みのる的童話集

みのる

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桃太郎【現代版】

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おそらく最近のお話です。
とあるところにおじいさんとおばあさんが暮らしておりました。

おじいさんとおばあさんには残念なことに子どもがありませんでした。

ーある日のことー
おじいさんは自分の持ち山へ枝の剪定に、おばあさんはクルマで夕ご飯の買い出しに出かけました。

因みにおばあさんは74歳でしたので、クルマの免許の年齢的にはギリギリ高齢者ドライバーではありませんでした。

とある商業施設の立体駐車場の端の方にクルマを止め、降りると………

おぎゃあ、おぎゃあ!!

『あら、こんなところに……
まさか!本物の赤ちゃんが?』

キョロキョロと辺りに誰もいない事を確認すると、おばあさんは!泣きじゃくる赤ちゃんをゆりかごごと速攻で拾い上げ、今降りたばかりのクルマへと逆戻り。
結果何も買い出す事なく、来た道を爆走するのでした。


『おじいさん!おじいさん、見ておくれよ!?』

おじいさんは山の剪定に出かけたハズでしたが、30分程で飽きてしまい家に帰っていたのでした。

因みにおばあさんが買い出しに出た先は、家から片道クルマで30分かかるところにありました。

『なんだなんだ、騒がしいの?………って………
お、おまえ!?まさか……』

おばあさんが抱きかかえていた赤ちゃんを見て激しく狼狽えるおじいさん。


『買い物に行ったとばかり思っていたのに!!
遂に犯罪に手を染めてしまったのか!?』

まぁ、誰しも考えそうなオチにおばあさんはしっかりと赤ちゃんを守りながらズッコケました。

『いえいえ、おじいさん。
この子はスーパーの駐車場で拾ったのよ♪
ホラ、可愛いでしょう?』

『何!?拾っただと?
うーーーむ、瞳がクリクリしとってキュートだの♡』


おじいさんもおばあさんも、その赤ちゃんを然るべき場所に届け出るという案には行き着かず、そのままおじいさんとおばあさんに育てられることになってしまいました。


『そうだわ!この子の名前は(何故か)「桃太郎」よ!!』

……………そのネーミングは一体何処から来たのか…………(謎)

よくよく見ると、この子がその時着ていた服に桃がプリントされていたとか?


ーそして普通に16年後ー
桃太郎はふたりの手でスクスクと立派に育ちました。

その頃、おじいさんとおばあさんの住まう山には「鬼ヶ島」という族が住み着いており、静やかな深夜の山をバイクで爆走するというはた迷惑な行為をはたらいておりました。


『ジィさん、バァさん。
俺がいっちょ!ヤツらをシメてやるよ』

肝っ玉だけは!10人前。
いやいや!と慌てに慌てたおじいさんは桃太郎に言い聞かせます。

『よし!桃太郎、やってくれるか。
だがひとりは危険だ。
僕の親戚に若いのが3人いるから、お供にするとよい』

あれ!?
おじいさん、止めるのと違うのですか!?

おじいさんは胸ポケットから最新型のビグホを取り出すと、3人にRAINで連絡を取るのです。

『3人とも今スグ来てくれるだと。じゃあ頼んだぞ、桃太郎』


奥からやってきたおばあさんは桃太郎に『とあるモノ』を渡しました。

『桃太郎、頑張ってね♪』

………さいですか…………



『『『ちわーーーっっっス!!』』』

玄関より3人の声が響きました。

『おぉ、おぉ。お前たち!
待っていたぞ』

立っていたのは全身を白コーデで包んだ、見た目人懐っこそうでのぉまるそうな青年。
全身毛むくじゃらな、耳の大きな青年。
そして最後に紺色の長い髪に色とりどりのアクセサリーを着けた、ミニスカートの女子。

『……要件はRAINで伝えた通りなのだが………』

とのおじいさんのことばに、女子からのモノイイが。

『でもぉ、「無料タダ」ってゆうワケにはいかないよねぇ?』

待ってました!と言わんがばかりにおばあさん。

『桃太郎!さっき渡した「とあるモノ」を!!』

言われた通り、おばあさんに先程の『とあるモノ』を返品する桃太郎。

『報酬は………コレさ!!(キラリーーーン♡)』

『『『引き受けたぁぁぁっ!!!』』』

差し出したおばあさんの手には
「タムチム  【ホワイトチョコ味】」
「うまかバット【コンポタ味】30入」
「でんでん焼き  30入」
が神々しく鎮座しておりました。
(※あくまでも作者の趣味です)


桃太郎、通称:イヌ(※白いイヌみたいだから)通称:サル(※サルみたいだから)通称:キジ(※前記に同じ)は「鬼ヶ島」の巣窟に乗り込んでゆきました。


『『『『いざ!尋常に!!勝負!!!』』』』

桃太郎御一行様が「鬼ヶ島」を攻め込んだのはおじいさんに招集を受けた翌日の早朝。

『な、なんだぁ~~~!?』

チーム「鬼ヶ島」の族は今まさに!『本日の業務』を滞りなく終え、それぞれの家に帰宅しようとしていたところでありました。

『アンタたち、一体何者なんだ?』

チーム「鬼ヶ島」のヘッドらしき人物がメット装着のまま桃太郎御一行様の元へ歩み寄ります。
族の十数人ほどのメンバーは、「敵(?)」にドギツイ眼光を放ちます。


~視線と視線が合わさったその時~

…………桃太郎とチーム「鬼ヶ島」の頭の間を同時に駆け抜けた衝動…………



『オマエたち!この山で走るのは今日でオシマイだよ、チーム「鬼ヶ島」は今日で解散だ』

『えぇっ!?お頭!!なんで…………』

族のメンバーからのブーイングも聞こえぬフリ。
チーム「鬼ヶ島」の頭はメットを外して桃太郎に言うのです。

『そこのアンタ、コレでイイんだろ?
………そろそろ潮時とは思ってたんだ』

メットより零れ落ちる美しい黄金の髪。ナチュラルカラーに縁取られた唇。
桃太郎にまっすぐに向けるそのまなざし。

『あ、あぁ…………』

桃太郎もその熱視線を逸らしません。


『………素敵…………♡
そこいらの男子よりも………』

此処にもいつもの表情ではない人物がひとり…………(合掌)


『じゃあ……乗りな?』

自分のバイクの後ろに桃太郎を誘い、スペアのメットを手渡す女元・頭。
誘われるがままに桃太郎は頭の後ろに乗り込むのです。


『しっかり捕まりな!』

愛車の爆音と共にふたりは旅立つのでした。

ー誰にも邪魔されない、ふたりだけの巣居意翔羽亜留吐へー

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