初代桑原家の育児戦闘記

みのる

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忘れられない…

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おれは、いつか、公園で遊んだ『あの子』の事を忘れられなかった。
ー名前も知らないあの子ー
また、会える日、来ないかな?一緒に、また公園で遊びたいな…。
名前も知らないあの子を想い、夏祭りで得た赤い金魚さんに、『ソラミちゃん(仮名)』まで付けて、あの子をずっと想ってた。誰にも相談出来ずに、ずっと1人で抱え込んでた。

(また、あの公園に行ったら、会えないかな⁉)
ふと、思いついた考え。今日の帰りに、寄ってみようかな?
授業中、ずっと頭の中を『あの子』が支配してた。
5時間目の終わりの合図が鳴り、終わりの会も終わり、1番に教室を出る。ひたすらに公園を目指す。

『ハァッハァッハァッハァッ…』

公園に着き、呼吸を整える。子どもの数はまばらだ。辺りを見渡すと、『あの子』らしい人影を感じない。おれはゆりかごに1人で座った。


『秀くん⁉』

おれを呼ぶ女の子の声。振り返ると、クラスメートのメイちゃんが、恥ずかしそうに立っていた。おれは、メイちゃんに、

『なんか、おれに用?』

と素っ気なく聞いてしまう。メイちゃんは、モジモジしながら、

『まさか、ここで秀くんに会えるとは思わなかったな…』

気のせいか、嬉しそう。

『うん、そうだね…』

思わず、乾いた返事をしてしまう。おれも、時々は公園で遊ぶからね。

『秀くんも、そう思ってくれる⁉』

…あれ?メイちゃん、何かカン違い?

『え、う、うん…』

ああ、おれって馬鹿だ!

さらにモジモジしながら、でも意を決したように。

『私、秀くんとクラスが同じになった時から、秀くんのこと…好きになっちゃったみたい…』

と、言い、顔を真っ赤にした。生まれて初めて受ける告白。でも、おれは……別の子が好きなんだ…おれは、しばらく沈黙し、やがて本音をメイちゃんに伝えた。

『おれは…他に好きな子がいるんだ…ごめんね…』

メイちゃんはおれの言葉をなかなかうまく飲み込めず、しばらく呆然と立ち尽くしていた。考えて、自分が振られたのだと気付くと、

「そっかぁ…」

と呟き、走ってこの場を去っていった。ごめんね、メイちゃん。

おれは、日が落ちかけるまでゆりかごで待っていたが、『あの子』は現れなかった。
そろそろごはんだ、おれは立ち上がってみんなの待つ家に帰った。

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