしれないだろお!!?」
ちょっ。
嘘が下手くそすぎて吹きそうになった。
話のレベルが低すぎて希望が見えない!
「何を見え透いた嘘を……だとしたら、昨日そこの男がこの本を開いた時に爆発していたはずであろう。いい加減な事を申すな。すぐにその本を開け‼」
「王様‼ その本を開けたら後悔するぜ‼」
「お主の話はもう聞けん! 発言も許さん‼」
国王の制止も無視して、真人様は話を続けようと口を開く。衛兵も必死にその口を塞ごうとするが、真人様はそれを器用に躱し、その口を捕らえることが出来ない。
「俺はあんたに教えた事と全く同じことをフィリップにも教えたんだよ! あんたなら分かるはずだ。この本に、一体何が隠されているか‼」
…………ん?
「……? 何を言っておるのだ?お主に教わった事で、何か役に立った事があったか?」
「ああ。それを教えた時、あんたは大層喜んでいたよ。よぉく思い出すんだな。あんたの本棚にもあるはずだぜ? 開けちゃいけない本がな! フィリップとそっちの趣味も同じとは、さすが親子だよなぁ!」
真人様の言葉にアレイシス国王は動じることなく、小馬鹿にする様に鼻で笑った。
「ふっ。何を言っておる。私の本棚に一体何がハアアアアッッ‼‼?」
アレイシス国王の発言途中に謎の叫び声が発せられた瞬間、その口が有り得ないくらい開き、目は飛び出そうなくらい見開いている。
見たことの無い表情の国王に私も含めて皆引いている。
しかしこの感じ……前にも似たようなことがあった気がする。
「ようやくこの中身が何か、気付いたようだな。」
真人様は勝ち誇った様にアレイシス国王を見つめた。
先程から変わらず固まったまま動けなくなっている国王に、フィリップ王子は恐る恐る話しかけた。
「……ち……父上……?まさか……」
フィリップ王子の声に、ギギギッと国王の首が不自然に動き、フィリップ王子の方向へ顔を向けた。
「フィリッ……・お前……?まさか……」
2人は大量の冷や汗をかきながら目を合わせ、その瞳はフルフルと震わせている。
……国王。お前もか……。
お前も本棚にエロ本隠してるんかい!
真人様は国王にもあんな低レベルのお話してるの?
アレイシス国王は再びギギギッと首を動かし、真っ直ぐ向くと、その場の皆に向かって表情無く声をかけた。
「少し、息子と2人で話をさせてはくれまいか?」
その言葉に、カダム国王は厳しい顔つきになり、アレイシス国王を見据えた。
「アレイシス国王。それは先程あなたが信頼に関わるから出来ないとおっしゃっていた事ではないか」
ごもっともな意見を言われて、アレイシス国王はギリッと悔しそうに唇を噛み締めている。
急に威厳が無くなったアレイシス国王に対し、他の国王達は面白そうな様子で笑みを浮かべ始めている。
「ならばやはり、この本を開示するしかないようですね」
カダム国王が立ち上がり、本の側へ歩み寄ろうとした時――
「ちょっと待てぃ!」
再びアレイシス国王が声を制止の声を上げた。
「なんですか?アレイシス国王。あなたがさっきまで開こうとしていたじゃないですか?」
「開いたら、爆発するかもしれないだろぉ!?」
アレイシス国王が、鬼気迫る形相で叫んでいるのは先程の真人様が言った事と全く同じ事である。
吹き出さなかった私を誰か褒めて欲しい。
恐らくだが、国王があの本の中身を守ろうとしてるのは、この国やフィリップ王子の名誉を守るためではない。
先程の真人様の発言で、この本と同じ物が自分の本棚にあることが知られてしまっている。
つまり、ここでこのエロ本が開示されるということは、自分の本棚にエロ本を隠していることがバレてしまう。ソフィア王妃に!!
真人様は先程言っていた。『フィリップ王子と趣味が一緒』だと。つまり、この親父も巨乳好きって事になる。そしてソフィア王妃もパットで底上げする程に、ご自分の貧乳を気にしてらっしゃる。
なのに……国王が巨乳好き向けのエロ本を所持していたとなれば……なれば……‼
その先はとてもエグくて予想できない‼
「そ、それもさっきあなたが否定していたではないですか」
「昨日は大丈夫でも、今日は大丈夫じゃないかもしれんだろうが!」
もうなりふり構ってられないアレイシス国王だが、その様子を見れば見るほど、皆の視線は一点……目の前の本に集中する。
「屈強なアレイシス大国の王とその王子がそこまで必死に隠そうとする物……一体何が隠されているか、非常に興味がありますなぁ」
「同盟の証として少しだけ教えて下さりはしないのですか?」
カダム国王とナイル国王はニヤニヤと卑しい笑みを浮かべながら話しをしだし、ダリウスト国王もそれに加わる。
「さぞ、我々の想像を超えるような秘密が隠されているんでしょうねぇ」
「皆にも分かるように、その中身をここで読み上げて頂きたいものですね」
うわ……エロ本を読み上げるっていう発想にゾッとする。
しかし皆が考えている事は同じだろう。
――あの(エロ)本の中身を知りたい‼
あくまで彼らが知りたい事は、この国にとって不利な情報なのだが、本の中身を知る私には彼らがこのエロ本の中身を見たくてたまらくて興奮している親父達にしか見えない。
なんだろう……物凄く殴りたい……順番に殴っていきたい。
「しかし、そんな秘密を異世界人がなぜ手に入れることが出来たのだ?結局その男とは関係が無かったということだろう?」
「ああ、そういえば聞いたことがありますよ。異世界人の中には、時々特別な能力を持った者がいると」
その言葉に、私はピクリと反応し、反射的にその言葉の主であるナイル国王を睨んだ。
「まあ、そんな力を持っていた場合はこの世界の驚異となりますからね。やはり異世界人は皆、生かしておくべきではありません。力を隠している可能性もありますから」
……時々こういう輩はいる。
そりゃあ自分が持っていない脅威になる様な力を、他の奴が持っているということは怖い事かもしれない。
もしそれが悪い奴だったら、力を使って世界を支配しようと目論むかもしれない。
だけど、異世界人であるとだけで、殺される理由になるのは納得がいかない。
自分が望んだ訳でもない。突然、故郷や仲間達と強制的に引き離され、帰る事も出来ない。混乱し、孤独と悲しみに暮れているのにも関わらず……。
もしかしたら、そんなふざけた理由で殺された私の仲間もいるのかもしれない。
力を持っているだけで……持っているかもしれないというだけで……殺すだと?
私は自分の中に芽生えた殺意により、魔力が高まっていくのを感じた。
そうだ。もう他の国の首脳陣みんな殺してしまえば、この国の名誉も守れる。なんて事ない小国の連中だ。敵討ちに来られても、返り討ちにしてしまえばいい。
異世界人であるという事だけで殺すと言うコイツらなら――
私にとっては異世界人であるコイツらを殺しても文句は言えない。
「もしかしたら、その異世界人は何か特殊な能力を隠しているのかもしれませんね」
「やはり異世界人は危険な存在ですな! すぐ処刑すべきだ!」
私の殺気になど気付かない無能な連中は、まだそんな話をしている。
私は特に隠すことなく、魔力を手元に集中させ始めた。
さあ……どのようにして血祭りにあげようか?
「へえー。俺の特殊能力に興味があるのか……?見たいってんなら、見せてやるよ!」
……え……?
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