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第 24 話
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殿下目線
*
ーー何が起こっている?
俺の脳内はそれひとつに支配されたかのように、考えることを放棄してしまっている。それ程に、目の前の光景は悲惨なものであり、絶対に有り得ないものだった。
ただ、ただ俺は、公爵家だか何だか知らないが、無礼な態度を取った男を会場の外へ放るように命令しただけのはずだった。命令を貰った奴らが男の両脇を抱え、外へ連れ出そうとした、だけなのに。
…どうして、俺の騎士が死にかけてるんだ?
「…ッ!!貴様…ッ!!!」
辛うじて声を上げるも、掴んでいる騎士の首を更に締めるだけの、赤っぽい目を持った男。なにが男の地雷だったのかは分からないが、相当怒っているのは伝わる。
でなければ…視線は騎士に向いているにも関わらず、倒れてしまうのでは、と思うような威圧感。総じて優秀な者が感情が高ぶった時に出る、魔力の圧力だろうと推測できる。
実際に、既にバタバタと倒れてしまっている者も出てきてしまっている。
…ただ、一言。一言、殿下としての制止の言葉を掛ければいいだけの話。けれど、この瞳が自分に向くのが、まるで自分の死と自分の中のナニカが訴えかけてくる。
そんな思考の海にハマっている間に、騎士の顔色は青白くなっていく。…これ以上は騎士が危険。そう判断した俺は意を決して声を出そうとした、その時…
「レイ」
声を出したのは、俺ではなく、背が高い公爵家の男の騎士だった。騎士の声に反応して、顔だけこちらに向ける男。
「ああ…ルーシュさん…なにか…?」
「なにか?、じゃねぇよ。アルフ様をさっさとここから別室へ運べ。」
「…ッ!!」
そう言われたとともに一目散に倒れていた男を姫抱きにし、会場を後にする男。どうやら、あの男がキレていたのは、公爵家の男が倒れた原因が俺の騎士にあると思ったからのようだった。
ーー良かった。
そう思ったのも束の間。…次は騎士の男がなにか声を掛けた瞬間、泡を吹いて2人が倒れた。
「は…?」
「あーあ、だぁからおぼっちゃまのお世話は嫌なんだよなぁ。」
次、アルフ様になんかあったら…殺す。そうサッと近付き俺に言い放ち離れていった騎士は…あまりにも見覚えがあり過ぎて。
あれは…いや、あのお方は。
剣の才能がある者が、一生を掛けて訓練してやっと成れると名高い、王国騎士団。その中のトップである王直属部隊にだったの十という歳でなってしまった、言わばこの国の最後の砦、ルーシュ・アングレード。
父…いや、陛下がアングレードを外へやればこの国は滅亡すると言わしめた存在。
そんな、化け物を従えているアイツは…?
そういえば、アングレードは公爵家当主、アヴィ・レイデーンに仕えていたはずでは無かったのか?確かに、アイツは公爵家次男、と言っていた筈だが、わざわざ名誉も権力も捨て仕えた男はアイツではない。
…はは、そういえば、公爵家といえば、長男以外は最悪最低な人間、というので有名だ。だから、学園で問題を起こさないように公爵がアングレードを付けただけだろう。
そう、無理やり言い聞かせる。首を締めた男。この国最強の騎士。そんな怪物を完璧に従えてる存在なんていない。
殺す、と言われた時の背筋が凍るようなあの顔を思い出しながら、俺は考えることを放棄した。
*
ーー何が起こっている?
俺の脳内はそれひとつに支配されたかのように、考えることを放棄してしまっている。それ程に、目の前の光景は悲惨なものであり、絶対に有り得ないものだった。
ただ、ただ俺は、公爵家だか何だか知らないが、無礼な態度を取った男を会場の外へ放るように命令しただけのはずだった。命令を貰った奴らが男の両脇を抱え、外へ連れ出そうとした、だけなのに。
…どうして、俺の騎士が死にかけてるんだ?
「…ッ!!貴様…ッ!!!」
辛うじて声を上げるも、掴んでいる騎士の首を更に締めるだけの、赤っぽい目を持った男。なにが男の地雷だったのかは分からないが、相当怒っているのは伝わる。
でなければ…視線は騎士に向いているにも関わらず、倒れてしまうのでは、と思うような威圧感。総じて優秀な者が感情が高ぶった時に出る、魔力の圧力だろうと推測できる。
実際に、既にバタバタと倒れてしまっている者も出てきてしまっている。
…ただ、一言。一言、殿下としての制止の言葉を掛ければいいだけの話。けれど、この瞳が自分に向くのが、まるで自分の死と自分の中のナニカが訴えかけてくる。
そんな思考の海にハマっている間に、騎士の顔色は青白くなっていく。…これ以上は騎士が危険。そう判断した俺は意を決して声を出そうとした、その時…
「レイ」
声を出したのは、俺ではなく、背が高い公爵家の男の騎士だった。騎士の声に反応して、顔だけこちらに向ける男。
「ああ…ルーシュさん…なにか…?」
「なにか?、じゃねぇよ。アルフ様をさっさとここから別室へ運べ。」
「…ッ!!」
そう言われたとともに一目散に倒れていた男を姫抱きにし、会場を後にする男。どうやら、あの男がキレていたのは、公爵家の男が倒れた原因が俺の騎士にあると思ったからのようだった。
ーー良かった。
そう思ったのも束の間。…次は騎士の男がなにか声を掛けた瞬間、泡を吹いて2人が倒れた。
「は…?」
「あーあ、だぁからおぼっちゃまのお世話は嫌なんだよなぁ。」
次、アルフ様になんかあったら…殺す。そうサッと近付き俺に言い放ち離れていった騎士は…あまりにも見覚えがあり過ぎて。
あれは…いや、あのお方は。
剣の才能がある者が、一生を掛けて訓練してやっと成れると名高い、王国騎士団。その中のトップである王直属部隊にだったの十という歳でなってしまった、言わばこの国の最後の砦、ルーシュ・アングレード。
父…いや、陛下がアングレードを外へやればこの国は滅亡すると言わしめた存在。
そんな、化け物を従えているアイツは…?
そういえば、アングレードは公爵家当主、アヴィ・レイデーンに仕えていたはずでは無かったのか?確かに、アイツは公爵家次男、と言っていた筈だが、わざわざ名誉も権力も捨て仕えた男はアイツではない。
…はは、そういえば、公爵家といえば、長男以外は最悪最低な人間、というので有名だ。だから、学園で問題を起こさないように公爵がアングレードを付けただけだろう。
そう、無理やり言い聞かせる。首を締めた男。この国最強の騎士。そんな怪物を完璧に従えてる存在なんていない。
殺す、と言われた時の背筋が凍るようなあの顔を思い出しながら、俺は考えることを放棄した。
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