初代桑原家の育児戦闘記

みのる

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卒業

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オレは小学校を今日卒業する。
(今日で、この普段着な生活とも、お別れか…)
中学校からは、制服がある。いわゆる『学ラン』と呼ばれるやつだ。オレはそれを着るのが、少し楽しみであった。最後の日はちょっと子ども用のスーツとか着て、式に挑む。

普通どおりに家を出る。秀と共に。すると、最後の通学途中で、女子に待ち構えられていた。
それを見た秀は、

『そしたら、おれは先に行くからね』

そそくさと行ってしまった。

『…何か、オレに用?』

よく見ると、あの‼いつものタラコ唇さんではないか?顔を赤く染め、オレのことも直視できないみたいだ。
しばらく沈黙が続き、漸くタラコ唇さんは口を開いた。

『私、あの「文化祭」の時から…貴方のことがずっと好きです!今日でお別れだから…気持ちを伝えたくて…』

タラコ唇さんは、ずっと視線を合わさないままだ。

オレはいつもの如く、“残酷なこと” を彼女に告げようとした。するとタラコ唇さんは、

『いいんです。返事は分かっています。…ただ、私の気持ちを伝えたかっただけで…私、こんな唇だし…』

そう言って、足早に去ってしまった。
ボーゼンと後に残されたオレ。

『…急がないと…』

1人学校に急いだ。

それから更にこれが最後とばかりに、2人から告白を受け丁寧にお断りをして学校に向かう。
教室では、女の子達にサイン帳の記入を求められた。それくらいなら…と思って承諾したオレには、大量のサイン帳の記入が待っていた。

それから、式の時間になる。整列して、オレたち6年生は体育館に向かう。中では我が校のオーケストラ部が、厳かな入場曲を演奏していた。オレたちのクラスの入場だ。保護者や在校生からの温かい拍手。6年生全員の入場が終わり、『卒業式』の開始。
校長の挨拶に、来賓の挨拶。それからいよいよ在校生からの送辞、オレ(卒業生)からの答辞。
ドキドキしながら、ステージに上がり、マイクに向かう。

『桜の花も綻び、オレたちの門出を祝してくれる今日…(中略)   ◎✕年  3月25日   代表   桑原  カクラ』
緊張して、自分の席に戻る。沸き起こる拍手。
(何とか最後のお役目果たせたな…)
オレは肩の荷が降りた。
卒業生全員への卒業証書授与。そして『仰げは尊し』斉唱(卒業生)それに対し、在校生の『贈ることば』斉唱。
最後に全員で『校歌』斉唱。気づけばオレは涙してた。

涙流しながらの退場。(オレ、カッコ悪いな…)でも今日くらいは、アリ‼
クラスに戻り、最後の担任のお話。卒業証書、最後の通知表の受け渡し。

『みんな‼卒業しても、どうか元気で…』

先生は、泣いていた。それでオレももらい泣き。
オレは最後の号令をかけた。

『きりーつ!』『気をつけ!』『れい!』『先生!今までどうも、ありがとうございましたぁ‼』
オレを筆頭に、クラスのみんなからも『ありがとうございました!』

名残惜しくも、迎えに来た母親と共に、クラスを後にするオレ。

母親が、

『桜のところで、写真撮ったげるよ?』

オレは記念に、写真を母親と撮ってもらうことにした。近くの同じ卒業生に声をかけて。快く引き受けてくれた。

『行きますよ~?ハイ!』

カシャ。2枚撮ってもらい、お礼を言った。

その時、突風が吹き、思わずオレは目を瞑る。
桜の花びらが、フワリと風に舞った。

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