超人類無双~俺は進化し続ける

よなぷー

文字の大きさ
4 / 39

しおりを挟む
 これだ。俺が求めていた喧嘩は。下手したら命を落としかねない、極限のやり取り。プロスポーツ界じゃ即禁止されるような生命の削り合い。わくわくして、どうにも笑みが止まらなかった。

「もっと来いよ、このデク人形が」

 俺は悲鳴を上げる内臓を無理矢理押さえつけ、今度はお互い同時に相手へおどりかかった。魔族は俺の顔面への肘打ちを狙ったが、俺は身を屈めてかわした。そして手刀一閃! 奴の脇腹から反対側の肩にかけてを、斜めに斬り上げた。

 人形は真っ二つに裂かれ、悲鳴もなくその場に崩れ落ちた。今まで人型になるよう繋いでいた何かの力が失われ、ただの木屑きくずとなる。そのまま動かなくなった。

 勝った……のか? もう喧嘩はおしまいか? 俺は木片を踏みつけると、案外簡単に決着してしまったことに欲求不満を覚えた。もうちっと楽しませてくれるかと思ったのに。

 と、そこで首根っこをつかまれる。ミズタの落雷が鼓膜にとどろいた。

「馬鹿! さっきから人目を集めてるじゃない! さっさと逃げるわよ」

 俺たち3人は街の上空を逃げていく。去り際魔方陣はどうなったかと見てみると、跡形もなく消え失せていた。野次馬たちが集まってきている……



「何をニヤニヤ笑いながら戦ってたのよ。キモいわね」

 俺の案内で自宅へ向かう途上、ミズタは背後から悪態をついた。見下ろす街は帰宅する人々で賑わっている。今更隠す気も起こらず、俺たち3人は堂々と空を飛んでいた。それにしても、上から眺める夜景ってのも悪くないもんだ。

「うるせえな、そんなこと言うんだったら助けてやらねえぞ」

 俺が言い返すと、やり取りを聞いていたマリが嬉しそうに口を挟んできた。

「では鏡さん、神界に来て私たちを救っていただけるのですね?」

「まあな。さっきみたいな奴をぶっ飛ばせばいいんだろ? お安い御用だ」

 俺は人形との戦いで得た高揚感を、心中何度も反芻はんすうしていた。あっけなく終わってしまったが、それはここしばらく味わえなかった興奮だった。あんな体験が出来るならこの世の果てまでも行ってやる。喧嘩マニアの血が騒いで仕方なかった。

「あそこだ」

 俺は自宅――2階建ての築12年だ――を指差した。窓を開けて出てきたはずだが、果たして――

 開いていた。俺は安堵し、物音を立てないよう気をつけながら、窓をスライドして中に入った。ミズタとマリも続く。俺はカーテンを閉めると、明かりの紐を引っ張った。蛍光灯の白色光が室内を浮かび上がらせる。一連の過程は誰にも見られなかった、はずだ。

「ふうん、思ったより片付いてるわね」

 ミズタが珍しく俺を褒めて、スプリングの利いたベッドに腰掛けた。改めて見ると、やっぱり可愛いな、こいつ。それに……

「よ、横乳よこちちが……」

 ミズタが気付き、わきを隠すように腕組みした。

「ちょっと、どこ見てんのよ! この変態!」

 下はさすがに何か穿いているようだが、胴体はブラジャーもなく、青い布で前と後ろを隠しているに過ぎない。豊富な胸は両サイドが丸出しで、さすがの俺も鼻の下を伸ばさざるを得なかった。いやー、神族ってみんなこうなのかな。ちょっと楽しみが増えた。

