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20 端の擦り切れたメモ
しおりを挟む自室にて夏休みの宿題に手を付ける智明。
その日は珍しく早朝から目が覚め、腹をくくり溜まりに溜まった宿題と向き合っていた。
智明も今年は受験生である。平均的な成績を保っているため極端に追い込まれているわけでもないのだが、実家を離れ一人の時間が長くなると、ふとした時に焦りが生じる。
ただそれでもなかなか勉学のスイッチが入らない智明は、気分転換にスマートフォンで音楽を鳴らすと、そのまま机の上に無造作に投げ置いた。
視線を少しだけ横にずらす。
机の端に置かれた、四つ折りにされたノートの切れ端。
智明はその切れ端にそっと手を伸ばす。
しかし触れる直前でその手を止め、どさっと後ろに倒れ込むと両手の甲で目を覆った。
「大輝……」
東京で別れた親友の名を、誰に聞かせるでもなくぽそりと呟く。
「トモー!」
一階のお店の方から、智明を呼ぶ千恵美の声が響いてきた。
配達だろうか。
智明は、ゆっくりと体を起こした。
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