何でも屋さん

みのる

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エピローグ~ハッピーエンド(?)~

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世間では新入生や新社会人の姿が見始める頃、店主から暇な時にでも店に来て欲しいと言われた中村夫妻が何でも屋を訪れていた。
中村が不思議そうな顔をしながら店主に尋ねる。

『珍しい・・・つうか初めてだよな?おっさんの方からが店に来て欲しいって言うのは?
それはともかくいったい俺ら夫婦を呼び出して何の用が有るんだ?』

店主は少し寂しそうな感じの複雑な顔をしながら切り出した。

『 いや、実はそろそろ店を閉めようかと思っ『店を閉めるって急にどうしたんだよおっさん!?』

店主が話し終える前に中村が驚いた顔をしながら被せて来た中村奥さんも“えっ”と言って口元を手で押さえている。

奥さんも寂しそうな顔をしながらが店主の代わりに話し出す。

『実はね、この街は私らにはちょっと賑やかすぎてねぇ・・・、それで私らに合ったもっと静かな田舎の方へ引っ越そうかと思ってるんだよ・・・』

話しを聞き終えた中村が疑問に思い尋ねる。

『店を閉めるのはわかったけど、俺ら2人を呼び出さ無くても俺一人でも良かったんじゃないか?付き合いは長いから寂しくはなるけどさ・・・』

と、ここで店主が割り込んできて、

『そこでだ、お前さんたちは今アパート暮らしだろ?だからここに住んで何でも屋をやったらどうかと思ってな、どうせ遊んでて暇だろ?』

中村は呆れた顔をしながら、

『俺達が住んでるのはマンションで、これでも一応は働いてるからな。
大事な事だからもう1回言うが、俺達はマンション暮しで働いてるからな』

と言うと、店主は不思議そうな顔をしながら問いかける。

『アパートでもマンションでもどっちでも一緒だろ?』

不思議に思った中村が問いかける。

『アパートとマンションは違うだろ・・・そうなのか?』

店主は自慢げに言う。

『あぁ、知らない人も多いが本来は呼び名が違うだけで明確に区別する指標は無いんだよ、あくまでも各不動産会社等が自社規格で分けてるだけさ』

驚いた様子の中村は、

『それは知らなかったぜ・・・
それはともかく話しを戻すが、騒音問題も有るし一軒家に住めるのは良いっちゃあ良いんだけどな、仕事の方も実家の家業は兄貴が継ぐし俺はネット販売だから辞めても差し支え無いけど、何でも屋をやる気は無いかって事は商品を譲ってくれるのか?
けど商品が売れてしまったら仕入先が分からないし、いつぞやみたいに打ち上げ花火なんか買いにこられても仕入れする資金なんか無いぞ?』

と言うと店主は返事をしながら何やらゴソゴソとしている。

『勿論商品は譲るつもりだし、仕入れに関して秘密が有ってね・・・っと、これが仕入れの秘密さ』

と収納箱をドンとカウンターの上に置いた。

収納箱を見た中村は不思議そうに問い掛ける。

『見た感じ、只の収納箱だよな?俺が借りパクしたどんな物でも入る箱の大型の箱か何かか?』

すると店主は、

『いや根本的に違うよ、お前さんに貸したのは何でも入るってだけの便利な箱で、事前に何かを入れておかないと何も取り出せ無いんだけど、でもこの収納箱は違ってね…欲しいものが何でも取り出せる箱さ、試しに取り出してみなよ』

と中村に使ってみる事を勧める。

中村は言われた通りに収納箱に手を入れて取り出そうとするが“うぉっ!!”と言ってまた収納箱の中へ手を入れたかと思うと招き猫を取り出した。
“これは凄いな”と言ってる中村は、また何かイカガワシイ物でも取り出そうとしたのか顔が赤くなり冷や汗を流している、一方中村奥さんは赤い顔をしながら中村をジト目でみており、店主らに見えないようにこっそりと脇腹を抓っている、何も言わないが中村奥さんは中村が何をとりだそうとしたのかきっと見たので有ろう。
色々取り出した中村は、

『だからこの店は、何でも有って無いものが無いが謳い文句なのか・・・まるで赤い犬型ロボットが持ってる異次元ポケットみたいだな』

と納得した様子で、中村が中村奥さんの方を見て“どうする?“と尋ねると目をキラキラさせながら激しく何度も頷いている。きっと毎日美味しい紅茶が飲めるとでも思っているのだろう。
中村奥さんも乗り気のようだし中村は話を進める。

『こいつも賛成みたいだから、ここに住むのも店を引き継いで何でも屋をするのも別に良いけどよ、でも本当に良いのかよ?こんな便利な箱まで譲ってくれるんだろ?おっさんらはこの箱が無くなったらこれから先不便になるんじゃないのか?』