「変態はないだろ、変態は。おめえが変な格好してるのが悪いんだ。なあマリ?」

 マリもミズタと同じ服装だが、こちらは胸もなくスタイルも稚拙ちせつだ。

「私の横乳には関心がないようですね」

 そりゃそうだ、とはさすがに気の毒で言えなかった。マリがわざとらしく咳払いして、この話題を切って捨てる。

「ともかく改めてお話しましょう、鏡さん。私とミズタは神界よりこの人間界に使わされ、超人類の獲得を目的として行動しています」

 俺はあぐらをかいた。しかしこいつら、靴を脱がずに土足で動いて、平気な顔してやがる。日本の文化にうといのだろうか。

「ちょっと待った。そもそも超人類って何なんだ? 人間として更に進化した存在、なんだろうけど、何で俺が超人類になったんだ? 他の奴らはどうして人間のままなんだ?」

 ミズタは白い足を組んで、馬鹿を見物するように俺を見下ろした。

「あんたが『進化の粒』を受け継ぐものだからよ」

「『進化の粒』って何だよ。分かんねえ固有名詞ばかり次々出てくるじゃねえか。基本から説明しろ、基本から」

 マリが絨毯じゅうたんにぺったり座り込みながら語った。

「実は数万年前、今回の神族と魔族の争いを――魔族の神界への潜入を予言していた方がおられました。それが神界の賢者サイード様です。彼女は人間界へ降り立ち、まだ言葉も話せなかった初期の人間たちに『進化の粒』を与えました。ちょうど数万年後、すなわち現在に、受け継ぐものが覚醒するように。しかし『進化の粒』はごくごく稀少きしょうな上、効果も精度も低いものです。口にした人間の子々孫々ししそんそん、ごくごく一部だけが、或いは進化を始めるかもしれない……そんな非常に分の悪い賭けでした。しかし将来の神族の滅亡を恐れたサイード様は、それでも可能性があるならと、計画を実行なされたのです」

 マリは少し暗い顔をした。ショートボブの赤い髪が艶やかなカーブを描いている。

「しかし、何しろ数万年前の話です。神族の誰もが、サイード様の行ないをすっかり忘れていました。伝説のような位置づけで、誰も重要視していなかったのです。そこへ今回の魔族の侵攻です。ほぼ同時に現れた、人間界における異常な力の放射を検知したことで、ようやく私たちはサイード様のなされたことを思い出し、感謝したのです。ですが……」

 いかにも無念そうに首を振る。小さなピアスがつられて揺れた。

「魔族の側も、人間界で覚醒した超人類をスカウトしていたのです。この日本における最初の超人類は、どうやら魔界側に引き込まれたようです。ようです、というのは、私とミズタが――少し手間取って、遅れてしまいましたが――駆けつけたときには、もう異常な力が行方不明となっており、痕跡だけがわずかに残る程度だったからです。乱闘などの形跡がなかったことから、平和裏に取り引きが成立したと見るのが妥当でしょう。そこで私たちは焦り、次の異常な力である鏡さん、あなたに緊急に接触したのです」

 俺は足を投げ出し、斜め後ろに両手をついた。

「あー、俺の他にも超人類に覚醒した奴がいたってことか。しかもこの島国日本に。そいつと喧嘩出来れば良かったのになあ。惜しいことした」

 金色の滝が曲線を描いた。ミズタが髪をかき上げたのだ。

「あんたってホント喧嘩馬鹿ね。でもその方が私たちにとっても好都合かな」

 うるせえ、馬鹿じゃねえよ。喧嘩好きと呼べ。

「それで? おめえら神族や魔族ってのは何なんだ?」

「あたしたち神族は代々の女王の爪から生まれた存在よ。神界は今のハンシャ女王の治世で最盛期を迎えているわ。魔族はそんな神族に、魔界より攻撃を加えてきた一族。こうしている今も、円盤状の神界は魔族に領土を侵されつつあるの」

 円盤状か。まるで天動説みたいな世界だな。

「じゃあ魔界は神界の裏側とかか?」

 何気なくつぶやいた言葉は、どんぴしゃストライクだったらしい。マリが手を打ち合わせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

処理中です...