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ワタシとジロタのキョリ
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家に戻ると、なんだか疲れて、学校に行く気分になれなかった。
『ただいま…。』
『麻央、どうしたの?』
お母さんが顔を覗かせた。
『気分悪くなった…。』
『そう、じゃあ、休んでな。』
いつもは、こういうとき怒る母親なのに、今日は何故か優しかった。
部屋で鏡を見たら、髪はボサボサで青白い顔をした私が写っていた。
ああ…お母さん、これを見たんだ…。
そのまま私は、ベッドに倒れこんだ。
携帯で、ゆかりにメールしようとして、気がついた。
鞄…ジロタが持ってったままだ…。
まあいいや。寝よう。
私は、イヤホンをさして音楽を聴きながら、ゆっくり目を閉じた。
爆音だけど、すぐ意識が遠退いた。
目を覚ますと、もう日が傾いていた。
まだジロタは帰ってないだろうな。
イヤホンを外すと、ジロタの部屋から音楽が聞こえた。
ジロタ帰ってる?
時計を見たら、6時近くだった。
夕飯…顔会わすの嫌だな…。
でも、昼飯も食べてないし、お腹空いたな…。
しばらく部屋で考え込んでいたが、トイレに行きたくなって、ドアを開けると、何かに引っ掛かった。
私の鞄だった。
持ち手の下にルーズリーフがあった。
ジロタの字で『ごめん』と書かれていた。
なんだか、余計、会いづらくなっちゃったな…。
トイレから帰ると、そのままベッドに潜り込んだ。
ねえ、ジロタ…今、ジロタの部屋で聞いてる曲は、私には痛いよ…。
気がつくと、涙が溢れていた。
コンコン…。
『麻央、開けるよ?』
お母さんだった。
『ねえ麻央、ジロちゃんと一緒だったでしょ?それでね…、まさかとは思うけど…』
なんだか、お母さんは言いにくそうにしていた。
『ジロちゃんに乱暴なことされたの?』
お母さんの言葉に、一瞬、戸惑ったが、すぐに首を横に振った。
『ジロタがそんな事するわけないじゃん。大丈夫。』
私は、無理に笑顔を作った。
お母さん、甥っ子を疑うほど、私の心配してたんだ…。
『本当に、何もない?』
『何もないよ。夕飯も食べるから。』
私は、お母さんの後ろについて、キッチンへ向かった。
そこにジロタはいなかった。
少し、安心した。
朝、ジロタはいなかった。
弁当箱もなかった。
そうだよね、気まずいよね。
自分が悪いって思ってるのかな?
私も、私が、悪かったのかな?
また、ジロタは置いていっちゃうのかな?
洞窟に行ったときみたいに。
本当は、嬉しかったんだ、ジロタが私に構ってきた、中2の冬。
久しぶりにジロタを近くに感じたから。
だけど、また、ジロタは離れていこうとしている。
違う。
また私から離れたんだ。
あのときだってそう。
離れるのはいつも私からだった。
嫌だ。
ジロタと離れたくない。
嫌だ。
学校にいかなきゃ。
ジロタに会わなきゃ。
ジロタに話さなきゃ。
今の私の気持ち。
怖いけど、今逃げたら、もう、ジロタは私から離れていく。
いかなきゃ。
私は、息を吸い込んで、歩き出した。
頑張る。
『ただいま…。』
『麻央、どうしたの?』
お母さんが顔を覗かせた。
『気分悪くなった…。』
『そう、じゃあ、休んでな。』
いつもは、こういうとき怒る母親なのに、今日は何故か優しかった。
部屋で鏡を見たら、髪はボサボサで青白い顔をした私が写っていた。
ああ…お母さん、これを見たんだ…。
そのまま私は、ベッドに倒れこんだ。
携帯で、ゆかりにメールしようとして、気がついた。
鞄…ジロタが持ってったままだ…。
まあいいや。寝よう。
私は、イヤホンをさして音楽を聴きながら、ゆっくり目を閉じた。
爆音だけど、すぐ意識が遠退いた。
目を覚ますと、もう日が傾いていた。
まだジロタは帰ってないだろうな。
イヤホンを外すと、ジロタの部屋から音楽が聞こえた。
ジロタ帰ってる?
時計を見たら、6時近くだった。
夕飯…顔会わすの嫌だな…。
でも、昼飯も食べてないし、お腹空いたな…。
しばらく部屋で考え込んでいたが、トイレに行きたくなって、ドアを開けると、何かに引っ掛かった。
私の鞄だった。
持ち手の下にルーズリーフがあった。
ジロタの字で『ごめん』と書かれていた。
なんだか、余計、会いづらくなっちゃったな…。
トイレから帰ると、そのままベッドに潜り込んだ。
ねえ、ジロタ…今、ジロタの部屋で聞いてる曲は、私には痛いよ…。
気がつくと、涙が溢れていた。
コンコン…。
『麻央、開けるよ?』
お母さんだった。
『ねえ麻央、ジロちゃんと一緒だったでしょ?それでね…、まさかとは思うけど…』
なんだか、お母さんは言いにくそうにしていた。
『ジロちゃんに乱暴なことされたの?』
お母さんの言葉に、一瞬、戸惑ったが、すぐに首を横に振った。
『ジロタがそんな事するわけないじゃん。大丈夫。』
私は、無理に笑顔を作った。
お母さん、甥っ子を疑うほど、私の心配してたんだ…。
『本当に、何もない?』
『何もないよ。夕飯も食べるから。』
私は、お母さんの後ろについて、キッチンへ向かった。
そこにジロタはいなかった。
少し、安心した。
朝、ジロタはいなかった。
弁当箱もなかった。
そうだよね、気まずいよね。
自分が悪いって思ってるのかな?
私も、私が、悪かったのかな?
また、ジロタは置いていっちゃうのかな?
洞窟に行ったときみたいに。
本当は、嬉しかったんだ、ジロタが私に構ってきた、中2の冬。
久しぶりにジロタを近くに感じたから。
だけど、また、ジロタは離れていこうとしている。
違う。
また私から離れたんだ。
あのときだってそう。
離れるのはいつも私からだった。
嫌だ。
ジロタと離れたくない。
嫌だ。
学校にいかなきゃ。
ジロタに会わなきゃ。
ジロタに話さなきゃ。
今の私の気持ち。
怖いけど、今逃げたら、もう、ジロタは私から離れていく。
いかなきゃ。
私は、息を吸い込んで、歩き出した。
頑張る。
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