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02.隣国の王子
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「ちょ……ちょっと待て!」
会場の外まで、あと少しだったのに。
背後から切羽詰まった様な声で引き止められて、せっかくの良い気分が台無し。
溜息と共に仕方なく振り返ると、ロバート殿下が焦った様子で追いかけてきていた。
「そ、そんなあっさりと出ていかれてはこちらの立場的にも困る! もう少し悔しがったり怒ったりとかしてもらわないと……俺の顔が立たないだろうが!」
「は?」
何を言っているの。この人は。
「婚約破棄はあなたが勝手に言い出した事でしょう。婚約破棄された側の私が、なんであなたに気を利かせないといけないのですか?」
「その通りだ。見苦しいぞ、ロバート王子」
突然、私の背後から聞こえた声。振り返った先には、煌びやかな正装に身を包み佇む若い男性の姿。
長い銀髪は一括りに纏め清潔感さえ感じられる。
そして黒曜石の様な真っ黒な瞳。それは隣国であるウェンディ国の王家の証。
「な!? お前は……ウェンディ国のアストロス王子!? なぜお前がここにいる!?」
「ある噂を聞きましてね。周囲の反対を押し切り、平民の女性と婚約をした王太子が、今は別の女性に熱を上げ、その婚約を破棄しようとしていると」
そう言うと、アストロス王子は鋭い目つきでロバート殿下を睨みつけた。
そこへ、先程まで傍観していたスーランが、テケテケと小走りで駆け寄ってきた。
「アストロス様ぁ! カリナ様ったら酷いんですぅ! 誰もいないのを見計らってぇ、私に酷い罵声を浴びせてくるんですぅ! もう私……耐えられなくて……。うっううう……ひっく……」
スーランは涙を流し、お得意の上目遣いアピールを披露しながらアストロス王子に手を伸ばした。
それがアストロス王子の体に触れるよりも先に、彼の手によって払いのけられた。
「私に気安く触れないでもらいたい。それに、私の名前を呼ぶ許可もした覚えはない。初対面なのに馴れ馴れしい。お前の様な計算高い女性はこれまでに何度も見てきた。その欲にまみれた下心も全てお見通しだ」
「……!? そ、そんな……酷いですぅ! ロバート様ぁっ!」
スーランは再びロバート殿下の方へと駆け寄ると、その胸元へ飛び込みメソメソと泣き始めた。
ねえ、今何しに行ったの? 何をしたかったの? 新しいギャグを披露しようとして不発に終わったの? 気になるじゃない。
「カリナ嬢」
名を呼ばれて我に返ると、アストロス王子は私の前で跪き、忠誠を誓う様に自分の胸に手を当てていた。
「ずっとお慕いしておりました。どうか私と一緒にウェンディ国まで来てくださいませんか? 貴方には何の苦労もさせるつもりはありません。貴方の居場所も私が用意します。貴方の幸せを一番近くで見守る権利を、僕に与えてくれませんか?」
そう言うと、アストロス王子は、優しい笑顔で私を愛おしそうに見つめてきた。
彼とは、王太子の婚約者として出席した他国交流パーティーで、一度だけ会った事がある。
その彼が私に告げた言葉の意味――それが分からない程、私も馬鹿じゃない。
会場の外まで、あと少しだったのに。
背後から切羽詰まった様な声で引き止められて、せっかくの良い気分が台無し。
溜息と共に仕方なく振り返ると、ロバート殿下が焦った様子で追いかけてきていた。
「そ、そんなあっさりと出ていかれてはこちらの立場的にも困る! もう少し悔しがったり怒ったりとかしてもらわないと……俺の顔が立たないだろうが!」
「は?」
何を言っているの。この人は。
「婚約破棄はあなたが勝手に言い出した事でしょう。婚約破棄された側の私が、なんであなたに気を利かせないといけないのですか?」
「その通りだ。見苦しいぞ、ロバート王子」
突然、私の背後から聞こえた声。振り返った先には、煌びやかな正装に身を包み佇む若い男性の姿。
長い銀髪は一括りに纏め清潔感さえ感じられる。
そして黒曜石の様な真っ黒な瞳。それは隣国であるウェンディ国の王家の証。
「な!? お前は……ウェンディ国のアストロス王子!? なぜお前がここにいる!?」
「ある噂を聞きましてね。周囲の反対を押し切り、平民の女性と婚約をした王太子が、今は別の女性に熱を上げ、その婚約を破棄しようとしていると」
そう言うと、アストロス王子は鋭い目つきでロバート殿下を睨みつけた。
そこへ、先程まで傍観していたスーランが、テケテケと小走りで駆け寄ってきた。
「アストロス様ぁ! カリナ様ったら酷いんですぅ! 誰もいないのを見計らってぇ、私に酷い罵声を浴びせてくるんですぅ! もう私……耐えられなくて……。うっううう……ひっく……」
スーランは涙を流し、お得意の上目遣いアピールを披露しながらアストロス王子に手を伸ばした。
それがアストロス王子の体に触れるよりも先に、彼の手によって払いのけられた。
「私に気安く触れないでもらいたい。それに、私の名前を呼ぶ許可もした覚えはない。初対面なのに馴れ馴れしい。お前の様な計算高い女性はこれまでに何度も見てきた。その欲にまみれた下心も全てお見通しだ」
「……!? そ、そんな……酷いですぅ! ロバート様ぁっ!」
スーランは再びロバート殿下の方へと駆け寄ると、その胸元へ飛び込みメソメソと泣き始めた。
ねえ、今何しに行ったの? 何をしたかったの? 新しいギャグを披露しようとして不発に終わったの? 気になるじゃない。
「カリナ嬢」
名を呼ばれて我に返ると、アストロス王子は私の前で跪き、忠誠を誓う様に自分の胸に手を当てていた。
「ずっとお慕いしておりました。どうか私と一緒にウェンディ国まで来てくださいませんか? 貴方には何の苦労もさせるつもりはありません。貴方の居場所も私が用意します。貴方の幸せを一番近くで見守る権利を、僕に与えてくれませんか?」
そう言うと、アストロス王子は、優しい笑顔で私を愛おしそうに見つめてきた。
彼とは、王太子の婚約者として出席した他国交流パーティーで、一度だけ会った事がある。
その彼が私に告げた言葉の意味――それが分からない程、私も馬鹿じゃない。
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