イトコノジロタ

碧蜜柑

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ジロタとワタシ

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朝起きて、母に言われる、最悪の台詞。

『麻央~?またジロちゃんお弁当忘れてったみたい、届けてあげてね?』

あの野郎、またか。

『お母さん、私はジロタの便利屋じゃないんですが!?』

『良いじゃない、いとこでしょ?』

それが嫌なんだよマイマザー。

『忘れるくらいなら、昼飯食うな!!』

『なあに?その言い方?ひどい!』

母は知らないのだ、ジロタのせいで、私がどんな目にあっているのか…。

朝食もそこそこに、ジロタの弁当を鞄に詰めて、学校へ向かった。

毎朝こう、毎朝、毎朝…。



私が、教室で、鞄の整理をしていると、ジロタがヘラヘラしながら教室にやって来た。

『お?麻央~?弁当持ってきてくれた?』

ジロタは私の机に腰かけると、私の頭を撫でた。私は、いつもその手を振り払い、ジロタを睨み付ける。

『触んな変態、隣の席なんだから、隣に座れ!!』

私が、ジロタの席を指差すとジロタはアメリカンのように両手を広げた。

『俺の机には、風呂敷に包まれた謎の物体が置かれてて、座れないんだよ、ベイビ。』

『それは、毎朝お前が忘れていく、我が母手製の弁当だ。そして、机じゃなく、椅子に座れ!!』

毎朝、こんな調子。

クラスメートは私とジロタを夫婦漫才と呼ぶ。

やめてほしい。

朝のやり取りだけで、1日のエネルギーの半分を使ってる気がする。




ジロタと私は母親同士が姉妹。

ジロタは長女の息子。

私は次女の娘。

この母親たちが、揃いも揃って、出戻り。

そのため、小さい頃から、ジロタと私は兄弟のように育った。

ジロタと私は、とても仲が良かった。

ジロタは優しいし、女の子の遊びにも会わせてくれる、お兄ちゃんってかんじだった。

少し、他の子より抜けていた私をサポートしてくれるジロタに私もなついていた。





小学校5年の夏休み、ジロタはリュックに懐中電灯やら、お菓子やらを詰め込んで、出掛けようとしていた。

『ジロちゃんどこいくの?』

私が聞くと、ジロタは、目をそらして、『別に』と言った。

遊びに行く感じだったので、わたしは、一緒に行きたいと騒いだ。

『女はダメだ!!家に居ろよ。』

『いっつもつれてってくれるじゃん!!何でダメなの!?』

『うるさい!!』

ジロタはは私を突き飛ばして出ていった。

玄関先で、伯母さん(ジロタの母)に捕まって、行き先を訪ねられたが、ジロタは振りきって逃げた。

夕方、駐在さんに連れてこられたジロタはボロボロだった。

どうやら、立ち入り禁止の洞窟に入っていくのを見ていた人がいたらしい。

その日、私を突き飛ばしたことと、立ち入り禁止の洞窟に入った件で、母、伯母、祖父母に叱られているジロタを見た。

私は、その日から、ジロタとあまり話さなくなった。



中学2年の冬、ジロタに彼女ができたと噂になった。

イトコの私が言うのもなんだけど、ジロタの容姿はそこそこいい。

その噂で、がっかりする女子も何人かいた。

その頃から、ジロタが私に馴れ馴れしくなった。

『今度のクリスマス、彼女に何あげればいい?』
とか、
『デートには何着ていけばいい?』
とか、
『何処に連れていけば喜ぶかな?』
とか、私にはどうでもいいことをわざわざ学校で聞いてくるようになった。

それに加え、頭を撫でたり、手を繋ごうとしたり、抱きつこうとしたり、彼女がいるとは思えない行動をして来た。

その当時、ジロタは彼女とまだよそよそしい感じだったので、私は、ジロタの本妻と噂されるようになった。

これが、ジロタとの最悪の日常の始まりだった。




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