おひとりさま

みのる

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おひとりさま

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俺、43歳。特に恋愛にも興味無いので生涯独身を貫かんとしている。

『亮ちゃん、アンタ確か今日誕生日だろ?
ケーキ食べるだろ?』

そう俺に親しげに話しかけるはお向かいにお住いの田中さんだ。(女性、推定70)
気の毒な事に旦那さんには10年前に病で先立たれたらしい。

『ケーキ···いや、別に要りませんが(汗)
てか!なんでまたウチに上がり込んでるんですか⁉️』

『別に良いだろ、知らん仲でも無いし』

まぁ···もう慣れましたけど。
年取って別に今になって喜ぶ歳でもありませんし?
甘いモノもとりわけて好みませんしね。

『ただいまーーー‼️ばあちゃん、オヤツはー?』

あ、お隣の雅俊くん(7)が学校から帰って来た。
てか!アナタのウチも向かいですが。
俺のウチは風呂無し1間の6畳のアパートである。
田中さん御一家は小さな一軒家。

『戸棚にかりんとうがあるよ』

『えーーー!またかりんとう⁉️1週間連続だよね、おれ、あきたーーー』

『じゃあ今日のオヤツなしだね』

『食うよぉ、食べますったら』

『ただいまーーーっ!バアちゃん、オヤツはぁ?』

あ、コレまたお隣の千代美ちゃん(10)のお帰りだ。

まぁ、この通り『独身』求職中の俺を憐れんでなのか···お向かいの田中さん御一家が勢揃いで何かと気にかけ過ぎてくれている。

あ、因みにこのきょうだいには父親が存在していて、その父親が田中さんの息子なのだそうだ。
母親はまぁ、皆様のご想像にお任せします。

『戸棚にかりんとうがあるよ』

それを聞くと即座に千代美ちゃんも眉間にシワを寄せる。

『えぇーーー‼️またかりんとう⁉️
たまにはちがううモノが食べたい!』

『千代美も今日のオヤツは要らない···と』

『えぇ⁉️···························いる···』

『それより!雅俊に千代、これからケーキ買いに行くよ!ランドセル置いて来な』

オバチャンは白い割烹着を身につけたままふたりに言う。

『そうか、きょうはおじちゃんのたんじょうびだったね!おじちゃん、おたんじょうびおめでとう‼️』

雅俊くんと千代美ちゃんは嬉しげに俺にまとわりついてきた。

『けぇき♪けぇき!』

楽しそうなふたりの声が狭い俺の部屋で弾けた。

なんか···ムズがゆいな···

ランドセルを家に置いたふたりとオバチャンは近所の商店街にケーキを買いに向かった。
俺は万年床にゴロリと横になる。

血の繋がりとか別になぁんも無いけど、今どきこんな関係ってちょっとイィだろ?
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