『サエキ家政夫紹介所』

みのる

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「元・ホスト咲良」三度………

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『あれっ!?
もしかして………咲良とちゃう?』

ゲッ…………晶楽アキラ…………

僕は狼狽えた表情は微塵たりとも浮かべずに満面の笑みで、

『えぇ、「サエキ家政夫紹介所」から参りました「咲良」です。
本日は僕をご指名いただきありがとうございます。』

晶楽は僕の顔を穴のあきそうな位にジィッと見つめながら、

『今はそうかもしれへんがな?
アンタ!昔「7Carat」にいてたやろ?
アタシアンタを指名した事あんねんから間違えへんで!?

その三年経っても変わらん!
超!!ウザイ長ったらしい髪!!
その名前も!
そうやたらと世の中に出回ってるモンでもないやろ!?←そうなの?
"家政夫に「咲良」っつー男が居てる"て噂、聞いたんで試しに呼んでみたらやっぱりな!!
こんなトコロに雲隠れしくさりおって!』

僕は晶楽の言いたいことを最後までとりあえず耳に入れてそれでも表情は変えず。

『人違いですよ。(ニコニコ)
同じような顔の人間は世の中には三人はいるって言うし。
僕は五年前から今の仕事してますしね?』



「「アンタやな?
ウチの友達に貢がしてるホストっつーヤツは?」」

その女は唐突に僕の店に乗り込んで来るなり、そうまくし立てた。

「「は?何のことでしょう?」」

「「寝ぼけた事言うてるんちゃうで!
朱音アカネが毎晩ココに入り浸ってアンタを指名しとんのは調査済みなんやで!?」」

あの………『アカネ』って言うのか…………


って………イカンイカン!
またトリップしてたじゃないか。

「学ぶ」ということを心得ている僕は今度はしっかり我に返って依頼者に「今日の依頼内容」を確認する。

『本日の御依頼は「とりあえず!二時間で家事全般!!」
という事で構わなかったですよね?』

ひとり暮らししているのだろうか?
にしては家は二階建ての一軒家だし、しかも余程に家事に慣れていないのかかなり!部屋が乱雑である。

『…………そうやで?』

あまりの部屋の散らかり具合に僕がやや唖然とした様子を依頼者は感じ取ってしまったらしい。
些か御機嫌がよろしくない。
だが、今日の晶楽の御機嫌は………というか普段から!こんな感じだったかもな。
要するに「直ぐにキレる」性格は彼女と言う人間を一言で表す場合に申し分無しの言葉である。

…………偏見かも知れないが、彼女の顔を一見してもその様子は伺える。

キュッとやや天を向き気味な派手に化粧を施された目尻。
それとは真逆に地に引きつきそうな程にへの字結びの真っ赤な唇。

「「朱音の生活、今めっちゃ!キツそうやねん!!
朱音は言わへんけども………
この店につぎ込んでるんやろ!! 」」

「「さて、何のことですかね?
『朱音』という方が一体どなたの事が僕には分かりませんし。
………それよりその方個人の問題で、貴女には何の関係も無いのでは?」」


…………おっと、、、

『それでは、まずは部屋の掃除からで構いませんか?』

僕が依頼者に確認するも?

ぐぅぅぅぅぅうううううううっ!!

『………の前に、お昼ご飯作りますね?
何を食べたいですか?』

ヤレヤレ、昼飯も食ってないのか。
そう問う僕に、やや恥じらいを見せながら晶楽はボソッと答える。

「…………お、オムライス…………」

それなら僕の得意料理だ。
早速手早く戦闘準備を済ませ、家政夫皆揃いのタイマーをセットして台所に向かう。


カパッ☆


………………僕らを呼んでくださる人は大抵!冷蔵庫をありとあらゆる食料で埋めつくしといてくれるのだが…………(苦笑)
この家は申し訳程度しか無いではないか。

レトルトのハヤシライスとタマゴ一個を探し当て、鍋に水を入れる。

『あ、ウチ"炭水化物抜きダイエット中"やねん。』


ぇえっ!!コメ禁止のオムライスって一体どないな感じやねん!?(憔悴隠せぬ咲良)


『……………美味そうやん………』

『仰せの通りに「コメ」は使用しておりませんので。』


見た目美味しそうにタマゴが割れてるオムライスにかかるハヤシライスの海。
その中身は果たして…………

高い戸棚の隅に隠すように置かれていた「ソレ」をコメの代用品とさせていただいた。

晶楽がコメの代わりに普段食していたものとは………

粒コンニャク!!


『……………………………………♪♪♪』

本人は何も言わないけど、その表情が美味なる事を物語っている。

『ごちそうさまでした………(合掌)』

『ハイ、お粗末様でした。』

颯爽と一人分の食器を洗い、いよいよ「本日のメインイベント」に差しかかる。



………後一時間半程か…………

タマゴ型のタイマーにチラリ目をやり、残り時間を確認する。

というか、この残りの食器からどうにかしないとな………

流しの横に積み上げられたまま放置されている汚れた食器を見てまた苦笑いの僕。

僕は両腕の袖を捲り、闘志を燃やす。



「っハァッ!…………ハァッ!!………
つっ………疲れた…………ゼハーゼハー」

三十五分前までは山積みであった食器達は見違える程に美しく生まれ変わってカゴの中でひしめき合っている。

僕にも少し休息が欲しいところだが!
もうそんな無駄な時間など僕には残されていないのだ。


「「ありがとう、咲良。
サヨナラ…………」」

「「またのお越しをお待ちしております」」


そうして二度と僕の店に朱音が姿を見せる事は……遂には無かった。
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