すると店主は手のひらサイズの箱を取り出して、

『これが有るから平気だよ』

と言いニヤリと笑う。

店主が取り出した箱に見覚えが有った中村は店主に問いかけながらも色々と取り出して遊んでる。

『その箱って…花火大会の時に奥さんが持ってた箱だよな?なるほどね、だからどんなにかき氷が売れても売り切れる事がなかった訳だ』

店主は大笑いしながら答える。

『アッハハハ、まあそういう事さ、何をどれだけ取り出そうと無料だしね』

奥さんと中村奥さんが全然話しに入って来ないので中村がフと横を見たら、中村奥さんがたまを撫でながら奥さんと会話をしている。
また店主の方へ向き、

『なるほどね、品質の割に安くて通常の物と変わらない値段でもやっていけてた訳か…』

と言いながらもまだ取り出し続ける中村がある事に気付き店主に問い掛ける。

『しかし本当に何でも取り出せて便利だな・・・、ん?ちょっと待てよ、なぁおっさんいつぞや鳥の羽が生えたドローンを覚えてるか?』

店主はさも当然のように答える。

『勿論よく覚えてるよ、よく飛んで良いだろ?』

中村の追求が始まる。

『そうそう、どんなに風が強くてもよく飛んで良いんだよ・・・じゃねぇよ、あの時は常連にしか売らないと言われて納得したがな、よく考えたらこの箱で思った物を自由にとりだせるんだから普通のドローンの形のでも取り出せたよな!?
何で鳥の羽だったんだ!?おかげで俺は羨ましがられると言うより、変な物を持ってると奇異な目で見られてるんだぞ!?いったいどうしてくれるんだよオッサン、どういうつもりであんなのを出したんだ!?』

店主はシレッと、

『面白いから』

とだけ答えた。

それを聞いた中村は呆れた顔で答える。

『だと思ったよ、俺をいったいなんだと思ってるんだか・・・
と言っても、もうおっさんとこんな会話も出来なくなるんだな・・・暇な時はよく暇潰しに来てたしおっさんと奥さんのおかけで俺も結婚出来たからな、寂しくなるぜ・・・』

『本当ですよ、たまちゃんとも会えなくなるし寂しくなります。何で急に辞めることにしたんです?もう少し続けても良いと思うのですが・・・』

と話しが終わったのか伊集院奥さんが涙目で横から会話に混ざってくる。色々と有り奥さんに懐いているから思う所も有るのだろう。

店主は、

『結構前から閉めようとは思ってたんだよ、客が少ないと言っても常連さんはともかく、紹介で通い出す客、新規の客が通いだしたりで…結構賑やかになってきてねぇ、商売で設ける必要も無いしもっとのんびりとしたかったってのが本音だね』

と答える。

中村が気になるのか問いかける。

『それで、もうどこに引っ越すのとか決まったのか?』

店主は引っ越し先が決まってるから答える。

『あぁ、山手の方へ引っ越す事にしたんだよ。』

引っ越し先を聞いた中村と中村奥さんの顔が能面の様な無表情になる。

重苦しい空気が流れて中村がおもむろに口を開く。

『・・・山手の方面と言ったらここから600メートルくらいしか離れてねーじゃねーか!!確かにここに比べたら民家も少ないけど、さほど差はねーぞ!?ほんとにまったく…』

中村奥さんが提案をだす。

『引越し先からここへ通って店を開くと言うのはどうでしょう?』

店主は即答する。

『面倒だからな』

中村奥さんがまた提案する。

『では、引っ越し先で何でも屋を開くと言うのはどうでしょう?』

店主はまたもや即答する。

『移転しても客がそのまま着いてくるからやだな、下手してら山手の客も居着く』

ここで初めて中村と中村奥さんの息がピッタリと合った

『『駄々っ子か!!』ですか!?』

店主は平然とした顔で店主が聞く。

『面倒な物は面倒だからなぁ、で何でも屋をやってくれるんだろ?』

中村は呆れた顔で、

『しょうがないから引き継いでやるよ、何より一軒家に住めるのはありがたいしな、でいつ店を閉めて引っ越しするんだ?』

と何でも屋を引き継ぐ事を承諾し引越し日を尋ねる。

すると店主は簡単に答える。

『いつでも出来るよ。なんなら今すぐにでも引っ越せるよ、それと注意点として宣伝はするなよ・・・平和に暮らしたいならね』

と重要な事に念を入れて釘を刺す。

一通り話しを済ませた中村は、

『話も済んだし…とりあえず帰るとするよ、じゃあなおっさん、うちも引越しの用意・・・つってもおっさんに借りた収納箱が有るから楽だけどな、ははははは』

と中村奥さんと帰っていく。


それから数日後…
店主と奥さんは店を閉店にして引っ越しして行き、中村夫婦が何でも屋へと引っ越してきて何でも屋中村がはじまるがそれはまた別のお話し・・・と言いたい所だが、1年と立たずして中村の所為で何でも屋を事実上の閉店に追い込んでしまう。



何でも屋・完
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