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クラスメイトのジロタ
しおりを挟む中学3年の春、恐れていた事態が…ジロタと同じクラスになってしまった。
しかも、名字は同じ浅井…。
運悪く二人、男女それぞれの出席番号1…。
隣の席になってしまった。
『麻央の隣でラッキー。教科書忘れても遠慮なく見せてもらえるし。』
この野郎、忘れ物なんかほとんどしないくせに。
毎晩鞄を念入りにチェックしてるって伯母さんが笑ってたぞ。
ところが、次の日から、ジロタの弁当忘れが始まったのだ。
浅井の愛妻弁当。
ジロタの弁当はいつしかそう呼ばれるようになった。
正確には、浅井叔母さんの愛情弁当なんだけどね。
同学年の何人かは、本当に私がジロタのために弁当を作っていると思っているらしい。
親友のゆかりが笑いながら教えてくれた。
『笑い事じゃないよ!人んちの母さんが、毎朝早起きして作ってる弁当を忘れるし、愛妻弁当言われても否定しないし、なんなんあいつ!?』
『さあ?本人に聞いてみれば?』
ゆかりはケラケラ笑いながら、ジロタを指差した。
ジロタがこちらに気づいて、笑顔で近寄ってきた。
『何々?呼んだ?』
ジロタは私の肩に手を置いた。
私がジロタの手をシュッと払うと、ゆかりがニヤニヤしながら聞いた。
『浅井くんは、何で自分で弁当持ってこないの?麻央が迷惑だって。』
私は、コクコクうなずいた。
『ほら、それが妻の役目じゃん?』
ジロタが、ヘラヘラしながら答えた。
『妻じゃねー!!』
思わず、ジロタの胸ぐらを掴んでいた。
『冗談、冗談、落ち着いて。』
ジロタはヘラヘラしながら、自分の席に座った。
『でもさ、ゆかりちゃん、そんなに毛嫌いすることないじゃんね?麻央とはつい最近まで一緒に風呂に入ってたのに…。』
クラスメートはどよめきたった。
つい最近て、小5までじゃんか!!
私が何も言えず、呆然としていると、チャイムがなった。
『あ、麻央、またあとで!』
ゆかりは逃げるように去っていった。
クラスメートのひそひそ話のネタは私とジロタに違いない…。
『何であんなこと言ったのよ!?』
夕飯の時間、ジロタに噛みついた。
『事実でしょ。それに、前みたいに麻央と仲良くしたいし。あ、今日一緒に風呂入る?』
相変わらずヘラヘラしたジロタの顔面に、座布団を投げつけようとしたら、伯母さんが、お玉でジロタのおでこを叩いた。
『麻央ちゃんも年頃の女の子なんだから、変なからかい方しないの。』
『へーい。』
母親にはさすがに勝てないのか、ジロタは大人しく味噌汁をすすり始めた。
いつの間にか、私の座布団も母によって取り上げられていた。
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