追放された俺が伝説の鍛冶師になったら、元仲間が土下座してきた〜無能扱いされた少年の異世界逆転譚〜

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第7話 村を襲う炎狼の群れ

王都へ向かう途中、山を越えて三日ほど歩いたころだった。小高い丘に立ち、眼下に広がる村を見下ろした瞬間、異様な煙が立ち上るのが見えた。  
「……何かが燃えている」  
レンも眉をひそめ、風の流れを読む。「煙の匂いが鉄と血に混じってる。自然火災じゃないわね」  
「行こう」  
俺は荷を締め直し、一気に丘を駆け下りた。  

村の入り口に着くと、惨状が広がっていた。家々は燃え、家畜の悲鳴が夜明け前の薄闇に響く。村人たちは逃げ惑い、数人の男たちが必死に桶で水をかけているが、炎の勢いは止まらない。  
「何があった!?」  
叫ぶと、焦げた服の老人が振り返った。  
「炎狼だ! 森の奥から群れが降りてきたんだ! 人を襲って炎を吐いて……冒険者たちも何人も死んじまった!」  

炎狼――低級と言われる魔獣だが、群れになると話は別だ。しかも噂に聞く“進化種”ならば、村ひとつを焼くほどの力を持つ。  
レンが険しい顔で俺を見た。「あなた、どうするの?」  
「もちろん、鍛冶師らしく戦う」  

俺は背中の荷を下ろし、紅鋼石と精霊火の核を取り出した。金槌を握ると、身体の奥で神造のスキルが反応する。  
「神造鍛冶、展開!」  
青白い光が足元を包み、空中に魔法陣が浮かぶ。そこに素材を放り込み、金槌を叩く。連打するごとに、炎の波が音を立てて吸い込まれていく。燃える旋律が響いた。  

「臨時装備生成──対炎属性、冷撃仕様」  
一瞬の閃光。俺の手に現れたのは、氷の脈動を宿した双剣だった。まるで炎を吸い込んだ反動で、空気が凍える。  
「これが……冷鋼双剣《グラシエル》か」  

俺は燃え盛る村の広場へと駆け込んだ。そこには十数体の炎狼の群れ。その中央、他よりも二倍近い体躯を持つ黒い狼がいた。目は真紅に光り、口元から青い火を漏らしている。  
「あれが群れの王か」  

一匹が村人に飛びかかる。俺は間に割って入り、双剣を交差させて火球を切り裂いた。冷気と炎がぶつかり、蒸気が上がる。  
「おおっ、あんたは!?」  
「下がっていろ、避難を優先しろ!」  

狼が次々と襲いかかる。炎の軌跡を描く爪をギリギリで受け流し、双剣で反撃した。刃が擦れ合い、火花が散る。攻撃を受けるたびに、剣が唸り声をあげるように冷たい光を放った。  
「成長してる……この剣、生きてやがるな」  

次の瞬間、黒い王狼が咆哮し、炎の嵐が吹き荒れた。俺は両手を交差させ、スキルを発動する。  
「限界解放・冷結障壁!」  
鋼と冷気が一瞬で盾となり、世界を覆い尽くすほどの氷壁が現れた。炎と氷がぶつかり、轟音が村に響く。  

「レオン! 炎が裏手にも回ってる!」  
レンの声に振り向くと、逃げ遅れた子供たちが納屋の中に取り残されていた。屋根が崩れる寸前。  
「くそ、間に合え!」  
俺は氷壁を展開したまま、左手の剣を納屋へ投げつけた。  
「冷撃解放!」  
凍気の刃が爆ぜ、納屋全体を瞬時に氷結させた。炎が封じられ、子供たちの悲鳴が止む。  

安堵したのも束の間、背後で異様な気配。王狼が咆哮とともに突進してきた。氷を砕き、牙を剥いて俺の身体を狙う。  
避けられない――そう思ったとき、レンの声が響いた。  
「レオン、魂を込めて!」  

彼女の言葉に呼応するように、俺の心の奥で何かが爆ぜた。  
「そうだ、怖れるな――打て!」  
神造鍛冶の炉が再起動する音がした。俺の胸の中に赤い紋章が浮かび、双剣の刃が霊光を帯びる。  

「英雄の真似事は嫌いだが……今くらいはいいだろ!」  
狼の巨体が牙を向けた瞬間、俺は跳躍し、空中で刃を交差させる。  
「二連撃・魂交錯斬!」  
爆音と光。黒い王狼の身体が真っ二つに裂け、霜と炎が同時に舞い散った。時間が止まったかのように静まり返る。  

残った炎狼たちは王の死を悟ったのか、怯え、森へ逃げ去った。燃え残った家々に冷気を送って火を鎮め、ようやく戦いが終わったことを知る。  

「ふう……やっぱり戦うより打つ方が性に合ってるな」  
膝をついた俺の肩に、レンが手を置いた。  
「でも、あなたの“打つ”は誰よりも強い。人の命だって鍛えてる」  
「大げさだ」  
「本当よ。あなたが作った武具は人を守ってる。だから、神造炉はあなたを選んだの」  
その言葉に、思わず息が詰まった。  

夜になり、村長が礼を言いに来た。  
「旅の鍛冶師さん、あんたは恩人だ。この村の炉は壊れちまったが、よければ新しい炉を打ってくれねぇか?」  
「炉を?」  
「昔からの夢なんだ。村に鍛冶場を置いて、若者たちに仕事を与えたい。だが誰も鉄を扱えず、炉だけが朽ちてる」  

俺はその言葉に、ほんの少し心を動かされた。  
「……いいだろう。ただし費用はいらない。素材をいくつか貸してくれ」  
「いいのかい!? 本当に!」  
「その代わり、俺の旅に役立つ何か一つだけ見返りをもらう。取引成立だ」  
レンは笑いながら肘で俺を小突いた。  
「結局、頼まれると断れないのね」  
「鍛冶師はそういう生き物だ」  

俺は夜通しで新しい炉を打った。紅鋼石のかけらと魂鋼の残滓を混ぜた、今までにない構造。翌朝、最初の火を灯したとき、村の人々から歓声が上がった。  
新しい日の光が、煙の向こうに差し込む。子供たちは笑い、昨日の恐怖が少しずつ消えていく。  

俺は空を見上げ、つぶやいた。  
「この手で、世界中の“折れたもの”を打ち直せたら、それでいい」  
レンが隣で頷く。  
「その願い、いつか叶うわ。だって、あなたの炎はもう人のために燃えてるから」  

炎狼の灰が風に舞う。その光景を背に、俺たちは再び旅路を歩きだした。次なる目的地――かつて俺を追放した勇者アデルの拠点へ。  

(第7話 終)
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